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マイナス・ゼロ [日本の現代文学]

 「マイナス・ゼロ」 広瀬正 (集英社)


 昭和を舞台に、タイムマシンとタイムパラドックスを扱ったSF長編小説です。
 広瀬正の代表作で名作中の名作です。日本のタイムトラベル小説の金字塔です。

 長い間、入手困難な本でしたが、2008年に改定新版が出ました。
 2008年本屋大賞の「この文庫を復刊せよ!」で、1位の票を得たためです。


マイナス・ゼロ (集英社文庫)

マイナス・ゼロ (集英社文庫)

  • 作者: 広瀬 正
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2008/07
  • メディア: 文庫



 昭和20年に浜田俊夫少年は東京空襲に遭い、隣家の伊沢邸は爆弾でやられました。
 「18年後の今日、ここに来てほしい」伊沢は俊夫にそう言い残して絶命しました。

 18年後、32歳の俊夫が旧伊沢邸を訪れると、そこに不思議な球体がありました。
 そして突然、18年間行方不明だった教授の娘の啓子が、当時の姿で現れたのです。

 この球体は、もちろんタイムマシン。俊夫はすぐに確信しました。
 二人はこのタイムマシンを使って、昭和9年に戻ろうとしますが・・・

 先が気になって気になって、ぐいぐい読み進みました。
 先へ行けば行くほど、時間を超えて様々な事件が絡まり合い、頭が混乱しました。

 しかし、最後は驚きの真相によって、すべてがすっきりと解決されます。
 それにしても、ここで扱うタイムパラドックスは、あまりにも不可思議です。

 啓子の母は、〇〇で・・・啓子の娘は、〇〇で・・・(!)
 この小説の熱狂的なファンがいるというのも、よく分かります。

 ところで、私が広瀬正の「タイムマシンのつくり方」を読んだのは1996年でした。
 タイムトラベルものばかりの、ショートショート集で、とても面白かったです。

 次に代表作「マイナス・ゼロ」を読もうと思ったら、もう店頭から消えていました。
 その後、2008年に復刊されるまで、私はこの本と出合えなかったのでした。

 だから私は、「タイムマシンのつくり方」は旧版で、本書は新版で持っています。
 現在は、広瀬正小説全集(全6巻)が、文庫本で手に入ります。嬉しいです。


タイムマシンのつくり方 (集英社文庫)

タイムマシンのつくり方 (集英社文庫)

  • 作者: 広瀬 正
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2008/12/16
  • メディア: 文庫



 タイムトラベルもので、多くのファンを持つのが、ハイラインの「夏への扉」です。
 「夏への扉」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-06-01

 さいごに。(ラスコーとコラボ)

 人気ドラマ「逃げ恥」第10回が、国立科学博物館「ラスコー展」とコラボしました。
 来週末に家族3人で行く予定ですが、とても混みそうです。やれやれ。

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もつれっぱなし・他2作 [日本の現代文学]

 「もつれっぱなし」 井上夢人 (講談社文庫)


 男女の会話だけで成り立っていて、どんどんもつれていく短編ばかりです
 井上夢人は、1982年から活躍している推理・SF・ホラー作家です。


もつれっぱなし (講談社文庫)

もつれっぱなし (講談社文庫)

  • 作者: 井上 夢人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/04/14
  • メディア: 文庫



 「宇宙人の証明」「四十四年後の証明」「呪いの証明」「狼男の証明」「幽霊の証明」
 「嘘の証明」の、全6編が収録されています。マイ・ベストは「宇宙人の証明」です。

 「・・・あたしね」「うん」「宇宙人、見つけたの」「・・・」
 彼女が拾って、小鉢に入れておいた宇宙人とは・・・(「宇宙人の証明」)

 「あたし、お祖父ちゃんの孫なの」悪戯かと思ったら・・・(「四十四年後の証明」)
 「あたしね・・・ここにいないの」幽霊になったという彼女・・・(「幽霊の証明」)

 なにげなく始まった会話が、もつれにもつれて、意外な方向へ進んでいきます。
 笑える話、切ない話、ゾッとする話、いろいろあって、とても楽しく読めました。

 タイトルは、「もつれている話」と「もつれてばかりいる」との意味を掛けています。 
 そのもつれ方が実に面白かったです。作者のセンスを感じる1冊です。

 さて、男女の会話が中心となる作品で、印象的なものが、ほかに2作あります。
 鎌田敏夫「恋愛映画」と、丸谷才一「女性対男性」。どちらも絶版です。残念!


恋愛映画 (新潮文庫)

恋愛映画 (新潮文庫)

  • 作者: 鎌田 敏夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1994/10
  • メディア: 文庫



 「恋愛映画」は、恋愛映画を見た二人の男女の、会話だけでできている短編集です。
 「旅愁」「恋に落ちて」「昼下がりの情事」「マンハッタン」など、全10編です。

 マイ・ベストは冒頭の「プリティ・ウーマン」です。
 映画「プリティ・ウーマン」は、私がとても好きな恋愛映画です。

 どの作品も会話だけで成り立っているので、その会話自体が恋愛映画のようです。
 そして、恋愛映画のようにオシャレです。作者のセンスが光ります。

 鎌田敏夫といえば、私にとっては、「金曜日の妻たちへ」の脚本家です。
 30年以上前、私の高校時代、このドラマは不倫ブーム(!)を巻き起こしました。

 明石家さんま主演「男女7人夏物語」や、山口智子主演「29歳のクリスマス」も、
 大ヒットしました。今振り返ると、良くも悪くもバブル期のドラマですね。


女性対男性 (文春文庫)

女性対男性 (文春文庫)

  • 作者: 丸谷 才一
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1976/02/25
  • メディア: 文庫



 丸谷才一「女性対男性」も、会話が中心の短編集(エッセイ集?)です。
 副題は「会話のおしゃれ読本」。オシャレな会話であふれています。

 全50編です。1章が6ページほどですが、中身がギュッと詰まっています。
 センスより知性を重視した会話ばかりで、話者の教養の高さを感じます。

 また、言葉遣いがとても丁寧で正確で、品のある文章です。さすが丸谷才一。
 「パーティーの話からパンティの話になりました」という話さえ、品があります。

 さいごに。(「逃げ恥」)

 「戦争と平和」ロスから、最近ようやく立ち直りました。
 ところで、民放ドラマをよく見ている娘は、「逃げ恥」がイチオシだと言います。

 そこで、娘と一緒に見てみたら、これが実にほんわかしていて、良い感じでした。
 新垣結衣と星野源の組み合わせが絶妙です。二人とも、良い味を出しています。

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葡萄が目にしみる [日本の現代文学]

 「葡萄が目にしみる」 林真理子 (角川文庫)


 ブドウ作りの盛んな田舎町を舞台に、乃里子の思春期を描いた自伝的小説です。
 直木賞候補となった作品で、現在も角川文庫から出ているロングセラー本です。


葡萄が目にしみる (角川文庫)

葡萄が目にしみる (角川文庫)

  • 作者: 林 真理子
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1986/03
  • メディア: 文庫



 ブドウ農家の乃里子は、不美人で動作が鈍くて、あまりパッとしない女の子です。
 友だちから「メスカバちゃん」と呼ばれたりしていて、強い劣等感を持っています。

 一念発起して進学校に入ると、さまざまな個性ある男女と出会って・・・
 初恋の先輩保坂への淡い思い、ラグビー部のスター選手岩永に感じる恋心・・・

 この小説を読んだのは、今から20年近く前で、私は30歳ぐらいの頃でした。
 人生の一番良い時期が過ぎ去って、失われた青春を懐かしく思い出す時期です。

 「葡萄が目にしみる」は瑞々しくて少し切なくて、まったく期待通りの作品でした。
 今でも、女子を主人公にした青春小説の中では、最高の作品だと思っています。

 特に印象的だったのは第7章で、席替えの時に、岩永に啖呵を切る場面です。
 「あんた失礼だよ」と言って、相手をたじろがせたところまでは良かったが・・・

 彼らの不器用なやり取りの中に、青春期特有の純情さが見られるように思います。
 作品全体が飾らず素朴で、素直に分かりやすく書かれている点が、好感が持てます。

 そして、ラストの再会の場面! この場面が、じーんときます。
 かつて読んだときは、ここで涙が出そうになってしまいました。

 ところが、この場面が「甘すぎる」という批判があるらしいのです。
 確かにこの偶然は出来すぎてはいますが、でも、小説なんだからいいではないか!

 また読みたい小説です。そして、誰にでも自信をもっておススメできる小説です。
 ところで、作者の代表作は「不機嫌の果実」でしょうか。こちらは不倫小説です。

 NHKで「花子とアン」がやっていた頃、「白蓮れんれん」が話題になりました。
 しかし、私が気になっているのは「六条御息所源氏がたり」。いずれも未読です。


不機嫌な果実 (文春文庫)

不機嫌な果実 (文春文庫)

  • 作者: 林 真理子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2001/01/10
  • メディア: 文庫



白蓮れんれん (集英社文庫)

白蓮れんれん (集英社文庫)

  • 作者: 林 真理子
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2005/09/16
  • メディア: 文庫



六条御息所 源氏がたり 上 (小学館文庫)

六条御息所 源氏がたり 上 (小学館文庫)

  • 作者: 林 真理子
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2016/09/06
  • メディア: 文庫



 さいごに。(大学図書館)

 今年も、母校の大学祭に娘を連れて行きました。
 もう4年生なので、娘は友達と合流して、勝手に行動してくれました。

 そこで私は、大学図書館に入りました。なんと、27年ぶりです!
 学生の頃はよく昼寝をしに来ました。定年になったら勉強しに来たいです。

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すべての男は消耗品である。 [日本の現代文学]

 「すべての男は消耗品である。」 村上龍 (集英社文庫)


 主に男女について言いたい放題に言い放った、挑発的なエッセイ集です。
 バブル期に、某アダルト雑誌に連載され、多くのファンを獲得しました。


すべての男は消耗品である (集英社文庫)

すべての男は消耗品である (集英社文庫)

  • 作者: 村上 龍
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1993/09
  • メディア: 文庫



 この作品が出たのは、私がまだ大学生だった1980年代後半のことです。
 当時、村上龍の小説は読まないがエッセイは好きだ、という仲間が多かった。

 彼らが読んでいたのが、本書「すべての男は消耗品である。」でした。
 そして私も、彼ら同様イキがって、このエッセイを手にしたのでした。

 巻頭のエッセイから衝撃的でした。頭をガツンとやられた感じでした。
 誰も言わないことを遠慮なく言い、自信をもって断定するその文章ときたら!

 「デパートや遊園地に行くと、すげえ! と大声を出したくなるようなブスが、
 平気で結婚していて、子供なんか連れている。ブスとやる男もいるのだ。」

 当時、こういう文章をカッコイイと思っていました。なんとアサハカな!
 私は「限りなく透明に近いブルー」は投げ捨てたが、本書は愛読していました。

 まさにバブル期が生んだ文章です。あの時代特有の品の無さがあります。
 こういう文章をもてはやしてしまった、当時の私たちの罪は大きい(?)。

 しかし、それでもこのエッセイが、捨てがたい魅力を放っているのは確かです。
 それは、所々にキラキラときらめく、知的で鋭い発言が見られるからです。

 「制度というものは、あたりまえの話だが、嘘であり、幻想である。
 (中略)動物に比べて人間は不完全だから制度を確立したのだ。」

 この本を嫌いな人は、彼のこういう発言を、ハッタリだと言ったりします。
 しかし村上龍は、「共同幻想論」の吉本隆明と、対談をしたりもしています。

 現在は、NHKの番組にも出ていて、昔とだいぶイメージが変わりました。
 よく言えば、まっとうな人になった、悪く言えば、つまらない人になった・・・

 先日一家で「世界一受けたい授業」を見ていたら、村上龍が先生として登場し、
 日本の伝統文化について語っていて、「え? こんな人だっけ?」と思った。

 ちなみに、うちにあるのは角川文庫版です。現在は集英社文庫から出ています。
 絶版にならずに文庫化され続けています。時代を超えた魅力があるのでしょう。

 さいごに。(宇多田ヒカルと尾白川渓谷)

 サントリー天然水のCMがすばらしい。宇多田ヒカルが歩くのは尾白川渓谷です。
 昨年の夏と一昨年の夏、一家で水遊びに行きました。水が美しい素敵な所です。

 そして、宇多田ヒカルが歌う「道」は、聴いたら忘れられません。感動モノです。
 胸を打つメロディー、切ない歌声、そして、亡き母に捧げた味わい深い歌詞!

 「私の心の中にあなたがいる いついかなるときも 
 どこへ続くかまだ分からぬ道でも きっとそこにあなたがいる」・・・泣けます。

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69 [日本の現代文学]

 「69(sixty nine)」 村上龍 (文春文庫・集英社文庫)


 高校3年生の男子の、エネルギッシュでパワー全開の青春を描いた小説です。
 自伝的小説です。作者が青春を謳歌した1969年の出来事として書かれました。


69 sixty nine (文春文庫)

69 sixty nine (文春文庫)

  • 作者: 村上 龍
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 文庫



69 sixty nine (集英社文庫)

69 sixty nine (集英社文庫)

  • 作者: 村上 龍
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/06/26
  • メディア: 文庫



 1969年。学生運動が盛んで、若者たちのエネルギーに満ち満ちていた時代。
 佐世保北高校3年の僕は、何かでっかいことをやりたくてうずうずしています。

 ある時、親友アダマと一緒に、学校のバリケード封鎖を計画しました。
 その目的は、学校のマドンナ松井和子の気をひきたいためでしたが・・・

 明るく陽気で、軽やかで楽しく、テキトーで行き当たりばったりな青春像です。
 「限りなく透明に近いブルー」と違い過ぎて、良い意味で戸惑ってしまいます。

 作品自体がポップで、所々に拡大文字が使われていて、目で見て楽しめます。
 あるページを開くと、「ウンコです」という文が目に飛び込んできます!

 漏れそうだ、というナカムラに、「あそこの上でしてこい」と僕は言いました。
 僕がそのとき、指さした場所は・・・

 1969年の「僕」は何もかもがきらめき、どんなバカなこともできました。
 あれは、二度と戻れない黄金の時代です。はるか昔に過ぎ去った日々です。

 痛快な場面を読んで、大笑いしながらも、妙に懐かしく、切なくなってきます。
 ただ笑うだけで終わりません。随所にとても味わい深い場面があります。

 村上龍の小説を一つだけ勧めるとしたら、迷わずこの「69」です。
 2004年には妻夫木聡を主演に映画化されて、その映画も高く評価されました。


69 sixty nine [DVD]

69 sixty nine [DVD]

  • 出版社/メーカー: 東映
  • メディア: DVD



 ついでながら私は、村上龍の代表作の一つ「五分後の世界」も読みました。
 平行世界に迷い込んだ男が見たのは、第二次大戦を継続する日本の姿で・・・

 現代の日本に対する批判とメッセージが強烈すぎて、読んでいて疲れました。
 とても面白い設定だと思いましたが、私はその内容についていけませんでした。


五分後の世界 (幻冬舎文庫)

五分後の世界 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 村上 龍
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 1997/04
  • メディア: 文庫



 さいごに。(この時期故障するプリンター)

 妻と年賀状のことを相談し始めたらテキメン! プリンターが故障しました。
 昨年もこの時期にインクを検知しなくなり、インクを取り換えて解決しました。

 インクは純正ではありません。純正が3800円、純正以外は1000円以下なので。
 純正のインクを1200円ぐらいにしてくれれば、みんな純正を使うと思うのだが。

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太陽の季節 [日本の現代文学]

 「太陽の季節」 石原慎太郎 (新潮文庫)

 無軌道な生活を送る富裕層の青年の、歪んだ心とすさんだ行動を描いています。
 登場人物の倫理観が問題視されながらも、芥川賞を受賞しました。


太陽の季節 (新潮文庫)

太陽の季節 (新潮文庫)

  • 作者: 石原 慎太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1957/08/07
  • メディア: 文庫



 主人公の竜哉(たつや)は、ボクシングに熱中している富裕層の青年です。
 あるとき英子に出会い、彼女に自分と似た点を見出して、惹かれていきます。

 ヨットのデートで二人は急接近し、退屈を紛らすように遊びにふけります。
 しかし竜也は英子を愛しながらも、うとましく思うようになっていきました。

 竜哉は、自分の兄に英子を売り渡し・・・
 やがて、英子の体には異変が生じるが、竜哉は煮え切らない態度で・・・

 「女、取引き、喧嘩、恐喝と彼等の悪徳が追求される題材は限りが無い。
 それは決して、若気の至りなどと言うものではないのだ。」(P35)

 「人々が彼等を非難する土台となす大人たちのモラルこそ、実は彼等が
 激しく嫌悪し、無意識に壊そうとしているものなのだ。」(P36)

 竜哉には全く共感できません。こいつは悪党です。最低最悪の男です。
 大人たちのモラルを壊すって? とんでもない、逃げているだけじゃないか!

 大人の社会は気に入らない、でもどうにもならない、だから非行に走る。
 まるで、大きな駄々っ子。あげくに英子を死なせてしまう・・・

 最後の捨てゼリフが情けない。「貴方達には何もわかりゃしないんだ」だと。
 甘ったれるんじゃないよ! 分かるわけがないだろ!

 こういうクズ野郎を恥ずかしげもなく描いた所に、この作品の価値があります。
 そして、太陽族というアホ集団を生んだほど、社会への影響力がありました。

 芥川賞の選考会で、吉田健一は次のようにこの作品を酷評したのだそうです。
 「体格は立派だが頭は痴呆の青年の生態を胸くそが悪くなるほど克明に描写した作品」

 まったくそのとおり!
 だからこそ、胸くそ悪いのを楽しみながら、読むべき作品だと私は思います。

 当時話題になったあの障子の場面(P40)は、バカバカしいが味わい深いです。
 真似した人も多いのではないでしょうか。懐かしの名場面でしょう。

 新潮文庫版では、デビュー作「灰色の教室」等4つの短編も収録されています。
 私は「太陽の季節」だけは、読んで損のない作品だと思いました。

 さいごに。(紅葉にはやや早い)

 先日の土日に、西湖と河口湖に紅葉を見に行きましたが、少し早かったです。
 それでも、所々できれいな紅葉に出会い、心が癒されました。

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 天気はずっと曇りでした。しかし一瞬だけ雲が途切れて富士山が見えました。

DSCF2449-2.jpg

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限りなく透明に近いブルー [日本の現代文学]

 「限りなく透明に近いブルー」 村上龍 (講談社文庫)


 米軍基地の町を舞台に、酒、ドラッグ、セックスに溺れる若者たちを描いています。
 村上龍が24歳で書き、芥川賞を受賞して鮮烈なデビューを果たした中編小説です。

 「群像新人文学賞」をとったため、村上龍の初期作品は講談社文庫から出ています。
 旧版のカバーは、村上龍自身が登場人物のリリーをデザインしたイラストでした。


新装版 限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)

新装版 限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)

  • 作者: 村上 龍
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/04/15
  • メディア: ペーパーバック



限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)

限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)

  • 作者: 村上 龍
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1978/12/19
  • メディア: 文庫



 日本人の青年「リュウ」は、ハウス(もと米軍住宅)の一室で暮らしています。
 そこに出入りする男女は皆、酒、ドラッグ、セックスに明け暮れて・・・

 私がこの作品を知ったのは、大学時代に友人にこう言われたからです。
 「村上春樹を読んだら、村上龍も読まなきゃダメだよ。この2人はセットだよ。」

 ところが読み始めていきなり挫折しそうになりました。
 あのドラッグパーティーの場面で。あれは衝撃的というより、気持ちが悪かった!

 そこをなんとか乗り切ったものの、そのあとすぐに挫折してしまいました。
 あの乱交パーティーの場面で。あれは衝撃的というより、ただただ恐ろしかった!

 私にとってこの作品はB級ホラーでした。登場人物はやたらゲロを吐きまくってるし。
 半分ほど読んだところで、本がだんだん汚物のように見えてきたので、捨てしまった。

 あれからおよそ30年。大学時代よりだいぶ免疫がついたと思い、読み返しました。
 新装版の文庫カバーがイマイチなので、古本屋で旧版をわざわざ買い求めました。

 さて、ドラッグパーティー、乱交パーティーの場面は、もう大丈夫でした。
 しかし、「リュウ」と黒人女たちのあのシーンは、今読んでもキモかった!

 彼らの生活は、腐ってただれて異臭を放つパイナップル同様、実にけがらわしい。
 これを、1976年に書いたのだから、ある意味スゴイ小説です。

 ところが選考委員は、「奇妙な静けさ」があって「清潔」だと評したそうです。
 清潔?! なるほど、分かる人が読めば、そう読めるのか。

 また、「徹底して没主体の文学」である点で、優れているといいます。
 そういえば主人公の存在感がなくて、限りなく無色透明に近い感じはしました。

 ともかく、2人の村上を比較する上で、一読しておきたい作品ではあります。
 また、石原慎太郎の「太陽の季節」と、よく比較されるのだそうです。


太陽の季節 (新潮文庫)

太陽の季節 (新潮文庫)

  • 作者: 石原 慎太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1957/08/07
  • メディア: 文庫



 さいごに。(中学をどうするか?)

 まだ小学校4年生なのに、「中学校はどこにするか」という話題が出ています。
 そして、娘の仲の良い友達は、私立を目指している子がなぜか多いです。

 私は個人的に、わざわざ高いお金を出して私立に行く意味は無いと思っています。
 公立の先生方も、とても一生懸命面倒を見てくれるので。
 でも、もし娘が私立に行きたいと言い出したら、考え直さなければ・・・

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村上春樹の作品のベスト5を選びました [日本の現代文学]

 村上春樹の作品のうち、マイ・ベスト5を独断と偏見で選びました。
 基準は私の好みです。売り上げとか一般的評価とかは、関係ありません。

 最初に、村上春樹の長編小説13作を、年代順にリストアップします。
 すでにブログで取り上げていますので、良かったら参考にしてください。

 1 「風の歌を聴け」1979年
  → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06

 2 「1973年のピンボール」1980年
  → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2014-06-13

 3 「羊をめぐる冒険」1982年
  → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-07-20

 4 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」1985年
  → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2012-04-15

 5 「ノルウェイの森」1987年
  → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2012-04-19

 6 「ダンス・ダンス・ダンス」1988年
  → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-10-12

 7 「国境の南、太陽の西」1992年
  → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-10-15

 8 「ねじまき鳥クロニクル」1995年
  → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-10-18
  → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-10-21

 9 「スプートニクの恋人」1999年
  → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-08-25

10 「海辺のカフカ」2002年
  → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-12-29-1

11 「アフターダーク」2004年
  → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-08-22

12 「1Q84」2010年
  → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2012-04-09
  → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2012-05-06
  → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2012-06-06

13 「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」2013年
  → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-06-22

 村上春樹は、現代日本が生んだ世界的な文豪です。
 以上13作は全て読む価値がある、それが私の基本的な考えです。

 とはいえ、とても好きな作品もあれば、それほど好きでない作品もあります。
 ということで、マイ・ベスト5を以下のように選びました。

 第1位 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」1985年
     ぞくぞくするぐらい面白い。日本文学のマイ・ベスト5にも入る作品。

 第2位 「羊をめぐる冒険」1982年
     大学時代に読んで面白くて面白くて、村上春樹にはまってしまった!

 第3位 「ノルウェイの森」1987年
     初めて読んだ村上作品で、最も読み返した回数が多い。我が青春の書!

 第4位 「風の歌を聴け」1979年
     読めば読むほど味わいが出るデビュー作。ただし、長編というより中編。

 第5位 「国境の南、太陽の西」1992年
     今年読み返して、改めて魅力を発見した作品。

 村上春樹は「世界の終りとハードボイルド…」までは、性描写を意識的に控えています。
 だから、そのころの作品は違和感なく読むことができ、完成度も高いと思います。

 ところが、性描写解禁の「ノルウェイの森」がヒットしてから、変わってしまった。
 マイ・ベスト3位の作品ですが、今では悪い意味での転換点だったと思っています。

 その後の作品は、ヘンな場面でヘンな性描写があって、完成度を下げています。
 その最たるものが「海辺のカフカ」の、「僕」と「佐伯さん」のあの場面でしょう。

 すばらしい小説を、あのような描写で汚してしまったことが、残念でなりません。
 いま一度「羊三部作」や「世界の終り」の頃にかえって、新作を書いてほしいです。

 ところで、私は短編も読んでいますが、マイ・ベスト5には一つも入っていません。
 多少難はあっても素晴らしい長編が多いので、短編が入る余地はありませんでした。

 以上、冒頭に記したように「独断と偏見で」選んだ「マイ・ベスト」です。
 「そんなことはないだろう」という意見もあると思いますが、ご容赦を!

 さいごに。(肉離れ)

 昨日の日曜日、地元のマスターズ陸上の大会があり、100mに出ました。
 快調にスタートできたものの、中盤競り合いになって、ムキになった途端にピクッ!

 すぐに走るのをやめて医務室へ。軽い肉離れでした。
 全く予兆がありませんでした。念入りにアップもしました。でも、ダメですね・・・


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ねじまき鳥クロニクル2 [日本の現代文学]

 「ねじまき鳥クロニクル 第3部」 村上春樹 (新潮文庫)


 *ネタバレ多めです

 「僕」が妻を取り戻そうとする物語で、「第1部・第2部」続く完結編です。
 「第1部・第2部」が事件編で、この第3部が解決編に当たります。


ねじまき鳥クロニクル〈第3部〉鳥刺し男編 (新潮文庫)

ねじまき鳥クロニクル〈第3部〉鳥刺し男編 (新潮文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1997/09/30
  • メディア: 文庫



 妻の兄である綿谷昇は、政治家として着実に力をつけていました。
 そして妻のクミコとは、いまだに連絡が取れない状態でした。

 「僕」は、妻を取り戻すためには、あの井戸が絶対に必要だと感じました。
 しかし、「首吊り屋敷」を手に入れるためには、どうしたらいいのか。

 あるとき街で、ひとりの女性に声を掛けられたことがきっかけで・・・
 ナツメグとシナモンに会ったあと、いなくなった猫が帰ってきて・・・

 私は第2部まで読んで、何も解決しないことに物足りなさを感じました。
 第3部ではいくつかのことが解明されて、少しすっきりしました。

 ところが驚いたことに、「第3部はいらなかった」と言う人もいるのです。
 第3部は説明的すぎて好きになれない、第2部で終わっておけば良かったと。

 実際、第3部は続編というより、別の作品だという見方もあるようです。
 第2部までは加納姉妹の物語で、第3部はナツメグとシナモンの物語ですし。

 加納姉妹ファンとして残念だったのは、この2人が引っ込んでしまったことです。
 加納マルタと加納クレタと間宮中尉と一緒に、事件解決に導いてほしかった。

 とはいえ第3部が無ければ、この小説は実に寂しいものになっていたと思います。
 綿谷昇の問題や妻の問題など、第3部で多くの部分が解決されるので。

 終盤で「僕」が述べる推理は、根拠が無いものの不思議と説得力があります。
 井戸から壁抜けする場面は、ヘンだけれども面白かったです。

 そういえば井戸の場面は、イザナギの黄泉の国訪問の伝説とイメージがかぶります。
 やはり村上春樹は、日本古来の感性を、自作品にうまく生かしていると思います。

 さて、第3部は解決編であり完結編でありますが、それでも謎が残ります。
 たとえば、「僕」が入り込んだあの世界は何なのか? なぜ入り込めたのか?

 綿谷昇の特殊能力はどのようなものか? どのように備わったのか?
 綿谷昇とクミコの間にはなにがあったのか? クミこはどうなってしまったのか?

 綿谷昇の根源的な悪は、「羊をめぐる冒険」に出てくる「羊」のようなものか?
 どのようにして「僕」は、根源的な悪と戦うほどの力を得ることができたのか?

 考えていると眠れなくなりそうです。
 ネットには村上作品の解釈がたくさん載っているので、参考にしたいと思います。

 さいごに。(マンガノート)

 娘は最近、マンガを描いています。どうやら恋愛ものを描いているらしい。
 「見ちゃダメ」と言ってるくせに、いつもマンガノートは開けっぱなしです。

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ねじまき鳥クロニクル1 [日本の現代文学]

 「ねじまき鳥クロニクル 第1部・第2部」 村上春樹 (新潮文庫)


 *ネタバレ多めです

 「僕」が、様々な不思議な人々と交流しながら、失踪した妻を探す物語です。
 村上春樹の8作目の長編小説で、1992年から1994年にかけて発表されました。


ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)

ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1997/09/30
  • メディア: 文庫



ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編 (新潮文庫)

ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編 (新潮文庫)

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1997/09/30
  • メディア: 文庫



 30歳の「僕」(岡田亨)は失職中で、妻クミコは編集者として働いています。
 ある日、飼い猫がいなくなってから、夫婦の間はぎくしゃくし始めました。

 「僕」は暇な時間を使って、猫を探しますが見つかりません。
 「僕」は、妻の紹介で占い師の加納マルタに会いました。

 加納マルタの話によると、猫の消失はもっと大きな事件の予兆らしいのです。
 その後、間宮中尉という老人から、大戦中の井戸体験の話を聞きました。

 その夜から妻は帰らず、行方が分からなくなり・・・
 「僕」は空き家の古い井戸の底に降りていき・・・

 妻の兄の綿谷昇、加納マルタの妹の加納クレタ、ヘンな電話をしてくる女、
 女子校生の笠原メイ、多くの人々と複雑に絡み合いながら、物語は進みます。

 この小説を読んだのは、単行本で第1部と第2部が出た1994年のことです。
 当時はイマイチでした。間宮中尉の皮剥ぎの話ばかりが脳に焼き付きました。

 だいたい「クロニクル」を、ねじまき鳥の名前だと思っていました。(アホ)
 つまり、クロニクルという名前の鳥の物語だと思って、読んでいたのです。

 しかし、クロニクルとは一般的に年代記のことです。「ねじまき鳥年代記」。
 しかし第1部と第2部を読む限りでは、「ねじまき鳥の事件簿」という感じ。

 さて、今回20年ぶりぐらいで読み直したのですが、とても面白かったです。
 間宮中尉の話の「井戸体験」に、大事な暗示があるように感じました。

 「私はその僅かな時間の光の洪水の中に、それこそ一生かけて見ることが
 できないほどの事物を見てしまったのです。」(第2部P72 )

 「人生というものは、その渦中にある人々が考えているよりはずっと限定
 されたものなのです。人生という行為の中に光が射し込んでくるものは、
 限られたほんの短い期間のことなのです。」(第2部P75)

 そして「僕」も、井戸の底へ降りていきます。
 そこから導かれた場所は・・・「ダンスダンスダンス」と似た展開です。

 夢の中での交わりが現実でもあるという、作者お得意の展開もあります。
 あんたのヘンタイ趣味にはついていけないよと思いつつも、興味深いです。

 夢で愛する人の生霊に会うという話は、日本の古典でもよく登場します。
 古来からある日本的感性を、案外うまく取り入れているのかもしれません。

 さて、1994年に初めて読み終わった時、「なんじゃこりゃ?」と思いました。
 最後まで読んでも、何も解決せず、どこにも辿り着かなかったからです。

 特に「僕」が流されてばかりで、自分では何もできない点が不満でした。
 「僕」がしたことといえば、井戸に降りたことぐらいでしょう。

 しかも、16歳の女子笠井メイによって、井戸から上がれなくなるし。
 だから、加納クレタに救い出してもらわなければならなかったし。

 いい歳をして、笠井メイに、まるで母親に甘えるように甘えているし。
 自堕落な人間にありがちな、妄想ばかりしているし。

 当時は、翌年第3部が出るとは知らなかったので失望していました。
 しかし、第3部で色々なことが解決します。次回、第3部に続きます。

 さいごに。(市の運動会)

 先日、市の運動会に出場しました。私はリレーのアンカーを走りました。
 49歳の私は最長老に近かったです。そろそろ若い人にバトンタッチしたい。

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