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カンタベリー物語1 [中世文学]

 「カンタベリー物語(上)」 ジェフリ・チョーサー作 桝井迪夫訳 (岩波文庫)


 カンタベリー大聖堂へ巡礼中に同宿した様々な人々が、交代でお話を語ったものです。
 イタリアを旅行したチョーサーが、「デカメロン」に影響されて書いた枠物語です。

 1995年に出た、比較的新しい訳なので、文章はとても読みやすかったです。
 丁寧な注釈が60ページあり(読まないって)、所々に美しい挿し絵が入っています。



 「わたし」は、カンタベリーへの巡礼を思い立ち、ある宿屋に泊まりました。
 そこで様々な人々と出会い、宿屋の主人も加わって、一緒に旅することになりました。

 「皆様はめいめい旅のつれづれを慰めるため、この旅行で、カンタベリーへ行く道で
 二つ話をし、家にかえる道でさらに二つ話をなさるということなんです。」(P58)

 クジ引きによって、騎士が最初の話をすることになりました。
 騎士は、古代ギリシアで起こった悲劇を語り始めました・・・

 冒頭の騎士の話は、壮大な叙事詩的な内容で、チョーサーの気合いが感じられます。
 ところが、「デカメロン」のような小話を期待していた私には、少し退屈でした。

 騎士の話が終わり、粉屋の話になって、ようやくこの物語は面白くなり始めました。
 大工の家に下宿している大学生ニコラスが、大工の若妻と恋仲になった話です。

 ニコラスは、「洪水が来る」と言って、桶の中に大工を非難させている間に・・・
 若妻を狙った忍んで来た教区書記に、ニコラスはブッと屁をかませて・・・

 皆が大笑いをする中で、昔大工をしていた家扶だけは、この話が面白くありません。
 そこで家扶(かふ)は、わざと粉屋をバカにした話を語りますが・・・

 家扶の話の後半は、「デカメロン」第九日6話のアレンジです。
 また、それに続く料理人の話は、途中でプツリと終わってしまいます。

 そういうところに、「デカメロン」に比べて、完成度の低さを感じました。
 それも当然。だいたい、「カンタベリー物語」が未完の物語なのですから。

 これは私個人の感想ですが、チョーサーは「デカメロン」に感心して、自分なりに
 「デカメロン」風の物語を書こうとしたけど、結局まとまらなかったのではないか。

 「デカメロン」の語り手は、お上品な紳士と淑女ばかりでした。
 「カンタベリー物語」は、騎士・粉屋・家扶・料理人・弁護士と、とても雑多です。

 この雑多な語り手が、時にけんかしながら色々と語るのが、この物語の魅力です。
 と同時に、雑多であるために、ごちゃごちゃしてまとまりにくいところが難点です。

 とはいえ、中巻・下巻には、まだまだ面白い話が残っています。
 このあとの物語にも期待したいです。

 さいごに。(仏像フィギュア、ゲット)

 アマゾンで仏像のフィギュアを見つけました。それも750円! 即購入しました。
 広隆寺の弥勒菩薩です。値段のわりには良いのですが、お顔がイマイチでした。

 もっと完成度の高いフィギュアはあるのですが、それは25000円もします。
 でも、欲しいなあ。毎月2000円ずつ積み立てようか。







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デカメロン3 [中世文学]

 「デカメロン」 ボッカッチョ作 平川祐弘訳 (河出文庫)


 ペストから逃れた男女10人が、交代で10日間にわたって全100話を物語ったものです。
 河出文庫が読みやすくておススメです。今回は河出文庫版の下巻を紹介します。


デカメロン 下 (河出文庫)

デカメロン 下 (河出文庫)

  • 作者: ジョヴァンニ ボッカッチョ
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/05/08
  • メディア: 文庫



 河出文庫「デカメロン」下巻には、第八日から第十日まで30話のが入っています。
 それぞれのテーマは以下の通り。最後に「著者結び」が付きます。

 第八日は「相手におこなった悪さやいたずらの話」、第九日は「自由テーマ」。
 そして最終の第十日は「立派なことをおこなった話」で、本書は閉じられます。

 第八日の1話は、私のお気に入りです。ドイツ傭兵グルファルドの悪戯の話です。
 彼が裕福で美しい夫人に愛を告白したところ、夫人からお金を無心されました。

 彼はいかにしてお金を調達したか? そして、いかにして夫人を愚弄したか?
 グルファルドは身勝手ではありますが、その策略がとても鮮やかなので許せます。

 第八日の7話は、阿刀田も田辺も取り上げていますが、私は共感できません。
 いくら自分がひどいめにあったからって、学者の復讐はやりすぎですよ。

 第八日の8話も面白い。親友と妻の浮気現場を見た男は、どんな復讐をしたのか?
 こういう復讐だったら、まあいいでしょう。そして、結末には驚きます。

 「俺たち二人の間で違うのは家内だけだった。これからはそれも共有することに
 しようじゃないか」(!)(P133)

 第九日は再び「自由テーマ」です。その2話は傑作。ある尼僧院での話です。
 ふしだらな尼僧をしかる尼僧院長が、頭にかぶったのは男もののパンツで・・・

 10話もサイコーです。ある司祭が、インチキな魔法をほどこす話です。
 司祭は、ある男の依頼でその妻を馬に変えるため、彼女に尻尾をつけて・・・

 さて、とうとう最終日の第十日です。テーマは、立派なことをおこなった話です。
 さんざんバカ話を披露してきたボッカッチョも、最後を美談で飾りたかったのか。

 そこに、ボッカッチョの弱さを感じてしまい、少し悲しいです。
 私としては、最後は思いっきりバカ話をして、締めくくってほしかった!

 第十日の4話は、愛する人妻を生き返らせた騎士の物語です。
 埋葬された夫人から、鼓動が聞こえたため、彼女を家に連れて帰り・・・

 その夫の前で、この女は自分のものだと、筋道立てて主張するジェンティーレ。
 反論が無いにもかかわらず、ジェンティーレが取った賞賛すべき行動は・・・

 確かに立派な行動ではある。しかし、どこか無理をしていて不自然さを感じます。
 彼には、もっと「デカメロン」っぽく、欲望のままに行動してほしかったです。

 そういえば、ボッカッチョ自身も、人生の最後には神を信じたのではなかったか。
 勝手ながら、そこに「デカメロン」とボッカッチョの限界を感じてしまいました。

 さて、「デカメロン」を読んだら、「カンタベリー物語」も読みたいです。
 幸い、岩波文庫から、分かりやすい訳が出ています。
 

完訳 カンタベリー物語〈上〉 (岩波文庫)

完訳 カンタベリー物語〈上〉 (岩波文庫)

  • 作者: チョーサー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1995/01/17
  • メディア: 文庫



 さいごに。(結局プレゼントは)

 娘の誕生日のプレゼントは、結局、お風呂で見られるDVDプレイヤーです。
 やれやれ。これからは、うちの女衆のお風呂時間が長くなりそうだ。

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デカメロン2 [中世文学]

 「デカメロン(中巻)」 ボッカッチョ作 平川祐弘訳 (河出文庫)


 ペストから逃れた男女10人が、交代で10日間にわたって全100話を物語ったものです。
 河出文庫の平川訳が、分かりやすくてリズム感のある名訳で、オススメです。


デカメロン 中 (河出文庫)

デカメロン 中 (河出文庫)

  • 作者: ジョヴァンニ ボッカッチョ
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/04/06
  • メディア: 文庫



 河出文庫「デカメロン」中巻には、第四日から第七日までの40話が収録されています。
 それぞれのテーマは以下の通り。特に第七日が傑作ぞろいです。

 第四日は「恋が不幸な結末で終わる話」、第五日は「恋がめでたい結末で終わる話」。
 第六日は「とっさの機転をきかした話」、第七日は「妻が夫をだました話」・・・

 第四日の1話は、田辺聖子による解説がとても印象的だった物語です。
 ある名門の娘が、父の従者に恋してしまったことによって、引き起こされる悲劇です。

 娘の恋心を醒まそうとして、父親が娘に与えたものは? そして娘はどうしたか?
 ヒロインのギスムンダは、「デカメロン」の中で最も強烈な人物のひとりです。

 第四日の5話は、恋人たちの悲劇です。
 殺された恋人は、愛する彼女の夢枕に立ち、遺体の埋められた場所を教えて・・・

 第五日は第四日とは一転して、恋する人々が不幸の後に、幸せな結末を迎える話。
 皮肉なことに、幸せな結末は、悲惨な結末に比べて、あまり面白みがありません。

 その中で、第五日の9話の鷹の話は、しみじみした趣のある物語です。
 全財産を失った男に、昔愛した婦人が訪れたが、手元にあるのは鷹だけで・・・

 第六日の「機転をきかした話」では、10話のチポㇽラ修道士の話が印象的でした。
 大事な天使の羽(本当はオウムの羽)を、友人に隠された時、機転をきかせて・・・

 第七日の「妻が夫をだました話」は、十日間中で最も面白いテーマです。
 どの話もみな面白いのですが、特に次の6話がオススメです。

 2話。恋人とお楽しみ中、急に夫が帰ってきたので、恋人を樽の中に隠して・・・
 4話。浮気をして締め出された妻が、井戸へ大石を投げ込み、夫を勘違いさせて・・・

 5話。妻が浮気を懺悔しに行くと、司祭様に変装した夫が出てきたので・・・
 6話。妻が恋人と過ごしていると、もう一人の男が来て、さらに夫が帰ってきて・・・

 7話。恋人と安心して過ごすために、妻は思い切った策略を用いて・・・
 8話。浮気がばれた妻は、とっさに侍女を身代わりにして・・・

 さて、次の「デカメロン(下巻)」は、いよいよ最終巻です。
 第八日から最後までが収められています。


デカメロン 下 (河出文庫)

デカメロン 下 (河出文庫)

  • 作者: ジョヴァンニ ボッカッチョ
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/05/08
  • メディア: 文庫



 さいごに。(プールに通う)

 娘は午後になると、片道30分かけて、友達と一緒に学校のプールに通っています。
 プールでは1時間半ほど遊んでいます。子供のエネルギーには、本当に感心します。

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デカメロン入門 [中世文学]

 「ときがたりデカメロン」 田辺聖子 (講談社文庫)
 「花のデカメロン」 阿刀田高 (光文社)


 「ときがたりデカメロン」は、100編の中から19編を選び、内容を紹介したものです。
 「花のデカメロン」は、100編から30編を選び、少し味付けをして紹介したものです。

 どちらも現在は絶版です。
 私はアマゾンで手に入れました。1円でした。


ときがたりデカメロン (講談社文庫)

ときがたりデカメロン (講談社文庫)

  • 作者: 田辺 聖子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1987/03
  • メディア: 文庫



花のデカメロン (光文社文庫)

花のデカメロン (光文社文庫)

  • 作者: 阿刀田 高
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 1990/11
  • メディア: 文庫



 「ときがたりデカメロン」で紹介されている物語は、次の19編です。
 それぞれの日の終わりに田辺註があり、簡単な感想が書かれています。

 第一日の1・4話。 第二日の9・10話。 第三日の2・3・9話。
 第四日の1・4話。 第五日の9話。   第六日の4・10話。
 第七日の2・9話。 第八日の1・7話。 第九話の3・7話。 第十日の6話。

 田辺はもとの物語をアレンジせず、その魅力が効果的に伝わるように語っています。
 言いたいことは田辺註で言い、原文と自分の声をはっきりと分けています。

 ところが、その註の方が、けっこう面白かったりする。
 特に、日本の古典文学との比較が随所で見られるところが、田辺らしくていいです。

 「今昔物語集」と「デカメロン」は似ているという指摘は、なるほどと思いました。
 もっと田辺註が多くても良かったと思います。

 一方、「花のデカメロン」で紹介されている物語は、次の30編です。
 阿刀田は自分の声を、遠慮なく作品の中に放り込んでいて、そこがまた面白いです。

 第一日の1・2・5話。 第二日の5・9・10話。 第三日の2・5・10話。
 第四日の5・8・9話。 第五日の1・9話。   第六日の4・6・8話。
 第七日の2・5・6・7・8話。         第八日の1・7話。
 第九日の1・3・4話。 第十日の4・5・6・8・10話。

 阿刀田は、物語を中断して突然蘊蓄を語り出したり、物語を批評したりします。
 その自由な話し方が阿刀田らしくて良い。語り口がうまくいので全く飽きません。

 たとえば、紳士淑女は郊外に2週間とどまったのに十日物語というのはなぜか?
 それは、禁欲日の金曜と日曜を抜いているから。かゆいところに手が届く解説!

 また、第三日2話の冒頭では、「花嫁花婿取り違え事件」について語られます。
 物語にほとんど関係ないこのエピソードが、最も印象的だったりします。

 第八日に語られる「道聞き屋」の逸話も、物語とは関係ないが、実に面白い。
 「〇〇にはどう行くのでしょうか」と、実直そうな女性に聞かれたが・・・

 さて、田辺と阿刀田が選んだ作品を比較すると、似ているようで似ていません。
 第一日の1話のように、二人の評価が大きく分かれる作品もあります。

 つまり、それだけいろんな解釈があるわけで、奥が深いということでしょうか。
 「デカメロン」には、自分のお気に入りの物語を探すという楽しみ方もあります。

 私が最も気になったのは第七日。「婦人が恋のために夫を欺いた話」です。
 阿刀田は第七日からは、10話中5話を紹介しています。分かるなあ・・・

 ところで、「デカメロン」の中巻と下巻は、まだ読んでいません。
 この2冊のおかげで、さらに面白く読めそうです。


デカメロン 中 (河出文庫)

デカメロン 中 (河出文庫)

  • 作者: ジョヴァンニ ボッカッチョ
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/04/06
  • メディア: 文庫



デカメロン 下 (河出文庫)

デカメロン 下 (河出文庫)

  • 作者: ジョヴァンニ ボッカッチョ
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/05/08
  • メディア: 文庫



 さいごに。(いいな、調理クラブ)

 うちの娘は、学校のクラブ活動で、調理クラブに入りました。
 毎回、1時間で作れるものを色々と作っています。

 前回はパフェ。材料を持ち寄って、学校で盛り付けて、そのまま食べてきました。
 その日は夕飯があまり食べられませんでした。が、とても楽しそうにやってます。

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ウォルスング家の物語 [中世文学]

 「北欧神話と伝説」 グレンベック著 山室静訳 (講談社学術文庫)


 「北欧神話と伝説」は、北欧の代表的な神話と伝説を分かりやすく翻案したものです。
 その伝説篇に、ジークフリート神話で有名な、「ウォルスング家の物語」があります。

 神話だけを扱った本は多いが、本書は神話と伝説の両方を収録していて、貴重です。
 しかも、物語は読みやすく再構成されています。とても分かりやすい解説書です。


北欧神話と伝説 (講談社学術文庫)

北欧神話と伝説 (講談社学術文庫)

  • 作者: ヴィルヘルム・グレンベック
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/09/10
  • メディア: 文庫



 「ニーベルンゲンの歌」を読んだ時、「ウォルスング・サガ」にも興味が湧きました。
 しかし、なかなか見つからず、最近ようやく本書に収録されていることを知りました。

 「ニーベルンゲンの歌」も「ウォルスング・サガ」も、元はニーベルンゲン伝説です。
 それがアイスランドにわたり、比較的原型をとどめたものが「ウォルスング・サガ」。

 ロキ神が小人のアンドヴァルから莫大な宝を取り上げた時、呪いをかけられました。
 「その腕輪と黄金は、誰でもそれを手に入れた者に、死を与えるように」と。

 それからのち、その財宝を手にした一族には、争い事と殺し合いが起こりました。
 その呪いはやがて、それを手に入れたウォルスング家のシグルドに降りかかり・・・

 小人の財宝、財宝を守る竜、シグルドの竜殺し、偽りの求婚、シグルドの結婚・・・
 「ニーベルンゲンの歌」では描かれていないエピソードを、たくさん知りました。

 シグルドのずっと先の代から、丁寧に解き明かしているところが良いです。
 ただしこの本は、様々な原典を再構成して、著者がまとめたものです。

 だから「ウォルスング・サガ」ではなく、「ウォルスング家の物語」です。
 純粋な「ウォルスング・サガ」を読むにはどうしたらよいのか、よく分かりません。

 しかし、とても要領よくまとめられていて、著者の語り口も魅力的です。
 「ウォルスング家の物語」を読むためだけでも、この本を買う価値があるでしょう。

 さて、本書にはほかにも、多くの神話と伝説が収録されています。
 まだほかのサガやエッダを読んでいませんが、ぜひいつか紹介したいです。

 さいごに。(平泳ぎ50M)

 娘が学校で25M泳げなかったというので、日曜日に市民プールに連れて行きました。
 平泳ぎは上手でした。クロールは息継ぎを少し教えたら、すぐにうまくなりました。

 泳がせたら、クロールは25M泳げました。平泳ぎは、なんと往復50M泳げました!
 1時間ほどの練習で、驚くほど上達しました。次の水泳の授業が楽しみです。

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デカメロン1 [中世文学]

 「デカメロン」 ボッカッチョ作 平川祐弘訳 (河出文庫)


 ペストから逃れた男女10人が、交代で10日間にわたって全100話を物語ったものです。
 別名「十日物語」。また、ダンテの「神曲」に対して、「人曲」とも言われています。

 2012年に単行本で出た平川訳が、河出文庫から三分冊で出ています。オススメです。
 分かりやすくてリズム感のある名訳です。また、注釈と解説が充実しています。


デカメロン 上 (河出文庫)

デカメロン 上 (河出文庫)

  • 作者: ジョヴァンニ ボッカッチョ
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/03/07
  • メディア: 文庫



 時は1348年。イタリアではペストが流行し、人々がバタバタと死んでいました。
 たまたま出会った7人の淑女と3人の貴公子が、田舎の地所に避難しました。

 そこで、退屈しのぎにある提案がありました。「どなたかお一人に物語を話して
 いただき、皆さんがそれを拝聴するというのはいかがでしょう。・・・」(P45)

 以後、毎日10人が交代で話をし、それを10日間続けることになりました。
 といっても、私が読んだのはまだ第三日まで。計30話にすぎない。

 第一日のテーマは自由です。第二日は「最初は不幸で最後に幸せになった話」。
 第三日は「欲しかったものを手に入れた人や失ったものを取り戻した人の話」。

 さて、冒頭の第一日第一話から傑作です。
 極悪非道のチャッペㇽレットが、嘘の懺悔をしたあげく、聖人として祭られる!

 第二日第九話は、めまぐるしく展開する短編小説です。
 夫に誤解された妻は、男装してサルタンに仕え、自分を陥れた男に復讐を遂げる!

 しかし、なんといっても面白いのは、第三日第八話でしょう。
 友人の妻に惚れてしまった修道院長は、驚くべき手段で人妻と思いを遂げる!

 夫の焼きもちを治すためには、一度死んで煉獄へ行かなければならない。
 そう言って修道院長が企んだことは? 夫が死んでいる間、修道院長と人妻は?

 そして、巻末を飾る第三日第十話は、爆笑まちがいなし。典型的な好色話です。
 娘が聖者に行った「悪魔をインフェルノへ送り込む」行為とは、いったい何か?

 登場するのは、好色で貪欲で狡猾な人間ばかり。中でも不良修道士が目立ちます。
 ペストによる混乱で乱れきった当時の風俗が、よく伝わってきました。

 ダンテの「神曲」では、この人はこんなに悪いことをしたからこんな罰を受けている、
 という話ばかりが続きました。その基準になるのは、キリスト教的か否かでした。

 ボッカッチョの「人曲」では、この人はこんなに悪いことをしてこんなに得をした、
 という話が目立ちます。キリスト教的であろうがなかろうが、関係ありません。

 その代表的な人物が、冒頭に登場する極悪非道の代書人チャッペㇽレットです。
 この男は宗教をバカにしていたゆえに、死後聖者として崇められるようになります。

 キリスト教的にはとんでもない。しかし、ひとりの人の生き方としては実に痛快です。
 こういう生き方を肯定的に描いているところが、「人曲」といわれるゆえんでしょう。

 さて、話はそれぞれ10~20ページほどの短編なので、飽きずにどんどん読めます。
 しかも、冒頭に物語の概略が示されているため、後で読み返す時に便利です。

 「デカメロン」は名著なので、これまでにいくつもの文庫から出ていました。
 しかし、講談社文芸文庫版は部分訳で、ちくま文庫版と岩波文庫版は絶版です。

 本書の魅力を伝えた本に、田辺聖子の「ときがたりデカメロン」があります。
 また、阿刀田高の「花のデカメロン」もオススメです。ただし両方とも絶版。


ときがたりデカメロン (講談社文庫)

ときがたりデカメロン (講談社文庫)

  • 作者: 田辺 聖子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1987/03
  • メディア: 文庫



花のデカメロン (光文社文庫)

花のデカメロン (光文社文庫)

  • 作者: 阿刀田 高
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 1990/11
  • メディア: 文庫



 さいごに。(シューアイス、ゲット)

 セブンイレブンのシューアイスを、ようやくゲットしました。
 娘が買ったお店を教えてもらって、そこへ行ったら、ちゃんと売っていました。

 夕食後のデザートとして、娘と一緒に食べています。とてもおいしいです。
 しかし、これをあちこち探し回っていた時が、一番楽しかったような・・・

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新生 [中世文学]

 「新生」 ダンテ・アリギエーリ作 平川祐弘訳 (河出文庫)


 永遠の女性ベアトリーチェへの愛と、その死に対する悲しみを綴った詩文集です。
 若い頃に書いた詩31編と、その説明文で構成されています。1293年頃の作品です。

 2012年に河出書房新社から単行本で出て、2015年7月に河出文庫に入りました。
 とても分かりやすい、画期的な訳だと思います。また、註が充実しています。


新生 (河出文庫)

新生 (河出文庫)

  • 作者: ダンテ
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2015/07/04
  • メディア: 文庫



 「わたしの記憶の書物には『ココニ新シキ生は始マル』と朱で特筆された章がある。」
 第1章に書かれていますが、これはダンテの「新しき生」について記したものです。

 ダンテ・アリギエーリは9歳の時、ベアトリーチェという9歳の少女と出会いました。
 それ以後、ベアトリーチェの面影は、ダンテの念頭を離れなくなりました。

 それから9年後、18歳の最後の日に、ダンテはベアトリーチェと邂逅しました。
 しかも彼女は、ダンテの前を過ぎていくとき、いかにも上品に会釈をしたのです。

 ダンテはひそかに彼女を「あえかなる君」と呼んで、ひそかに愛し始めました。
 数年後、ベアトリーチェは、はかなく天に召され、ダンテの苦しみが始まり・・・

 「この苦しみは死にいたる道ーー苦しみを晴らすためには、わたしには
 ほかに手立てはない、泣きつつ語るしかない。ーー」(P161) 

 ダンテは苦しみをやわらげるために、詩の中でベアトリーチェを描きました。
 そして、詩の中にありながらベアトリーチェは、ダンテ自身の心を癒したのです。

 こうしてベアトリーチェは、生前にも増して、圧倒的な存在感を獲得しました。
 彼女はもう「あえかなる君」ではなく、永遠に生きる女神となったのです。

 この「新生」を読んでいると、そういったことが、ぞくぞくするほど分かります。
 まるでダンテになったかのように、彼の恋と悲しみを再体験することができます。

 ベアトリーチェは他の男と結婚しましたが、ダンテは生涯彼女を愛し続けました。
 のちにダンテは「神曲」でベアトリーチェを登場させ、彼女を神格化させました。

 さて以前、ある文学全集の「新生」を読んだら、難解で、すぐに投げ出しました。
 しかしこの河出文庫版は、「新生」を身近にする画期的な名訳だと私は思います。

 また同じ河出文庫から、「デカメロン」の新訳も出ていて、こちらも読みやすい。
 ボッカッチョは、ダンテの半世紀後に生まれ、ダンテの作品に心酔しました。


デカメロン 上 (河出文庫)

デカメロン 上 (河出文庫)

  • 作者: ジョヴァンニ ボッカッチョ
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/03/07
  • メディア: 文庫



 さいごに。(ケガばかり)

 50歳の記念に、競技会に出たいと思っているのですが、脚を傷めてばかりいます。
 東海マスターズも筋膜炎で棄権。無理せず、まずケガを完治させようと思います。

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コーランを知っていますか [中世文学]

 「コーランを知っていますか」 阿刀田高 (新潮文庫)


 イスラム教の聖典「コーラン」について、とても分かりやすく解説した著書です。
 阿刀田得意の解説シリーズのひとつです。2006年に新潮文庫から出ました。

コーランを知っていますか (新潮文庫)

コーランを知っていますか (新潮文庫)

  • 作者: 阿刀田 高
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/12/22
  • メディア: 文庫



 「コーラン」は、アラーがマホメットの口を通して語った言葉が書かれています。
 つまりそこに記されているのは、マホメットの言葉ではなく、神の言葉なのです。

 「慈悲あまねく慈愛深きアラーの御名(みな)において。
 万有の主(あるじ)、アラーにこそ凡(すべ)ての称讃あれ、
 慈悲あまねく慈愛深き御方、最後の審(さば)きの主宰者に。・・・」(冒頭)

 マホメットが40歳のとき(西暦610年)、アラーからの最初の啓示がありました。
 その後、その死(632年)まで、あらゆる分野にわたって啓示があり続けました。

 その啓示を集大成したのが、第三代カリフのウスマーンで、時は650年代でした。
 構成はバラバラで、内容も長さも統一感がありませんが、音読した時すばらしい。

 私は以前、放送大学のTV放送で、コーランの祈りの声を聞きました。
 非常に厳かで格調高く、そして美しく響いていました。

 さて、この著書には「コーラン」のこと以外にも、多くのことが書かれています。
 マホメッドの生涯、後継者の争い、イスラムの歴史、アラブの文化などなど。

 そして終章は、サウジアラビア旅行記になっていて、これがけっこう楽しいです。
 期待に胸を膨らませてメディアに入ったら、そのまま空港に誘導されて・・・

 読後、岩波新書の「メッカ」(野町和嘉)を読みたくなります。
 野町氏は、この写真を撮るために、イスラム教徒になったとか。執念を感じます。


カラー版 メッカ―聖地の素顔 (岩波新書)

カラー版 メッカ―聖地の素顔 (岩波新書)

  • 作者: 野町 和嘉
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2002/09/20
  • メディア: 新書



 ところで私は、「コーラン」を中世の叙事詩の一つであるととらえています。
 それは、「旧約聖書」を古代の叙事詩としてとらえたことと同じです。

 どちらもそれぞれの民族の英雄について書かれています。
 そしてどちらも、長い時間詠唱され続け、その民族の心の支えとなっています。

 さて、阿刀田の解説本には、「ギリシア神話を知っていますか」等もあります。
 「ギリシア神話を知っていますか」
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-11-05

 さいごに。(ビアガーデン)

 職場の仲間といっしょに、百貨店の屋上のビアガーデンに行きました。
 飲み放題、食べ放題で、4000円。飲みすぎ、食べ過ぎで、翌朝たいへんでした。

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ケルト神話と中世騎士物語 [中世文学]

 「ケルト神話と中世騎士物語」 田中仁彦 (中公新書)


 中世騎士物語の中に生きている、ケルト人の他界の観念について解説しています。
 新書です。1995年に出て、ロングセラーを続けている著書です。


ケルト神話と中世騎士物語―「他界」への旅と冒険 (中公新書)

ケルト神話と中世騎士物語―「他界」への旅と冒険 (中公新書)

  • 作者: 田中 仁彦
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1995/07/25
  • メディア: 新書



 三部構成になっています。第一部は「ケルト人と他界」です。
 ケルト人の残した妖精や小人の神話から、彼らの他界の観念を述べています。

 海の彼方の女人国とは何か? ケルト人の他界の観念はどのようなものか?
 巨石文明を作ったのは誰か? 地下に住む妖精や小人は何者か?

 「ブランの航海」、「コンラの冒険」、「ダナの息子たち」にまつわる神話・・・
 この第一部には、他界への旅の神話が次々と登場して、とても興味深いです。

 第二部は「ケルト・キリスト教と他界」です。
 キリスト教の受容とともに、ケルト的他界が変貌していくさまを述べています。

 ケルトの神は悪魔となり、ケルトの他界は天国・楽園・煉獄・地獄となって・・・
 古い神々は、しだいに新しい神々に支配されていきます。

 第三部は「中世騎士物語と他界」です。いよいよアーサー王物語が登場します。
 ここでは、中世騎士物語の中に生きる、ケルト的他界の観念について述べています。

 アーサー王とアヴァロン、ランスロとゴールの国、ペルスヴァルと聖杯城・・・
 彼らは皆、突如開かれたケルト的他界へと旅立っています。

 また第三部は、アーサー王伝説について、いろいろと面白い指摘をしています。
 いわく、アーサー王国を滅ぼした真の原因は、王妃とランスロの愛・・・

 アーサー王伝説を、ケルト神話を踏まえて読み直せた点が、良かったです。
 ところで、終章の次の言葉が、とても心に染み入りました。

 「現代のわれわれは人生が旅であるということの本当の意味を見失ってしまった。
  われわれはどこへも出発することなく、ただじっと死を待っている。
  われわれにはもはや、そこに向かって出発すべき他界が存在しないのだ。」(P238)

 さいごに。(手越とパパとどっちがいいか?)

 娘によると、うちのママはNEWSの手越が好きなのだそうだ。
 「手越とパパとどっちがいいか、ママに聞いてみる」と言うので、私は慌てました。

 「やめなさい。ママは答えたくないだろうし、パパだって答えを聞きたくはない。」
 すると娘は、「大丈夫。パパが傷つかないように聞くからね。」と言いました。(涙)

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結婚十五の歓び [中世文学]

 「結婚十五の歓び」 (岩波文庫)


 「結婚十五の歓び」は、男から見た結婚における十五の「難儀」を述べたものです。
 岩波文庫から出ています。所々に稚拙だが味わいのある挿絵が入っています。


結婚十五の歓び (岩波文庫 赤 571-1)

結婚十五の歓び (岩波文庫 赤 571-1)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1979/01/16
  • メディア: 文庫



 「結婚十五の歓び」なんて嘘ばっかり。結婚によって不幸になった男たちの話です。
 結婚した男を、魚梁(やな)に入り込んで抜け出せない魚に例えています。

 いわく、結婚する男は魚に似ている。大海を自由に泳ぎながら、魚梁の餌の匂いに
 誘われて、魚梁の中へ入り込んだら最後、もうそこから逃げ出せないのだ・・・

 そして、結婚には十五の難儀があり、しかも人はそれを歓喜とみなす、と言います。
 「結婚十五の歓び」とは、つまり「結婚十五の難儀」のことなのです。

 「第一の歓び」では、結婚まもない男が、妻に服をねだられる様子を描いています。
 「第二の歓び」では、着飾った妻が、社交界で夫を軽んずる様子を描いています。

 「第三の歓び」では、遊びまわった妻が、身重になった様子を描いていて・・・
 という調子で十五まで続きます。だんだんやりきれない気持ちになっていきます。

 私のお気に入りは「第十一の歓び」です。
 若い貴公子が各地を遍歴している時、身重とは知らずにその娘を求婚してしまい・・・

 女たちの恐ろしい知恵。手の込んだ計略。
 やれやれ。この本を読んでしまった男は、もう結婚したいとは思わないでしょう。

 さいごに。(本が読めない)

 転勤して新しい職場にまだ慣れないのに、年度替わりの忙しさが加わって大変です。
 帰りは夜遅くなるし、仕事は持ち帰らなければならないし、読書の時間が取れません。

 まあ、もう少ししたら少しずつ慣れて、余裕も生まれるとは思うのですが・・・
 ちなみに、あすの土曜もあさっての日曜も仕事です。

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