So-net無料ブログ作成
検索選択
20世紀アメリカ文学 ブログトップ
前の10件 | 次の10件

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ [20世紀アメリカ文学]

 「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」
 ジョン・ル・カレ作 村上博基訳 (ハヤカワ文庫)


 元イギリス情報部員が、情報部に潜り込んでいるソ連の二重スパイを探す物語です。
 「スクールボーイ閣下」「スマイリーと仲間たち」と続く、三部作の第一弾です。

 2012年3月に、待望の〔新訳版〕が出ました。
 次から次にカタカナの人名が登場するため、意外と読みにくかったです。


ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV)

ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫NV)

  • 作者: ジョン ル・カレ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/03/31
  • メディア: 文庫



 ジョージ・スマイリーは、前年までイギリス情報部「サーカス」の中枢にいました。
 しかし、情報部チーフだったボスが失脚し、スマイリーは引退生活に入りました。

 そのスマイリーが、ある日、情報機関監視役によって、ひそかに呼び出されました。
 どうやら「サーカス」の中に、ソ連のスパイがもぐりこんでいるようなのです。

 膨大な情報を丹念に調べていくうちに、スパイの候補は絞られていき・・・
 ボスが失脚した事件の真相も、しだいに明らかとなり・・・

 私がこの作品を知ったきっかけは、「池澤夏樹の世界文学リミックス」でした。
 スパイ小説としてはもちろん、リアリズム小説としても傑作だと書かれていました。

 「池澤夏樹の世界文学リミックス」
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2015-10-27

 実は私は、この本を、お正月休みのお愉しみに、買っておいたのです。
 しかし、内容が気になって気になって、とうとう我慢できずに読んでしまいました。

 スマイリーが、少しずつ二重スパイをあぶり出していく過程は、もちろん面白い。
 そして、スマイリーら登場人物が背負う悲しみが、物語に深みを与えています。

 この作品の魅力の大きな部分は、主人公スマイリーの人物像にあります。
 元情報部員の切れ者。今は小太りで短足で初老の男。妻に逃げられた孤独な男。

 普通のスパイ小説なら、真実に近づけば近づくほど、わくわくするものなのに、
 スマイリーが、真実に近づけば近づくほど、なぜかもの悲しさがつのっていきます。

 さて、この本は〔新訳版〕ですが、意外と読みにくかったです。
 アマゾンのレビューでは、翻訳に対する否定的な意見が目立ちました。

 私にとって、この作品の読みにくさの原因は、登場人物の多さにありました。
 冒頭ページに登場人物リストがありますが、それ以外にもわんさと出てきます。

 私はレイコンとヘイドンを取り違えて、わけが分からなくなってしまいました。
 途中、だいぶ前のページに戻って読み直し、ようやく理解しました。(愚かな!)

 また、話が必ずしも時間軸に沿っていません。突然回想シーンが入ったりします。
 暗示も多用されています。構成が緻密で、要するに実に文学的な作品なのです。

 この作品は、「裏切りのサーカス」というタイトルで映画化されました。
 派手なアクションはありませんが、とても丁寧に美しく仕上げられています。


裏切りのサーカス スペシャル・プライス [DVD]

裏切りのサーカス スペシャル・プライス [DVD]

  • 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
  • メディア: DVD



 「ティンカー、テイラー」を読んだら、続編もぜひ読んでみたくなります。
 特に二作目「スクールボーイ閣下」は、村上春樹が絶賛した作品だといいます。


スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

  • 作者: ジョン ル・カレ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1987/01/31
  • メディア: 文庫



スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

  • 作者: ジョン ル・カレ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1987/01/31
  • メディア: 文庫



スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439))

スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439))

  • 作者: ジョン・ル・カレ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1987/04/15
  • メディア: 文庫



 さいごに。(おにぎりハンバーグ完食)

 先日、地元で有名なハンバーグ屋に行きました。
 娘が「おにぎりハンバーグ」を注文すると言うので、私は最初止めました。

 それは200グラムあり、おにぎりのような大きさです。しかし娘は楽々完食。
 次は250グラムのげんこつハンバーグを食べると言っています。

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

ベンジャミン・バトン [20世紀アメリカ文学]

 「ベンジャミン・バトン」 フィツジェラルド作 永山篤一訳 (角川文庫)


 生まれたときは老人で、しだいに若返る男の物語など、7編を収めた短編集です。
 ブラッド・ピット主演の「バンジャミン・バトン」は、2008年に上映されました。

 角川文庫から、映画の公開に合わせて出版されました。
 未訳だった作品ばかり集められているため、貴重な作品集です。


ベンジャミン・バトン  数奇な人生 (角川文庫)

ベンジャミン・バトン 数奇な人生 (角川文庫)

  • 作者: フィツジェラルド
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2009/01/24
  • メディア: ペーパーバック



 タイトル作「ベンジャミン・バトン」は、映画化によって注目された作品です。
 生まれたときは老人で、死んでいくときは赤ん坊。もしそんな人生だったら?

 年を取るたびに若返るというのは、ちょっと羨ましい気がしましたが・・・
 他人と違う時間軸で生きる者の、どうしようもない孤独・・・

 「ダンス・パーティの惨劇」は、この本の中で最もオススメの作品です。
 美女を殺したのは誰か? 婚約者が殺したのか? よくできたミステリです。

 「最後の美女」は、青春時代の切ない喪失感が、余韻として残る作品です。
 美女アイリーは、精神を病み始めた妻ゼルダをモデルにしているという。

 「異邦人」もまた、切なくなる作品で、最も印象に残りました。
 若い夫婦ケリー夫妻は、莫大な遺産を手にし、世界を旅して回っています。

 しかし、楽しかったのは最初だけで、やがて倦怠を感じるようになり・・・
 贅沢な暮らしをしているのに、ちっとも幸福ではなくて・・・

 「平穏な暮らしに、愛情に 、健康といった具合に、大切なものがどんどん
 うしなわれていくのはなぜなのでしょうね?」(P200)

 こんな、なんでもない言葉が、妙に悲しく胸に響きます。
 ケリー夫妻は、フィツジェラルドと妻ゼルダをモデルにしているという。

 次は、村上春樹訳の「マイ・ロスト・シティ」を読みたいです。
 中公文庫から出ていた中古本が、アマゾンでは1円で手に入ります。


マイ・ロスト・シティー―フィッツジェラルド作品集 (1981年)

マイ・ロスト・シティー―フィッツジェラルド作品集 (1981年)

  • 作者: スコット・フィッツジェラルド
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1981/05
  • メディア: -



 さいごに。(ドラ焼き買って怒られて)

 土曜日に、近所の和菓子屋で、名物のドラ焼きを家族3人分買いました。
 娘は素直に喜んで、「パパ、ありがとう」と言ってくれました。

 しかしママさんは、「また体に良くない物を買って」と言って怒り出しました。
 すると娘も寝返って、「パパ、またそんなもの買って」と、私は二人に怒られて・・・

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:

イリュージョン [20世紀アメリカ文学]

 「イリュージョン」 リチャード・バック作 村上龍訳 (集英社文庫)


 気ままなヒコーキ野郎と、もと救世主という不思議な男との交流を描いた物語です。
 「かもめのジョナサン」と並ぶ、リチャード・バックの代表作です。

 集英社文庫から、村上龍訳が出ていましたが、現在は品切れ。私が読んだのもこれ。
 訳者の創作部分が多いことで有名です。オシャレな挿し絵が多数入っています。


イリュージョン (集英社文庫 ハ 3-1)

イリュージョン (集英社文庫 ハ 3-1)

  • 作者: リチャード・バック
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1981/03
  • メディア: 文庫



 村上龍の訳は、勝手な創作部分が多いため、違和感を覚える人も多いです。
 同じ集英社文庫から、より原文に近い佐宗訳も出ましたが、現在は品切れ。


イリュージョン―悩める救世主の不思議な体験 (集英社文庫)

イリュージョン―悩める救世主の不思議な体験 (集英社文庫)

  • 作者: リチャード バック
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2009/05
  • メディア: 文庫



 ヒコーキ乗りのリチャードは、同業のドナルド・シモダという男に出会いました。
 その男は、かつて大衆の前から忽然と姿を消した救世主だというのです。

 この日から、二人は行動をともにすることになりました。
 リチャードは救世主から、さまざまなことを教えられます・・・

 「自由が欲しい時は他人に頼んじゃいけないんだよ、
  君が自由だと思えばもう君は自由なんだ、・・・」(P56)

 「イリュージョンだ、リチャード、この世の全てはイリュージョンだ、
  何から何まで光と影が組織されて、像を結んでるだけなんだ、・・・」(P77)

 物語は、淡々と進行します。言葉は、じわりじわりと心に染み入ります。
 この作品をバイブルにしている人も多いようです。

 では、この救世主は、いったい何者だったのか?
 なぜ、リチャードのもとにやってきたのか?

 「もちろん俺はいかさま師だ、この世界に生きている人間はみんなそうだ、本当の
 自分じゃないものになりすまして生きているのさ、」(P182)・・・んー?

 さて、ファンの間では、集英社文庫の旧版(村上訳)と新版(佐宗訳)の二つのうち
 どちらを取るかで、意見が分かれているのだとか。

 私は村上訳しか読んでいないため、佐宗訳を買いたいと思ったら、品切れでした。
 現在は、旧版も新版も、どちらも新刊では手に入らない状態です。残念!

 二つを読み比べたいので、集英社さん、ぜひ復刊してください。
 ついでながら、リチャード・バックの「one」の復刊もお願いします。


ONE(ワン) (集英社文庫)

ONE(ワン) (集英社文庫)

  • 作者: リチャード バック
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1996/12
  • メディア: 文庫



 さいごに。(スターウォーズ)

 家族で「スターウォーズ」を、エピソードⅠから順に、少しずつ見ています。
 娘が話について来られなくなるので、しょっちゅう中断しています。

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:

かもめのジョナサン [20世紀アメリカ文学]

 「かもめのジョナサン」 リチャード・バック作 五木寛之訳 (新潮文庫)


 飛ぶことを追求し続けて、高次の世界へ入ってゆく、一羽のかもめの物語です。
 1970年代にヒッピーに読まれ、アメリカで爆発的なブームとなった作品です。

 現在、新潮文庫から出ています。訳は作家の五木寛之で、分かりやすいです。
 かもめの写真が多数挿入されていて、文章は少ないです。


かもめのジョナサン (新潮文庫 ハ 9-1)

かもめのジョナサン (新潮文庫 ハ 9-1)

  • 作者: リチャード・バック
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1977/06/01
  • メディア: 文庫



 かもめのジョナサン・リヴィングストンは、飛ぶことが大好きです。
 食べることも忘れて、様々な飛び方で自分の限界に挑戦しています。

 しかし、あるとき長老に呼ばれ、ジョナサンは群れから追放されてしまいました。
 エサを食べて生きるだけの、大多数のかもめからは、異端者と見られたのでした。 

 同胞と離れてひとり、生きることの意味を考え、飛び続けるジョナサン。
 そこに現れた二羽のかもめが、彼を高次の世界へ誘い・・・

 この小説を初めて読んだのは、高校時代です。
 その頃はさっぱり分からなかった。特に、パート2とパート3が。

 「一羽一羽が、まさしく偉大なかもめの思想であり、自由という無限の思想なのだ」
 (P102)なんて言われても、なんのこっちゃ、と思っただけでした。

 「目に見えるものには、みんな限りがある。きみの心の目で見るのだ。」(P129)
 なんて言われてもねえ。(しかしこの言葉は「星の王子さま」に通じる。)

 今読み直してみると、スピリチュアルな部分が相当含まれていることが分かります。
 高校生の自分にとっては、かなり抽象的で高度な内容だったと思います。

 では、なぜ高校時代に読んだかというと、夏休み(冬休み?)の宿題のためでした。
 先生方が推薦する30冊ほどの中から、1冊選んで読まなければならなかったのです。

 推薦図書の中で、最も短い時間で読めるのが、「かもめのジョナサン」だったのです。
 写真が多いので、確かに読むのは簡単でしたが、理解することはできませんでした。

 さて、この作品にはもともとパート4があったのだそうです。
 昨年2014年に、44年ぶりの封印を解いて、パート4が発表されました。

 それが、「かもめのジョナサン完成版」で読むことができます。
 単行本なので、私は図書館で借りて読みました。

 ジョナサンの去った後のことが分かった点は、良かったと思いました。
 しかし私は、パート4無しの方が、内容にまとまりがあると感じました。


かもめのジョナサン完成版

かもめのジョナサン完成版

  • 作者: リチャード バック
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/06/30
  • メディア: 単行本



 さいごに。(念願の再放送2)

 NHKで、かの名作アニメ「ベルサイユのばら」の再放送が始まりました。
 毎回録画して、家族で見ようと思っています。

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

事件の核心 [20世紀アメリカ文学]

 「事件の核心」 グレアム・グリーン作 小田島雄志訳 (ハヤカワepi文庫)


 恋愛と神への忠誠心の間でもがき苦しむ、ある警察副署長の悲劇的な物語です。
 グリーンの代表作のひとつとして知られている小説です。

 ハヤカワepi文庫の「グレアム・グリーン・セレクション」の一冊です。
 2005年に出たときに読みました。訳は1982年のもので、分かりやすいです。


事件の核心 (ハヤカワepi文庫―グレアム・グリーン・セレクション)

事件の核心 (ハヤカワepi文庫―グレアム・グリーン・セレクション)

  • 作者: グレアム グリーン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2005/12
  • メディア: 文庫



 舞台は、西アフリカのイギリス植民地。主人公は警察副署長スコービー。
 彼は熱心なカトリックで、神の前で恥じることのない生活を送っています。

 スコービーには、気まぐれな妻ルイーズがいますが、すでに愛情はありません。
 ルイーズが南アフリカ 行きを希望した時、彼は費用を捻出し妻を送り出します。

 実はこの時スコービーは、悪党のシリア商人から金を借りたのでした。
 このことがきっかけで、スコービーの生活が、少しずつ崩壊していきます。

 ルイーズ不在の間に、スコービーは若い未亡人ヘレンと知り合って・・・
 お互いに惹かれるようになった二人は・・・

 グリーンの「情事の終り」を、2014年ナイス文庫賞に、私は勝手に選びました。
 この「事件の核心」も、それに劣らず、切なくて感動的な小説です。

 この作品もまた、不倫にまつわる恋愛小説です。
 そしてそれ以上に、神をめぐる哲学的な小説であります。

 事件の核心にいるのは、妻ルイーズでもなく、愛人ヘレンで もありません。
 事件の核心にいるのは、神です。

 神に対して忠誠でありたいために、神を裏切らなければならない・・・
 神を愛するゆえに、神から遠ざからなくてはならない・・・

 苦しい決断をせまられたスコービー。
 彼は救われるのでしょうか。とても考えさせられる内容です。

 さて、グリーンにはほかにも、「権力と栄光」という傑作があります。
 また、「負けた者がみな貰う」という面白そうな作品もあります。


権力と栄光 グレアムグリーンセレクション  ハヤカワepi文庫

権力と栄光 グレアムグリーンセレクション ハヤカワepi文庫

  • 作者: グレアム・グリーン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/09/08
  • メディア: 文庫



負けた者がみな貰う―グレアム・グリーン・セレクション (ハヤカワepi文庫)

負けた者がみな貰う―グレアム・グリーン・セレクション (ハヤカワepi文庫)

  • 作者: グレアム グリーン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/12
  • メディア: 文庫



 さいごに。(インフル流行)

 娘のクラスで、インフルエンザが大流行しています。
 横の席の子も、後ろの席の子も、インフルエンザで休んでいます。

 心配です。娘は今シーズン、予防接種をしていません。
 昨年、予防接種をしていながら、A型にもB方にもかかったので。


nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:

怒りの葡萄2 [20世紀アメリカ文学]

 「怒りの葡萄(下)」 スタインベック作 黒原敏行訳 (ハヤカワepi文庫)


 農地を追われた一家が、カリフォルニアでたくましく生活する物語です。
 ノーベル賞受賞の、理由となった作品です。

 昨年2014年の暮れに、ハヤカワepi文庫から新訳が出ました。上下二分冊。
 前回、上巻を紹介しました。今回は、主に下巻の紹介です。


怒りの葡萄〔新訳版〕(上) (ハヤカワepi文庫)

怒りの葡萄〔新訳版〕(上) (ハヤカワepi文庫)

  • 作者: ジョン スタインベック
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/12/19
  • メディア: 新書



怒りの葡萄〔新訳版〕(下) (ハヤカワepi文庫)

怒りの葡萄〔新訳版〕(下) (ハヤカワepi文庫)

  • 作者: ジョン スタインベック
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/12/19
  • メディア: 新書



 総勢13人の大集団で、夢のカリフォルニアを目指したジョード一家。
 しかし、政府のテント村にたどりついたときには、8人に減っていました。

 家族は、少しずつちりじりになっていきます。
 一家の中心は、いつのまにか父から母に移っていました。

 様々な変化の中でも、変わらずふんばり続けるのはトムです。
 しかし、大規模な桃農園で、トムはある事件に巻き込まれてしまい・・・

 カリフォルニアにたどりつくまでが、とてもたいへんだったのに、
 たどりついてから、さらにいっそうの困難が待ち受けていました。

 大土地所有者が、賃金を下げるために、いかに狡猾な手を使ってきたか!
 警官たちが、流民を抑え込むために、いかに乱暴な手段を取ってきたか!

 この小説を最後まで読んで、私は「そりゃないだろう!」と思いました。
 問題は解決されず、解決する見込みもなく、何の希望もありません。

 ここに書かれていることは、現代にも通じることばかり。たとえばハケン。
 企業が、人々の賃金を下げるために、いかに狡猾な手を使ってきたか!

 さて、この小説は、トムが一家を離脱するところで終わっても良かった。
 それ以降は、後日譚的な物語のような気がしました。

 余談ですが、この作品は、スピルバーグによって映画化されるようです。
 映画の主人公はトムか、それとも母か。ちょっと気になります。

 スタインベックには、ほかにも「エデンの東」という傑作があります。
 ジェームス・ディーン主演映画としても、知られています。


エデンの東 新訳版 (1)  (ハヤカワepi文庫)

エデンの東 新訳版 (1) (ハヤカワepi文庫)

  • 作者: ジョン・スタインベック
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2008/01/24
  • メディア: 文庫



 さいごに。(初登山)

 日曜日に、今年初めての登山をしました。焼津の満観峰です。
 470mの低山なので、休憩を入れて4時間ほどでした。

 眺望の素晴らしさゆえ、全国から人がやってきます。
 この日も、富士山と駿河湾のすばらしい景色が見られました。

DSCF1280-2.jpg


nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:

怒りの葡萄1 [20世紀アメリカ文学]

 「怒りの葡萄(上)」 スタインベック作 黒原敏行訳 (ハヤカワepi文庫)


 農地を追われた一家が、新天地カリフォルニアを目指して旅立つ物語です。
 ノーベル賞作家スタインベックの、代表作として知られています。

 昨年2014年の暮れに、ハヤカワepi文庫から新訳が出ました。上下二分冊。
 とても分かりやすくて親しみやすい訳です。カバー絵も味わいがあります。


怒りの葡萄〔新訳版〕(上) (ハヤカワepi文庫)

怒りの葡萄〔新訳版〕(上) (ハヤカワepi文庫)

  • 作者: ジョン スタインベック
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/12/19
  • メディア: 新書



怒りの葡萄〔新訳版〕(下) (ハヤカワepi文庫)

怒りの葡萄〔新訳版〕(下) (ハヤカワepi文庫)

  • 作者: ジョン スタインベック
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/12/19
  • メディア: 新書



 epi文庫版が出るまでは、この作品の定番は新潮文庫版でした。
 訳が古いため、トムの言葉がいなかっぺなので、少し幻滅します。


怒りの葡萄 (上巻) (新潮文庫)

怒りの葡萄 (上巻) (新潮文庫)

  • 作者: スタインベック
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1967/05/15
  • メディア: ペーパーバック



 トム・ジョードは30歳前の青年です。4年ぶりに故郷を目指しています。
 しかし、たどり着いた自宅には 誰もいなくて、農地は変わり果てていました。

 その年、厳しい日照りが地方一帯を襲い、大きな被害をもたらしたのです。
 銀行に土地を奪われた小作人たちは、故郷を追われて各地へ散っていました。

 トムは、伯父の家で、ようやく家族と再会しました。
 祖父母、両親、伯父、兄弟姉妹、妹の夫、元説教師。総勢13人です。

 数日後、家財道具を全て売り払い、全員が改造トラックに乗り込みました。 
 13人の思いを載せ、カリフォルニアを目指し、ルート66を行きますが・・・

 この作品の内容は、1930年代の大規模農業の進展を背景にしています。
 当時、農民たちの流出が、社会問題化されていました。

 大土地所有者が、土地を奪うために、いかにあくどいことをやってきたか!
 地元の警察が、移住民を追い払うために、いかに汚い手を使ってきたか!

 農地を追われた小作人たちが、いかに虐げられてきたか!
 ジョード家の人々が、いかに困難に耐えてきたか!

 読んでいて、作者の怒りが伝わってきます。これは、告発の書でもあります。
 出版直後から論争を呼び、州によっては、発禁処分にもなったようです。

 しかし、それにしても、ジョード家の男たち女たちはたくましいです。
 彼らは、どんな困難にぶつかっても、決してへこたれたりしません。

 中でも、最もたくましいのは、母親と、長兄のトムです。
 他人より苦労をしてきた分だけ、強くなったのでしょう。

 ああ、ユニクロで当て逃げされただけで、へこんでいた自分が恥ずかしい。
 (とはいっても、犯人はいまだに許せないのだが。)

 さて、現在上巻を読み終えたところです。
 様々な困難の末、ようやくカリフォルニアに到着しました。下巻も楽しみ。

 さいごに。(指輪が外れない)

 結婚指輪をちょっと外そうとしたのですが、指からまったく抜けません。
 指がパンパンに膨らんでいるためです。

 今年はなぜか、しもやけがひどいです。
 指輪が指に食い込んで、少し痛いです。

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

ハツカネズミと人間 [20世紀アメリカ文学]

 「ハツカネズミと人間」 スタインベック作 大浦暁生訳 (新潮文庫)


 二人の渡り労働者ジョージとレニーの、ささやかな夢とその挫折の物語です。
 代表作「怒りの葡萄」の2年前に出された中編小説です。

 新潮文庫から出ています。訳は、1977年のものを1994年に改めたものです。
 旧版の大門訳に比べて、文章は分かりやすくて、活字は読みやすいです。


ハツカネズミと人間 (新潮文庫)

ハツカネズミと人間 (新潮文庫)

  • 作者: ジョン スタインベック
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1994/08/10
  • メディア: 文庫



 農場目指して歩いていく二人の男がいました。ジョージとレニーです。
 ジョージは、小柄で賢い男。レニーは、大きな赤ん坊のような男です。

 レニーはポケットにハツカネズミを隠していて、死なせてしまいました。
 しかし、レニーに悪気はありません。

 レニーは、少し頭が弱いのです。だから力の加減ができません。
 大好きなハツカネズミをかわいがっていたら、死んでしまいました。

 二人は、いつか自分たちだけの土地を手に入れることを、夢見ています。
 そして、その夢が本当に実現しそうに思えたときに・・・

 実に悲しい物語です。最後は、レニーが、かわいそうでかわいそうで。
 でも、それ以上に、ジョージは悲しかったに違いありません。

 「この連中はやって来て働いちゃ、やめて次へ移って行く。その一人一人が、
 みんな頭の中に小さな土地を持っている。でもだれ一人、その土地をほんとう
 に手に入れた者はいねえ。まるで天国みてえなもんだ。」(P103)

 「わかってたはずなんだ」 ジョージの絶望的な一言が、胸に刺さります。
 ジョージがつらい決断をしのは、レニーのことを本当に思っていたからです。

 さて、スタインベックと言ったら、「怒りの葡萄」でしょう。
 この新訳が、ハヤカワepi文庫で出ました。epi文庫さんに感謝です。


怒りの葡萄〔新訳版〕(上) (ハヤカワepi文庫)

怒りの葡萄〔新訳版〕(上) (ハヤカワepi文庫)

  • 作者: ジョン スタインベック
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/12/19
  • メディア: 新書



怒りの葡萄〔新訳版〕(下) (ハヤカワepi文庫)

怒りの葡萄〔新訳版〕(下) (ハヤカワepi文庫)

  • 作者: ジョン スタインベック
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/12/19
  • メディア: 新書



 さいごに。(仕事始め)

 楽しいお正月休みが終わりました。今日から仕事です。
 学校も明日から始まるため、娘は少し機嫌が悪いです。


nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:

アブサロム、アブサロム!(下) [20世紀アメリカ文学]

 「アブサロム、アブサロム!」 フォークナー作 藤平育子訳 (岩波文庫)


 南部の田舎町ジェファソンを騒がせたサトペン一族の、謎とその没落の物語です。
 2011年に岩波文庫から出ました。


アブサロム、アブサロム!(上) (岩波文庫)

アブサロム、アブサロム!(上) (岩波文庫)

  • 作者: フォークナー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/10/15
  • メディア: ペーパーバック



アブサロム、アブサロム!(下) (岩波文庫)

アブサロム、アブサロム!(下) (岩波文庫)

  • 作者: フォークナー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2012/01/18
  • メディア: ペーパーバック



 文体はフォークナー節。クセがあって、読みにくかったです。
 しかし、読み終わる頃には、この文体が心地よくなっていました。

 サトペンはフォークナー的な人物。悪魔のような男です。
 しかし、読み終わる頃には、サトペンに悪魔的な魅力を感じていました。

 この文体と主人公サトペンは、切っても切れない関係にあります。
 この文体だからこそ、サトペンを表現することができるのだと思います。

 下巻P219に「すべての人間的汚れを超越した神の権化」とあります。
 なるほど! サトペンは、悪魔と言うより、一種の神なのかもしれません。

 ということは、この物語は、悪神サトペンについて語った神話なのではないか。
 そして、この難解な文体は、神話を語るための、特別な文体なのではないか。

 神について語るためには、特別な言葉使いが必要になります。
 そこで、フォークナーが編み出したのが、この文体だったのではないか。

 そう考えると、タイトルが旧約聖書から取られている意味も分かる気がします。
 (タイトルは、ダヴィデ王の子アブサロムと、腹違いの兄のエピソードから)

 さて、物語は下巻に入ると、青年二人がサトペン物語を再構成してくれます。
 ああよかった、これで今までのモヤモヤが晴れていく。と思いきや・・・

 この二人の話もまた、あっちへ飛んだり、こっちへ戻ったりするのです。
 話を追うことに疲れます。モヤモヤはかえってつのっていきました。

 しかし、神話とは、謎を残しながら伝えられるものなのかもしれません。
 最後まで謎だからこそ、神話と言えるのかもしれません。

 実は、最後まで読んでもなお、私には分からない部分が多くありました。
 恥ずかしながら、巻末の年表を読んで、初めて理解できたことがらも多いです。

 これで、フォークナーの代表作4作を読み終わりました。
 全てに共通するのは、その読みにくさです。

 何もかもごちゃ混ぜに絡ませながら、全てを巻き込んでいくような文章でした。
 その魅力が、ようやくほんのちょっとだけ、分かったような気がします。

 さいごに(サンタからラムネ)

 娘は今年、サンタさんにラムネを頼んでいます。
 8月の夏祭りで初めて飲んだ時、ビー玉をはずすのが楽しかったようです。

 その後「ラムネを買って」と何度もねだられましたが、買ってあげず、
 「そんなに飲みたきゃサンタに頼め」と言ったら、それを覚えていたのです。
 8月に言ったことをちゃんと覚えているなんて。そんなに飲みたかったのか。

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:

アブサロム、アブサロム!(上) [20世紀アメリカ文学]

 「アブサロム、アブサロム!(上)」 フォークナー作 藤平育子訳 (岩波文庫)


 南部の田舎町ジェファソンを騒がせたサトペン一族の、謎とその没落の物語です。
 フォークナーの最高傑作と評価されている作品です。

 2011年に岩波文庫から出ました。(さすが岩波さん)
 読みやすくないフォークナーが、比較的読みやすく訳されています。


アブサロム、アブサロム!(上) (岩波文庫)

アブサロム、アブサロム!(上) (岩波文庫)

  • 作者: フォークナー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/10/15
  • メディア: ペーパーバック



アブサロム、アブサロム!(下) (岩波文庫)

アブサロム、アブサロム!(下) (岩波文庫)

  • 作者: フォークナー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2012/01/18
  • メディア: ペーパーバック



 時は1909年。聞き手はクエンティン青年。「響きと怒り」のクエンティンです。
 主な語り手は、老コールドフィールド夫人と、父ミスター・コンプソンです。

 1833年の6月、25歳のトマス・サトペンが、ジェファソンにやってきました。
 そして、いつのまにか広大な領地を 手にしており、大きな屋敷を構えました。

 サトペンは、どうしてこの街にやってきたのか?
 どうやって広大な領地を入れたのか?

 やがてサトペンは、エレン・コールドフィールドと結婚しました。
 二人の間には、息子のヘンリーと娘のジュディスが生まれましたが・・・

 語りは、思わせぶりと言うか、言葉足らずと言うか・・・
 突然話題が変わったり、急に話が途切れたりして、なかなか全貌が見えません。

 もちろん、これはフォークナーが、緻密な計算のもとにやっていること。
 ちらりちらりと核心を垣間見せながら、肝心な部分はちっとも明かしません。

 ヘンリーは、どうして突然家を飛び出したのか?
 どうして妹の婚約者を射殺したのか?

 一つの謎が明かされないうちに、次の謎が出てきます。
 私はもどかしい気持ちで、ページを繰っていきました。

 余談ですが、岩波文庫では、冒頭に「主な登場人物」が説明されています。
 また、「各章の語りについて」という説明まであります。

 ここを読むと、物語の全体像が分かってしまいます。
 「ネタバレじゃないか!」と怒る人も、いるかもしれません。

 確かに、ネタバレですが、必要なネタバレだと思います。
 もし、この二つの説明文がなかったら、私は途中で投げ出していたでしょう。

 さて、現在まだ上巻が終わったばかりです。
 下巻についてはまた、次の機会に。

 さいごに。(忘年会欠席多すぎ)

 職場の忘年会は、12月24日の夜。クリスマス・イブなので、欠席者続出。
 うちは、クリスマス会を23日に前倒しして出席することにしました。

nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:
前の10件 | 次の10件 20世紀アメリカ文学 ブログトップ