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世界文学の流れをざっくりとつかむ9(第2章ー3) [世界文学の流れをざっくりとつかむ]

 ≪第2章≫ ギリシアとローマ

3 ギリシアの散文(歴史書)

 アテナイで演劇全盛の前400年代に、エーゲ海の対岸のイオニアでは散文が発展していました。イオニアはホメロス誕生の地ですが、この頃すでに叙事詩は衰えていました。それは、難解な叙事詩言語と、当時の日常言語との乖離が大きくなった結果でしょう。そして表現の主流は、より自由な散文へと移っていきました。

 当時は、ペルシア戦争、ペロポネソス戦争と続く激動期でした。それはまた、アテナイが繁栄ののちに衰退していく、時代の転換期でもありました。そして、この時代の変動を後世に伝えたのは、もはや詩人たちではなく歴史家たちだったのです。彼らは、分かりやすく飾らない言葉で歴史書を記しました。

 中でも有名なのはヘロドトス(前425年没)です。彼は「歴史の父」と呼ばれ、その文章はイオニア散文の最高峰と評価されています。ヘロドトスの書いた「歴史」は、ペルシア戦争を扱っています。戦争の流れだけで無く、所々に興味深いエピソードをまじえて、分かりやすく面白く記しています。我々は、ヘロドトスの記録がとても詳細であることに驚きます。ヘロドトスはペルシア領に生まれ、自由にペルシアを旅行することができたため、多くの歴史的資料を集めることができたと言われています。

 トゥキディデス(前395年没)もまた、ヘロドトスと並んで有名な歴史家です。彼は「ペロポネソス戦争史」を書きました。「ペロポネソス戦争史」の特徴は、事実を正確に公平に描いているところです。トゥキディデスはアテナイの人で、ペロポネソス戦争に将軍として参加しましたが、失脚してアテナイから追放されたのちスパルタの支配地に滞在しました。だから、アテナイからもスパルタからも同じ距離を置いて、公平な記述ができました。文章はヘロドトスに比べて緊張感があり、激情がほとばしるような文体で書かれています。

 その頃、アテナイでは弁論術が流行していました。激動の時代には、ソフィストたちが活躍します。そして彼らが弁論術を研究することによって、アテナイの散文は急速に発展して行ったのです。

 クセノフォン(前355年没)は、アテナイの哲学者で、「アナバシス」を著しました。「アナバシス」は、小キュロスの反乱を描いています。これは、ギリシア傭兵としてペルシアの内乱に参加したクセノフォンの実体験をもとにしています。「アナバシス」はのちに、手記の手本とされました。

 しかし、アテナイの哲学者で最も有名なのは、プラトン(前347年没)でしょう。彼はソクラテスの弟子で、ソクラテスを中心にした多くの対話編を書きました。「ソクラテスの弁明」は、前399年の師ソクラテスの裁判と死の模様を、批判的に描いたものですが、そこにはペロポネソス戦争敗戦後のアテナイの様子が克明に描写されています。プラトンの対話編は文学的な価値が高く、古代ギリシア散文の最高峰と言われています。

 こののち前338年のカイロナイアの戦いで、ポリスはマケドニアに敗れて衰退していきました。そして文化の中心は、エジプトのアレクサンドリアに移ってしまいます。そこには有名な図書館ができ、多くの学者や詩人が集まりました。アレクサンドロス大王の東征によって、アテナイの文学は衰退したものの、かえって世界に広まり各地に大きな影響を与えたのです。

 さいごに。(生活向上委員会?)

 中学生に入った娘は、なぜか担任から、クラスの生活向上委員会に指名されました。
 時々朝早くに学校に行って、挨拶運動をしています。娘なりに頑張っています。

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騎士団長殺し4 [日本の現代文学]

 「騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編 下」 村上春樹 (新潮文庫)


 一枚の絵を発見したことにより、あちらの世界に導かれていく「私」の物語です。
 村上春樹の14作目の小説で、2017年に刊行された時は、大きな話題となりました。


騎士団長殺し 第2部: 遷ろうメタファー編(下) (新潮文庫)

騎士団長殺し 第2部: 遷ろうメタファー編(下) (新潮文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/03/28
  • メディア: 文庫



 私は雨田政彦に誘われて、その父雨田具彦のいる療養所を訪れました。
 政彦が部屋を出て、私が雨田具彦の部屋に取り残されると、騎士団長が現れました。

 まりえの失踪について聞くと、騎士団長は言いました。「あたしを殺せばよろしい」
 「われらはあの絵画の寓意の核心をここに再現し〈顔なが〉を引っ張り出すのだよ」

 私は騎士団長に励まされ、包丁で彼の小さな心臓を、まっすぐに刺し貫きました。
 騎士団長の死とともに、部屋の隅に「騎士団長殺し」に描かれた〈顔なが〉が・・・

 第3巻に比べて第4巻は、とてもワクワクしながら読めました。
 特に「私」がメタファーの世界に入ってからは、なかなか本を置けませんでした。

 夜半までこの本を読み続け、さらに翌朝4時に起きて、最後まで読み終えました。
 この数日は久しぶりに、小説を読む楽しさを、存分に味わうことができました。

 ところが振り返ってみると、登場するキャラクターたちは、とてもチープでした。
 騎士団長を始めとして、顔なが、顔のない男、ドンナ・アンナなど・・・

 イデアとかメタファーとか、小難しいカタカナ語を振り回している割には、
 中身は子供だましのファンタジーだったのではないか、と考えています。

 私としては、免色が肝心な場面で闇の部分に侵され、二重メタファーと化して、
 主人公を窮地に陥らせる展開を想像していたので、少しもの足りなかったです。

 まりえもメタファーの世界に入ると思っていたので、その点も拍子抜けでした。
 ついでに、ユズのような身勝手な女とよりを戻すのも、あまり感心しません。

 ただ、時々表れる免色のつぶやきは、作者の内面の声と感じられて印象的でした。
 「でも私は自分のことがときどき、ただの無であるように感じられます」

 「しかし五十歳を過ぎて、鏡の前に立って自分自身を眺めてみて、私がそこに
 発見するのはただのからっぽの人間です。無です。」

 おそらく、免色(=作者)は子供がいないから、人生を空虚に感じるのでしょう。
 だからこそ、免色(=作者)はまりえの存在に執着するのではないでしょうか。 

 さいごに。(陸上部に興味?)

 娘は、中学の陸上部は厳しいので、もっとユルい部に入りたいと言っていました。
 ところがこの4月から、顧問が若い男性のイケメン先生に代わったようなのです。

 そしたら一転して、陸上部に入ってもいいと言い始めました。
 私としては、理由は何であれ、同じ陸上を選んでくれたら、とても嬉しいです。

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騎士団長殺し3 [日本の現代文学]

 「騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編 上」 村上春樹 (新潮文庫)


 一枚の絵を発見したことにより、あちらの世界に導かれていく「私」の物語です。
 村上春樹の14作目の小説で、2017年に刊行された時は、大きな話題となりました。


騎士団長殺し 第2部: 遷ろうメタファー編(上) (新潮文庫)

騎士団長殺し 第2部: 遷ろうメタファー編(上) (新潮文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/03/28
  • メディア: 文庫



 私は、免色の依頼によって、13歳の秋川まりえの肖像画を描くことになりました。
 まりえは感覚の鋭い少女で、私と免色が掘り起こした穴の存在を知っていました。

 私は、まりえの肖像と並行して描いていた「雑木林の中の穴」を、完成させました。
 その後、まりえは登校中に姿を消し、穴にはまりえの持つフィギュアが残され・・・

 まりえはどこへ行ったのか? まりえはあの穴からどこかへ行ったのか?
 まりえの失踪は、穴の絵の完成と関係あるのか? 騎士団長は何か知っているのか?

 第一部が出て1か月、待ち遠しかった第二部は、発売されたその日に買いました。
 ところが、正直に言うと、第二部は第一部ほど、ワクワク感がありませんでした。

 その原因は、第二部のヒロインまりえの存在にあるような気がします。
 まりえが私に信頼感を持ち、急速に接近する過程が、かなり不自然な気がしました。

 13歳の少女が、36歳のおじさんに、かなりプライベートなことまで相談しています。
 違和感を抱えながら読むと、私とまりえの会話は、とても白々しく感じられました。

 そういう点で、まりえが登場した第二部は、第一部ほど入り込めませんでした。
 物語自体がつまらなくなったわけではないので、後半に期待しています。

 余談ですが、「騎士団長殺し」は、発売と同時に爆売れしてニュースとなりました。 
 ところがその後、返本が多いらしいということで、再びニュースとなりました。

 当時の情報では、出版社が強気で、発売日前に30万刷大増刷したということでした。
 よって初版130万刷! しかし、その半数近くが売れ残ったとも言われたのです。

 アマゾンのレビューを読んでも、厳しい評価が目立っているように思いました。
 私もこの巻について言えば、それほど熱心に人に勧められないかもしれません。

 帯には、「4枚の絵がパズルのピースのように一つの物語を語り始める」とある。
 今後、どのようにこれらの絵がひとつにまとまっていくのが、楽しみにしています。

 さいごに。(文章題)

 娘が解いていた数学の問題を読んだら、頭がぐじゃぐじゃになりそうでした。
 それが、次のようなもの。(私は、途中で投げ出しそうになりましたよ。)
 
 「Xさんは生まれてから人生の3分の1を独身で過ごし、結婚して6年後に子供が
 生まれ、残りの人生の8分の7を家族と一緒に楽しく暮らし、最後の6年を老人ホ
 ームで過ごしました。Xさんの人生は何年でしたか。」(一部改変)

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今昔物語集 [日本の古典文学]

 「今昔物語」 福永武彦訳 (ちくま文庫)


 怪異譚、滑稽譚、人情譚等、あらゆる話を収録した、平安末期成立の説話集です。
 一話一話は短いながら、全31巻に及び、実に1000話以上の物語を収録しています。

 読書人にとって問題となるのは、「今昔物語集」をどこまで読むべきか、です。
 その答えによって、私たちの選ぶべき本が、自然と決まってきます。

 まず、読書人なら、1000話すべてを読むのが正道だ、という考え方があります。
 ところが、まるまる全文を収めているという本が、なかなか見当たりません。

 定番の岩波文庫版(全4巻)でさえ、約400話の抄録だと言うではありませんか。
 しかも、なんと、現代語訳が付いていない。私はてっきり全訳だと思っていた!


今昔物語集 全4冊セット (岩波文庫)

今昔物語集 全4冊セット (岩波文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2002/07/09
  • メディア: 文庫



 また、天竺篇、震旦篇、本朝篇のうち、「本朝篇」だけを収録した本も多いです。
 中には、本書のクライマックスである「本朝世俗部」のみ、という本もあります。

 2016年に出た講談社学術文庫版もそうで、「本朝世俗篇」は全て収録しています。
 天竺篇も震旦篇も本朝仏法篇もバッサリ切って、本朝世俗篇だけはこだわりの全訳。

 これはこれで潔いやり方だと思います。実際、とても効率的な方法でもあります。
 それでも、講談社学術文庫版は、二分冊で1300ページ以上あります。

 実際に書店で、上下巻のぶ厚い文庫本を目にしたら、気力が萎えてしまいました。
 しかも2冊で4000円。現代語訳は分かりやすいのですが、私は敬遠しました。


今昔物語集 本朝世俗篇 (上) 全現代語訳 (講談社学術文庫)

今昔物語集 本朝世俗篇 (上) 全現代語訳 (講談社学術文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/06/11
  • メディア: 文庫



今昔物語集 本朝世俗篇 (下) 全現代語訳 (講談社学術文庫)

今昔物語集 本朝世俗篇 (下) 全現代語訳 (講談社学術文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/08/11
  • メディア: 文庫



 ということで、私が選んだのは、本朝篇から155話採録したちくま文庫版です。
 全1巻で650ページほどですが、この分量がちょうどいいのです。

 また、福永武彦の訳も、分かりやすくていいです。さすが、作家さんです。
 ただし、訳者独自の分類がされているので、目的の話を探すのがたいへんでした。


今昔物語 (ちくま文庫)

今昔物語 (ちくま文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1991/10/24
  • メディア: 文庫



 さて、ちくま文庫版「今昔物語」の前半は、世俗・宿報・霊鬼・・・と続きます。
 この三部には、不思議な話がたくさん入っていて、とても興味深かったです。

 「碁の名人が女に負かされる話」 「蛇の嫁いだ娘を治療する話」
 「地神に追われた陰陽師の話」  「天文博士が夢をうらなう話」
 「死んだ妻が悪霊となる話」   「犬の鼻から蚕の糸が出る話」
 「水の精が人の顔を撫でる話」  「近江の国の生霊が京に来る話」
 「死んだ妻とただ一夜遭う話」  「高陽川(かやがわ)の狐が瀧口をだます話」

 以上は、怪異好きには絶対オススメできる話です。
 また、源博雅が登場する「玄象の琵琶が鬼に取られる話」は、とても有名です。

 朝廷に昔から伝わる、玄象という由緒正しい琵琶が、あるとき不意に消えました。
 管弦の道を極めた源博雅が宿直をしていると、どこからか玄象の音が聞こえ・・・

 ついでに源博雅のほかの話も読みたいと思ったのですが、探すことができません。
 「今昔物語集」の24巻にある博雅と蝉丸の話は、どこに分類されているのか?

 ところで、私が一番印象に残ったのは、「生贄の男が猿神を退治する話」です。
 展開が面白くて、ちょっとした小説になりそうな話です。

 諸国行脚の僧が、飛騨の国で出会った男は、滝の中に入って姿をかき消しました。
 自分も同じようにすると、滝の裏には道があって、大きな人里に続いていました。

 その里では、人々が僧を見て「ぜひうちへ来てくれ」と、取り合いになりました。
 僧はある家に迎えられ、妻を得て、毎日何不自由なく暮らしていましたが・・・

 この本に訳出された話は、全体の2割にも満たない数ですが、それでも充分です。
 650ページ全部を読んだら、おなかいっぱいになりそうです。

 さいごに。(娘は中学生)

 今年も、家の前の桜が見ごろを迎え、そして先日、娘は中学生になりました。
 私は仕事を2時間ほど休んで、中抜けさせてもらい、入学式に出席しました。

 このブログを始めた頃、幼稚園にも入っていなかった娘が、もう中学生です。
 「入学おめでとう」と言われて、うれしいやら、さびしいやら・・・

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リチャード三世 [17世紀文学]

 「リチャード三世」 シェイクスピア作 河合祥一郎訳 (角川文庫)


 卑劣な手段で王位を簒奪し、破滅するまでを描いた、リチャード三世の史劇です。
 この劇によって、リチャード三世が極悪人だというイメージができ上がりました。

 私は角川文庫の河合訳で読みました。ちくま文庫の松岡訳も分かりやすいです。
 新潮文庫の福田訳はやや古いものの、今でも根強い人気があります。


新訳リチャード三世 (角川文庫)

新訳リチャード三世 (角川文庫)

  • 作者: ウィリアム シェイクスピア
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/06/23
  • メディア: 文庫



シェイクスピア全集 (7) リチャード三世 (ちくま文庫)

シェイクスピア全集 (7) リチャード三世 (ちくま文庫)

  • 作者: W. シェイクスピア
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1999/04/01
  • メディア: 文庫



リチャード三世 (新潮文庫)

リチャード三世 (新潮文庫)

  • 作者: ウィリアム シェイクスピア
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1974/01/30
  • メディア: 文庫



 生まれつき醜悪な姿のリチャードは、心もゆがみ、狡猾で残忍な男となりました。
 この世の全てを憎悪し、次々と人を陥れることで、王座を手にしようとしました。

 「恋の花咲くはずもないこの俺は、もはや、悪党になるしかない。
 世の中のくだらぬ喜び一切を憎悪してやる。」(P10)・・・

 相手を心から心配しているかのように装い、お人よしの兄を易々と破滅させる。
 それでいて兄は、リチャードの善良さを疑わない。これこそ、本物の悪党ですよ。

 リチャード三世は、ハムレットと並んで、演じ甲斐のある役なのだそうです。
 なるほど、リチャード三世は、悪の魅力を放っています。そこには何かがある!

 おそらくリチャード三世は、幸せになりたくて王座を奪ったわけではない。
 自分を含めて、全てを破滅させるために、王座に就いたのではないか。

 リチャード三世は、王位に就くことによって、世の全てを嘲笑したのではないか。
 そのとき彼は、自分自身さえをも、嘲笑していたのではないか。

 そしてそれこそが、リチャード三世流の、全世界への復讐だったのではないか。
 この復讐は、自分自身が破滅することによって完結するのだ。

 と、とりとめもなく次から次に考えてしまいます。
 シェイクスピア劇のリチャード三世は、本当に奥が深く、興味深い人物です。

 ところが、実際のリチャード三世は、決して極悪人ではなかったようです。
 ヨーク朝最後の王を悪く描くのは、テューダー朝時代の社会事情でした。

 この史劇によって、リチャード三世は後々まで悪党のイメージが残りました。
 我々も、やっぱりリチャード三世は悪党でなければ、と思ってしまいます。

◎ さいごに(東京の家族旅行)

 都内で最も大きな書店として有名な、ジュンク堂池袋本店にも立ち寄りました。
 ジュンク堂は、スマホのアプリ「honto with」で、店内の在庫が分かるので便利。

 私の好きな文庫本コーナーが充実していたので、もっといろいろ見たかったです。
 急いでいたので滞在時間は15分。しかしここで「リチャード三世」を買いました。

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ティラン・ロ・ブラン 4 [中世文学]

 「ティラン・ロ・ブラン 4」 J・マルトゥレイ作 田澤耕訳 (岩波文庫)


 騎士ティラン・ロ・ブランの愛と冒険を、写実的かつ現実的に描いた長編小説です。
 2016年に岩波文庫から全四巻で出ました。その最終巻の第4巻です。


ティラン・ロ・ブラン 4 (岩波文庫)

ティラン・ロ・ブラン 4 (岩波文庫)

  • 作者: J.マルトゥレイ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/01/18
  • メディア: 文庫



 ティランは、北アフリカのモーロ人たちの間で、めきめきと頭角を現していきます。
 アスカリアヌ王と友情を結び、計略をもってモーロ人の国々を征服していきました。

 敵が穴を掘って城内に侵入するのを、ティランはどのように防いだか?
 さまよう牛の群れを、ティランはどのようにして味方にしたか?

 少ない味方を多く見せるため、ティランは女たちをどのように使ったか?
 北アフリカのモーロ人を、ほとんど支配下に加えたあと、再会した意外な人物は?

 第三巻のもやもやした展開から一転し、イケイケムードの展開で実に面白いです。
 しかし、ギリシャ帝国に帰り、何もかもうまく運んだと思ったそのとき・・・

 「今日、この素晴らしい大将殿が命を落とされるようなことがあったら、一体誰が
 世界の騎士道を代表する者となるのだ!」(P52)

 この言葉が第四巻を象徴しています。ティランの代わりなんていません。
 甥のイポリトが後を継ぎますが、彼はただ老いた皇后と結婚しただけですよ。

 ティランはまさに「騎士道を支えてきた騎士」です。4巻の帯にはこうあります。
 「この騎士が死んでしまえば、この世の騎士道も死滅するであろう」

 解説によるとティランのモデルは、14世紀の傭兵隊長ルジェ・ダ・フローとのこと。
 「アルムガバルス」という傭兵隊を率いて、オスマントルコに抵抗したと言います。

 この傭兵隊もめちゃくちゃ強くて、ギリシア帝国をトルコの脅威から救いました。
 ところが、利用されるだけ利用されたあと、皇帝によってだまし討ちに遭ったとか。

 さて、「ティラン・ロ・ブラン」が書かれたのは、1490年とのことです。
 1453年にはコンスタンチノープルは陥落し、ギリシア帝国が滅亡していました。

 オスマントルコの全盛期だったからこそ、このような小説が求められたのでしょう。
 当時の読者は、物語の中に、古き良き騎士の時代を、虚しく夢見ていたのでしょう。

 さいごに。(トルコ至宝展)

 先日の家族旅行では、乃木坂の国立新美術館の「トルコ至宝展」に立ち寄りました。
 吊るし飾りには、どでかいエメラルドが三つ。豪華さのスケールが違いました。

 また、バラ水を入れる装飾付きの瓶など、騎士道小説でおなじみの物もありました。
 バラ水は気付け薬で、物語では人が倒れるたびに、バラ水の瓶が持ち出されました。

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2019年4月発売の気になる文庫本 [来月発売の気になる文庫本]

 2019年4月発売予定の文庫本で、気になるものを独断で紹介します。
 データは、出版社やamazonの、HPやメルマガを、参考にしています。

・4/1 「騎士団長殺し 第2部遷ろうメタファー編」村上春樹(新潮文庫)
  → 3月に続いて「騎士団長殺し」の第2部が、上下二冊登場。買い。

・4/8 「偶像の黄昏」F・ニーチェ(河出文庫)
  → ニーチェ最後の著作で、ニーチェ哲学の到達点。新訳か。気になる。

・4/9 「孤島」ジャン・グルニエ(ちくま学芸文庫)
  → フランスの思想家で、カミュの師。しぶい! 文庫化歓迎。気になる。

・4/10 「ゼロからわかるエジプト神話」かみゆ歴史編集部(文庫ぎんが堂)
  → ゼロからわかる神話シリーズの文庫化。インド神話編も出る。気になる。

・4/10 「閨房の哲学」マルキ・ド・サド(講談社学術文庫)
  → サドの作品が、なんと学術文庫から! どうして? とても気になる。

・4/11 「ドルジェル伯の舞踏会」ラディゲ(光文社古典新訳文庫)
  → 以前、新潮文庫の1953年版で読んだ。訳はどう違うか? 気になる。

・4/16 「モナドロジー」ライプニッツ(岩浪文庫)
  → 大学時代に学んだライプニッツの主著。新訳か? 少し気になる。

・4/24 「世界推理短編傑作集(5)【新版】」江戸川乱歩(創元推理文庫)
  → シリーズ最終巻。時間ができたら全5巻を読み通したい。気になる。

・4/24 「Xの悲劇【新訳版】」エラリー・クイーン(創元推理文庫)
  → クイーンの代表作。新訳歓迎。どんな訳か。読みやすかったら、買い。


◎ おまけ(角川文庫の総選挙)

 角川文庫で、「みんなで選ぶ、復刊総選挙」という企画をやっていました。
 気付くのが遅かった! すでに終了していました。

 さて、「第一期日本の名作編」の結果は、以下のとおりでした。 
 これらの本は、てぬぐい柄のカバーで復刊されています。

 1位「トロッコ・一塊の土」芥川龍之介
 2位「道草」夏目漱石
 3位「或阿呆の一生」芥川龍之介
 4位「朝のかたち」谷川俊太郎・・・・・・・・・他では読めない
 5位「空の青さをみつめていると」谷川俊太郎・・他では読めない
 6位「イーハトーボ農学校の春」宮沢賢治・・・・他では読めない

 「第二期日本のエンタテインメント編」の結果は、以下のとおりでした。
 こちらも、他の文庫では読めない作品が、3冊ありました。

 1位「黒蜥蜴と怪人二十面相」江戸川乱歩
 2位「きまぐれ体験紀行」星新一・・・・・・・・他では読めない
 3位「アメリカ居すわり一人旅」群ようこ・・・・他では読めない
 4位「鏡地獄」江戸川乱歩
 5位「蘇える金狼」大藪春彦・・・・・・・・・・他では読めない

 しかし、この中で買おうと思う本が一冊も無いのが悲しい。
 なぜ片岡義男がないのか。「彼のオートバイ、彼女の島」を復刊してほしかった!

 「第三期海外文学編」の結果が、4月に発表される予定だそうです。
 いったいどんな作品がランクインしているか。こちらに期待したいです。


◎ さいごに。(文喫)

 先日の東京の家族旅行で、入場料を取る本屋「文喫」にも立ち寄りました。
 急いでいたため、入口でパンフレットをもらっただけで、帰って来ましたが。

 奥には、1500円払ってゆったりした時間を過ごしている人たちがいました。
 もし東京で、1日フリーになったら、ぜひ入りたいです。

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お気に召すまま [17世紀文学]

 「新訳 お気に召すまま」 シェイクスピア作 河合祥一郎訳 (角川文庫)


 男装の麗人ロザリンドと貴族の青年オーランド―との、恋を描いたドタバタ劇です。
 1599年に書かれて初演された、シェイクスピア喜劇の代表作です。

 私は角川文庫版で読みました。分かりやすいです。ちくま文庫版も分かりやすいです。
 新潮文庫版はカバーイラストが美しく、値段も安いのですが、訳が少し古いようです。


新訳 お気に召すまま (角川文庫)

新訳 お気に召すまま (角川文庫)

  • 作者: シェイクスピア
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/08/24
  • メディア: 文庫



お気に召すまま−シェイクスピア全集 15  (ちくま文庫)

お気に召すまま−シェイクスピア全集 15  (ちくま文庫)

  • 作者: W. シェイクスピア
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2007/06/01
  • メディア: 文庫



お気に召すまま (新潮文庫)

お気に召すまま (新潮文庫)

  • 作者: ウィリアム シェイクスピア
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1981/07/28
  • メディア: 文庫



 元公爵の娘ロザリンドは、宮廷から追放されて、アーデンの森の中へ逃げ込みました。
 そこで青年貴族オーランドーに出会いました。二人は以前から惹かれ合っていました。

 ロザリンドは男装していたため、オーランドーは、それをロザリンドだと知りません。
 ロザリンドは遊び半分に、正体を隠したまま、オーランドーの恋の相談に乗り・・・

 この劇を一言でまとめるなら、「結婚、結婚、また結婚」とでもなるでしょうか。
 ドタバタとやっているうちに、あっちでもこっちでも結婚して、かたがついてしまう。

 正直に言って、この作品の結末には、大きな違和感が残りました。
 それだけ愛しながら、なぜオーランドーには、ロザリンドの正体が分からないのか?

 それに、ロザリンドは元公爵の娘でありながら、けっこうお下品なことを言います。
 「下したわけじゃないなんて、下の話はやめて。なんだかくさいわ。あほくさい。」

 この言葉のせいで、森の中に入ってからのロザリンドのイメージは「野ぐそ」でした。
 「野ぐそ」のシーンなどありませんが、私は「野ぐそ」をイメージしてしまいました。

 そういう余計な部分に気を取られていたせいか、中盤がよく頭に入りませんでした。
 特に、オーランドーが、男装したロザリンドと恋のレッスンをする場面は難しかった。

 ロザリンドを、ロザリンドだと気付かず、ロザリンドだと仮定して話しかけている?
 しかも、オーランド―は、ロザリンドの変装に気付いていたという解釈もあるという。

 この劇は、ちょっと高級なドタバタ劇にすぎないというのが、私による評価です。
 とはいえ、男装のロザリンドは、確かに印象に残るキャラクターではありますが。

 またさりげなく名言も飛び出します。「この世はすべて舞台。男も女も役者に過ぎぬ。
 退場があって、登場があって、人が自分の出番にいろいろな役を演じる。」・・・

 さいごに。(空飛ぶペンギン)

 東京の家族旅行で、一番印象的だったのは、サンシャイン水族館の空飛ぶペンギン。
 TVでも紹介されましたが、とても幻想的で不思議な空間で、私は癒されました。

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貧しき人々 [19世紀ロシア文学]

 「貧しき人々」 ドストエフスキー作 安岡治子訳 (光文社古典新訳文庫)


 中年の小役人と極貧の少女が、心を寄り添って生きる姿を描いた、書簡体小説です。
 批評家ベリンスキーに激賞され、一躍有名となった、ドストのデビュー作です。


貧しき人々 (光文社古典新訳文庫)

貧しき人々 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: フョードル・ミハイロヴィチ ドストエフスキー
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/04/08
  • メディア: 文庫



 中年のマカールと少女ワルワーラは、窓から互いの姿が見える近所に住んでいます。
 二人はとても貧しい暮らしをしながら、頻繁に手紙を交わして、慰め合っています。

 ワルワーラの父の没落と死。学生ポクロフスキーとワルワーラの恋と死別・・・
 マカールの友人ゴルシーコフの不幸な死。マカールに突然訪れた悲しい別れ・・・

 悲しみと死に彩られた二人の半生は、往復されることで、不幸が増幅されていきます。
 ワーレンカは言います。「不幸は伝染する病いです」と。どんどん不幸は広がります。

 さて、読んでいて違和感を覚えるのは、マカールのワーレンカに対する愛情です。
 これは父が娘に示す慈愛でしょうか? いえいえ、醜い中年の単なる少女趣味ですよ。

 自分の大好きなワルワーラへ、なけなしの金をはたいて、プレゼントを買ってしまう。
 相手はかえって心を痛めるが、そんなことおかまいなし。つまり、ひとりよがりです。

 「あなたときたら、私の人生を通してのみ生きようとなさっている。」(P203)
 というワルワーラの指摘も、もっともなことだと思います。

 また随所から、少女ワルワーラに溺れるマカールの、悲痛な叫びが聞こえてきます。
 「私のもとから離れて行ったりしないでください。私の愛しい人!」(P263)

 よくも恥ずかしげもなく言えたことよ。マカ―ル自身が、最もアブナイ奴なのかも。
 しかし、そんな見苦しい中年男のなりふり構わぬ姿を、かわいく感じてしまいました。

 マカ―ㇽの不幸は、年甲斐もなく、ワルワーラを心底愛してしまった点にあります。
 その姿は、悲しいというよりどこか滑稽で、滑稽な分、さらに痛々しい。

 ところで、手紙に描かれるエピソードのうち、印象に残るものがいくつかありました。
 特に、貧乏学生ポクロフスキーの父の、我が子に対する愛を描いた部分はすごいです。

 老ポクロフスキーは我が子の誕生日に、ワルワーラと一緒にあるプレゼントを・・・
 我が子の棺を追う父親ときたら・・・こんな悲痛な描写はなかなかありません・・・

 「貧しき人々」をもって、ドストエフスキーの主要な作品は、全て読み終わりました。
 実は、本を購入しておきながら、もったいなくて、なかなか読めなかったのです。

 さいごに。(ライザップに行けってか?)

 このあいだ突然、妻が、「パパ、ライザップに行ったらどう?」と言いました。 
 実はその前日、彼女は友人たちと一緒に、新日本プロレスを見に行ったのです。

 レスラーは皆、体が引き締まっていたとのこと。なるほど、そういうことか。
 ライザップは無理だけど、「ゼロトレ」ぐらいは始めようかな。

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齋藤孝のざっくり!世界史 [歴史・哲学等]

 「齋藤孝のざっくり!世界史」 齋藤孝 (祥伝社黄金文庫)


 5つのキーワードを核に、細かいことを脇に置いて、流れをたどった歴史本です。
 キーワードは、「近代化」「帝国」「欲望」「モンスター」「宗教」の5つです。


齋藤孝のざっくり!世界史 (祥伝社黄金文庫)

齋藤孝のざっくり!世界史 (祥伝社黄金文庫)

  • 作者: 齋藤 孝
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2011/12/14
  • メディア: 文庫



 キーワードごと5章に分けられていますが、全ての章に驚きがありました。
 私的に特に面白かったのは、第1章の「近代化」と第5章の「宗教」です。

 「実は、ヨーロッパの柱とは古代ギリシア・ローマなのです。」(P16)
 加速せずにはいられない近代化の源を、なんと、古代地中海文明に求めています。

 それは、当時そこで民主主義が生まれ、人間中心の社会が営まれていたからです。
 民主主義が機能していた時代は、人間の合理性や明晰性が重視されていました。

 しかし中世、神が世界を支配していた頃、合理性や明晰性は押しつぶされました。
 それを、古代ギリシア・ローマをお手本に復活させたのが、ルネサンス期でした。

 神より人間が勝っていくこの時期、人間の合理性と明晰性が再び重視されました。
 やがてそれは巨大なパワーとなり、近代化を促し、全世界を吞みこんでいきます。

 近代の人間中心社会において、人間は自信を回復し、あらゆることに挑戦し・・・
 人間が近代合理主義を推し進めた結果、人間は管理社会に隷属するようになり・・・

 と、とても分かりやすく「ざっくり」まとめられています。
 しかし、これは本書の最初の、ほんのわずかな部分です。

 ほかにも、「軍隊や資本の独占ではなく、知の独占こそが権力そのものだ」とか、
 「知の源泉である聖書を独占したからこそ、中世の教会は全てを支配できた」とか。

 「教会から民衆に知を取り戻そうとしたのが、ルターの宗教改革の意味だ」とか、
 「だから、ルターが聖書をラテン語からドイツ語に訳した意味は大きい」とか・・・

 文字を独占する者が、知を独占する。知を独占する者が、文化を独占する。
 と、私は漠然とイメージしていましたが、これらの記述はとても参考になりました。

 さて、私がこの本で参考になった最大の点は、その書き方です。
 一つのテーマに絞って、ざっくりと世界史の流れを鷲づかみにする、その手法です。

 私は月1回のペースで、「世界文学の歴史をざっくりとつかむ」を連載しています。
 しかし考えるうちに、書きたいことが次々と湧き出てきて、ざっくりと書けません。

 8回の連載を振り返ると、ただ世界文学史をたどっているだけになっています。
 これではもう一度全てひっくるめて、ざっくり書き直さなければならない(笑)。

 齋藤孝だったら、いったいどんなふうに書いたでしょうか・・・
 ざっくり!シリーズは他に、「日本史」「西洋哲学」「美術史」などが出ています。


齋藤孝のざっくり!日本史 「すごいよ!ポイント」で本当の面白さが見えてくる (祥伝社黄金文庫)

齋藤孝のざっくり!日本史 「すごいよ!ポイント」で本当の面白さが見えてくる (祥伝社黄金文庫)

  • 作者: 齋藤 孝
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2010/08/31
  • メディア: 文庫



齋藤孝のざっくり! 西洋哲学  ソクラテスからマルクス、ニーチェまでひとつかみ (祥伝社黄金文庫)

齋藤孝のざっくり! 西洋哲学 ソクラテスからマルクス、ニーチェまでひとつかみ (祥伝社黄金文庫)

  • 作者: 齋藤 孝
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2017/03/15
  • メディア: 文庫



齋藤孝のざっくり! 日本史

齋藤孝のざっくり! 日本史

  • 作者: 齋藤 孝
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2007/11/30
  • メディア: 単行本



 さいごに。(トルコ至宝展より・・・)

 年度末、ばたばたしていて、仕事がなかなか片付かず、持ち帰りも多いです。
 しかし、妻オススメの「トルコ至宝展」のため、家族で東京に出るつもりです。

 ついでに、サンシャイン水族館まで行き、「空飛ぶペンギン」を見たいです。
 娘が昨年、修学旅行で行きたかった場所です。我々には、こちらがメインかも。

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