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聖なる酔っぱらいの伝説 [20世紀ドイツ文学]

 「聖なる酔っぱらいの伝説」 ロート作 池内紀訳 (岩波文庫)


 タイトル作は、ある紳士に200フラン恵まれた酔っぱらいの、不思議な物語です。
 デビュー作「蜘蛛の巣」から遺作のタイトル作まで、全5編収録の作品集です。

 以前白水Uブックスから出ていましたが、現在は岩波文庫に入っています。
 池内紀氏の訳は、軽やかなリズムがあって分かりやすく、読みやすかったです。


聖なる酔っぱらいの伝説 他四篇 (岩波文庫)

聖なる酔っぱらいの伝説 他四篇 (岩波文庫)

  • 作者: ヨーゼフ・ロート
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2013/04/17
  • メディア: 文庫



 タイトル作「聖なる酔っぱらいの伝説」は、ロートが死ぬ直前に書いた短編です。
 セーヌ川の橋の下に住むアンドレアスは、ある日金持ちの紳士に出会いました。

 「二百フランを受け取ってもらえないものだろうか。」
 はからずも大金を手に入れたアンドレアスは、この時から急にツキはじめました。

 安酒場では割のいい仕事をもらい、買った財布にはお金が入っていて・・・
 昔の女に会い、旧友に会い、美しい踊り子に会い、そしてテレーズに会って・・・

 「願わくは、かくも軽やかな、かくも美しい死をめぐみたまえ!」
 という言葉で作品を締めくくってから間もなく、ロート自身も天に召されました。

 軽やかなのに、しみじみしていて、楽しいのに、もの悲しい、独特の味わいです。
 パリに行きたくなります。この本をもってセーヌ河畔を歩いてみたいです。

 といっても、パリなんかには行けないので、せめて映画だけでも見てみたい。
 1988年のイタリア映画「聖なる酔っぱらいの伝説」は、評判が良いようです。

 他の三つの短編もみな、しみじみとした味わいがある、叙情豊かな作品です。
 中でも「皇帝の胸像」では、作者のオーストリアに対する郷愁が伝わってきます。

 「まことの祖国、つまり、『祖国喪失者』にも祖国であるような、唯一ありうる
 祖国、他民族国家のオーストリア君主国は、まさしくそのような国だった。」

 常にはみ出し者のユダヤ人にとって、そこは安心できる国だったようです。
 ロートは生涯、崩壊したオーストリアを、懐かしく思い出していたそうです。

 「蜘蛛の巣」はデビュー作で、過激な民族主義に走る青年を描いた中編です。
 ナチスの台頭とヒトラーの独裁を先取りして描いた異色の作品です。

 「ナチ党は熱気をはらんでいた。興奮につつまれていた。つぎつぎと人びとが
 馳せ参じる。」「ヒトラーは一つの『危険』そのものだった。」(P87~P88)

 これが書かれたのは1923年。ヒトラーが頭角をあらわすかなり前のことです。
 のちにこの作品を読み返した人々は、その予見的な内容に驚いたといいます。

 さて、代表作「ラデツキー行進曲」は、岩波文庫から上下二分冊で出ています。
 いつ絶版になるか分からない(?)ので、機会があればぜひ読んでおきたいです。


ラデツキー行進曲(上) (岩波文庫)

ラデツキー行進曲(上) (岩波文庫)

  • 作者: ヨーゼフ・ロート
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2014/07/17
  • メディア: 文庫



 さいごに。(セブンブリッジ)

 娘にセブンブリッジを教えてもらいました。娘は学校の先生に教わったとのこと。
 休み時間に先生も含めてやっているとか。娘はかなり強い方なのだそうです。

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マリー・アントワネット2 [20世紀ドイツ文学]

 「マリー・アントワネット」 ツヴァイク作 中野京子訳 (角川文庫)


 フランス革命で、断頭台の露と消えた王妃アントワネットの生涯を描いています。
 ツヴァイクの代表作であり、伝記文学の傑作として知られている作品です。

 角川文庫、岩波文庫、河出文庫などから出ています。
 私が読んだ角川文庫の中野京子訳は新訳で、三つの中で最も分かりやすい訳です。


マリー・アントワネット 上 (角川文庫)

マリー・アントワネット 上 (角川文庫)

  • 作者: シュテファン ツヴァイク
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/01
  • メディア: 文庫



マリー・アントワネット 下 (角川文庫)

マリー・アントワネット 下 (角川文庫)

  • 作者: シュテファン ツヴァイク
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/01
  • メディア: 文庫



 下巻の冒頭は「彼はそうだったか、そうではなかったか?」という魅力的な章です。
 フェルゼンが、王妃の恋人だったのか、そうではなかったのか、を考察しています。

 もちろん、「彼はそうだった」。今では周知の事実です。
 しかし、1世紀もの間、フェルゼンが歴史から忘れられていたとは、意外でした。

 王妃とフェルゼンは、一時期、二人で政治上の困難な問題を決裁していたようです。
 このたいへんな時期こそ、二人にとって、最も幸福なときだったでしょう。

 そして、二人で企てたヴァレンヌ逃亡事件が、二人の人生のクライマックスでした。
 フェルゼンはもちろん、何から何まで、献身的に働きました。

 しかしパリを脱出した所で、どういうわけか王が、フェルゼンを帰してしまいます。
 これまで何でも丸投げしていた王が! 今こそフェルゼンに丸投げするべきなのに!

 その後、ちょっとした行き違いが重なり、取り返しがつかない事態になります。
 1791年6月20日、ヴァレンヌ逃亡失敗のこの日が、王家にとって運命の日でした。

 この事件後、王と王妃は、坂道を転がるように、没落に向かって落ちていき・・・
 チュイルリー宮からタンプル塔へ、さらに監獄へ、そして断頭台へ・・・

 それにしても、後半のアントワネットの変貌ぶりはすごいです。
 王妃でなくなってから、彼女は真の王妃らしくなりました。しかし、遅すぎました。

 6月20日は、フェルゼンにとっても、決して忘れられない、運命の日でした。
 「なぜわたしは彼女のために死ななかったのだろう、あの六月二十日に?」

 遠い祖国で、アントワネットの死を知り、死んだように生き続けるフェルゼン。
 その最期もまた6月20日、実に痛ましい死に方で・・・

 さて、マリー・アントワネットはファンが多く、たくさんの関連本があります。
 訳者中野京子の「ヴァレンヌ逃亡」も、なかなか興味深い本です。


ヴァレンヌ逃亡 マリー・アントワネット 運命の24時間 (文春文庫)

ヴァレンヌ逃亡 マリー・アントワネット 運命の24時間 (文春文庫)

  • 作者: 中野 京子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/08/06
  • メディア: 文庫



 中野京子は、「怖い絵」で評判になりました。
 この本には、ダヴィッドの描いた、王妃の最期の肖像が取り上げられています。


怖い絵  (角川文庫)

怖い絵 (角川文庫)

  • 作者: 中野 京子
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2013/07/25
  • メディア: 文庫



 さいごに。(持久走大会35位)

 今年は昨年と変わり、男女混合で、速い組と遅い組に分けて行われました。
 うちの娘は速い組の35位。女子では7位ぐらいなので、上出来でしょう。

 順位はもちろん、一生懸命に真剣に走っていたことが、嬉しかったです。
 夕食は、しゃぶしゃぶで娘のお疲れさん会をしました。食べすぎました。

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マリー・アントワネット [20世紀ドイツ文学]

 「マリー・アントワネット 上」 ツヴァイク作 中野京子訳 (角川文庫)


 フランス革命で、断頭台の露と消えた王妃アントワネットの生涯を描いています。
 ツヴァイクの代表作であり、伝記文学の傑作として知られている作品です。

 角川文庫、岩波文庫、河出文庫などから出ています。
 私は角川文庫の中野京子訳で読みました。新訳で、最も分かりやすい訳です。


マリー・アントワネット 上 (角川文庫)

マリー・アントワネット 上 (角川文庫)

  • 作者: シュテファン ツヴァイク
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/01
  • メディア: 文庫



マリー・アントワネット 下 (角川文庫)

マリー・アントワネット 下 (角川文庫)

  • 作者: シュテファン ツヴァイク
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/01
  • メディア: 文庫



 岩波文庫は、「ジョゼフ・フーシェ」と同じく高橋・秋山訳です。
 格調が高くて、味わい深い訳です。この訳のファンも多いです。


マリー・アントワネット〈上〉 (岩波文庫)

マリー・アントワネット〈上〉 (岩波文庫)

  • 作者: シュテファン・ツワイク
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1980/06/16
  • メディア: 文庫



 河出文庫の関訳も、捨てがたいです。
 格調高くて美しい訳です。ただし、現在品切れらしいです。


マリー・アントワネット 上 (河出文庫)

マリー・アントワネット 上 (河出文庫)

  • 作者: シュテファン・ツヴァイク
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2006/11/03
  • メディア: 文庫



 マリー・アントワネットは、オーストリアの女帝マリア・テレジアの末娘でした。
 1770年、彼女が14歳の時、フランスの王太子ルイとの結婚が成立しました。

 ハプスブルク家とブルボン家を結びつけ、ヨーロッパに平和をもたらすため。
 そう言えば聞こえはいいが、要するに幼い少女が政略結婚に使われたのです。

 母は娘の将来を心配し、信頼するメルシ伯爵を、その近くに仕えさせました。
 しかしアントワネットは、世間を知るにはあまりにもあどけなくて・・・

 不幸な結婚生活、その反動による派手な気晴らし。宮廷での確執、様々な陰謀。
 首飾り事件、その裁判。時代の急変、革命の始まり、そして、真の友人の登場。

 現在、上巻を読み終わったところですが、本当に面白いです。
 特に、首飾り事件の辺りから、物語は急展開して、なかなか本を放せません。

 作者ツヴァイクは、アントワネットに対して、同情と愛情を込めて描いています。
 それゆえ、彼女にとっての救いの神フェルゼンに対しても、とても好意的です。

 彼は、アントワネットの栄華の時は、その名誉を守るためにひっそりと身を引き、
 彼女が排斥された時に、決然とその傍にやってきて、命をかけて寄り添いました。

 フェルゼンは男の中の男。訳者の中野京子曰く。「フェルゼンに愛された――
 この一点においてアントワネットの価値は決まったような気がする。」(P362)

 いいぞ、フェルゼン! がんばれ、アントワネット!
 悲劇的な結末は知っているのに、二人の幸せな結末を期待してしまいます。

 ところで、最も興味深かったのは、第二章「ベッドの秘密」です。
 臆病な王と奔放な王妃の、それぞれの性向は、夫婦のベッドで形成された? 

 あの奇怪な首飾り事件については、非常に詳細に謎解きされていました。
 時々ツヴァイク自身の見解が示されたりして、とても面白かったです

 さて、下巻ではいよいよフランス革命がいっきに進行します。
 楽しみでもあり、(後の悲劇を思うと)悲しくもあります。

 さいごに。(将棋)

 娘が、学校の放課後の活動で、将棋を覚えてきました。
 さっそく将棋盤を買ってきて、時々対戦しています。

 将棋のセットは子供用で、駒に進む矢印が書いてあって便利です。
 うちは本屋で3456円で買いました。アマゾンでは2109円。ショック!


NEW スタディ将棋 (リニューアル)

NEW スタディ将棋 (リニューアル)

  • 出版社/メーカー: くもん出版
  • メディア: おもちゃ&ホビー



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背徳者 [20世紀ドイツ文学]

 「背徳者」 ジッド作 石川淳訳 (新潮文庫)


 病気療養中に肉体に目覚めた男が、回復後に快楽を追求する、背徳の物語です。
 ジッド自身が若い頃に、北アフリカ旅行で体験したことが描かれています。

 新潮文庫、岩波文庫、ちくま文庫などから出ていましたが、いずれも品切れ。
 新潮文庫版の訳は石川淳ですが、活字が小さくて読みにくかったです。

 
背徳者 (新潮文庫)

背徳者 (新潮文庫)

  • 作者: ジッド
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1951/12
  • メディア: 文庫



 もし手に入るのなら、ちくま文庫版が、最も読みやすそうです。


背徳の人 (ちくま文庫)

背徳の人 (ちくま文庫)

  • 作者: アンドレ ジッド
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2008/04/09
  • メディア: 文庫



 古典学者のミシェルは、24歳で結婚しました。
 相手はマルスリイヌという20歳の美人ですが、愛情を感じていません。

 新婚旅行中、北アフリカで、ミシェルは吐血し、養生します。
 病気になって、ミシェルは初めて、自分の肉体が目覚めるのを感じました。

 マルスリイヌの献身的な看護によって、ミシェルは回復してゆきました。
 故郷に帰ったミシェルは、マルスリイヌを愛し、仕事に打ち込みます・・・

 ここまでが第一部。私はがっかりしました。
 「背徳者」どころではありません。これでは、模範的人間ですよ。

 第二部に入って、悪友のメナルクの影響により、彼は背徳の道へ進みます。
 良妻マルスリイヌにとっては、実に皮肉な展開になります。

 ところで、ジッドがオスカー・ワイルドらと交流を持っていたことは有名。
 この小説のモクティル青年とも、そういう関係だったのではないか?

 この作品は、背徳的な行為に至る過程に、多くの紙面を費やしています。
 私的には、背徳的な行為にふける場面を、もっと描写してほしかったです。

 さて、ジッドは、この作品の7年後に名作「狭き門」を書きました。
 ジッドの作品中、現在文庫で読むことができる、貴重な一冊です。

 さいごに。(ハンバーグとレモンジュース)

 うちの娘はプリンセスごっこをするときだけ、お上品な言葉を使っています。
 う〇こはハンバーグ、お〇っこはレモンジュースと言い換えています。


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西部戦線異状なし [20世紀ドイツ文学]

 「西部戦線異状なし」 レマルク作 秦(はた)豊吉訳 (新潮文庫)


 第一次大戦の西部戦線において、ドイツ青年兵が戦死するまでを描いた作品です。
 1929年に出て世界的ベストセラーとなり、翌年映画化されて評判になりました。

 現在、新潮文庫で読むことができます。初版は1955年で、訳はもう少し古いもの。
 古いわりに、分かりやすい訳です。2007年に改版されて、活字は読みやすいです。


西部戦線異状なし (新潮文庫)

西部戦線異状なし (新潮文庫)

  • 作者: レマルク
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1955/09/27
  • メディア: 文庫



 ある日学校の先生に引率されて、ボイメルは多くの仲間と一緒に志願兵となりました。
 彼らは青春の入り口で、いきなり戦場へ投げ込まれてしまったのです。

 「僕らは十八歳であった。この世界と生活とを愛しはじめていた。
 しかるに僕らはその世界と生活とに向って鉄砲を射たなければならなかった。
 その第一発として射ちこんだ爆弾は、実は僕らの心臓に当たっているのだ。」(P127)

 塹壕戦に投入された青年たちが見た激しい戦闘。砲弾、戦車、飛行機、毒ガス、疾病。
 そして、ひとりひとりと減っていく仲間たち。

 当たり前のように、人が次々と死んでいく。戦線では異常なことばかり。
 しかし、司令部の報告は、「西部戦線異状なし、報告すべき件なし」・・・

 作者レマルクもまた、教師の熱弁に従って、18歳の時旧友と一緒に志願したのです。
 そして、西部戦線の塹壕戦における激戦を体験し、負傷してしまいました。

 主人公ボイメルと違うのは、レマルクが生きて帰って、この小説を発表したこと。
 そして、この小説で戦闘の実態をおおやけにし、戦争の愚劣さと虚しさを訴えたこと。

 「僕らがここで習ったことは、四巻のショーペンハウエルよりも、よく光らしたボタン
 一個のほうが大事だということである。」(P35)

 という具合に、文体はとてもさめています。戦争が青年を、年寄りにしてしまった。
 ボイメルが言うように、この戦争を防げないとしたら、過去千年の文化は無価値です。

 ところで、「西部戦線異状なし」は、「武器よさらば」と比べられることが多いです。
 どちらも、第一次大戦を扱い、戦争に翻弄される青年を描きました。

 そして、どちらの小説も、アメリカで映画化されました。
 映画作品においては、明らかに「西部戦線」の方に、軍配が上がるのだとか。

 ところで、レマルクとヘミングウェイの、不思議な因縁を教えてくれたのは妻です。
 それは、森瑤子の「美女たちの神話」(講談社文庫・品切れ)に書かれています。

 「嘆きの天使」の女優マレーネ・ディートリッヒは、ヘミングウェイの女神でした。
 「海流のなかの島々」には、ヘミングウェイが彼女を口説く場面が描かれています。

 彼女(マレーネ)は彼(ヘミングウェイ)に、「良い人」がいるからと言って、拒みます。
 その「良い人」とは、レマルクのことらしいのです。
 そしてレマルクもまた、「凱旋門」の中で、マレーネらしい人を描いているそうです。


美女たちの神話 (講談社文庫)

美女たちの神話 (講談社文庫)

  • 作者: 森 瑶子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1989/04
  • メディア: 文庫



凱旋門 (1955年) (新潮文庫)

凱旋門 (1955年) (新潮文庫)

  • 作者: E.M.レマルク
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1955
  • メディア: 文庫



 名作「凱旋門」もまた、品切れで読めません。(映画も有名ですよね)
 文庫での新訳を、強く強く望んでいます。

 さいごに。(花見)

 桜が満開です。家族で、近所の桜並木を歩きました。

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訴訟 [20世紀ドイツ文学]

 「訴訟」 カフカ作 丘沢静也訳 (古典新訳文庫)


 突然逮捕され、理由が分からないまま裁かれる、銀行員ヨーゼフ・Kの物語です。
 カフカの死後に公刊された、未完の傑作です。

 岩波文庫や新潮文庫からは、「審判」というタイトルで出ていました。


審判 (岩波文庫)

審判 (岩波文庫)

  • 作者: カフカ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1966/05/16
  • メディア: 文庫



審判 (新潮文庫)

審判 (新潮文庫)

  • 作者: フランツ・カフカ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1971/07
  • メディア: 文庫



 私が読んだ古典新訳文庫は、「訴訟」というタイトルです。
 訳者は「テルレス」と同じ丘沢氏。軽快で、とても分かりやすい訳です。


訴訟 (光文社古典新訳文庫)

訴訟 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: フランツ カフカ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/10/08
  • メディア: 文庫



 ある朝、銀行員のヨーゼフ・Kの部屋に、男たちがやってきて彼を逮捕しました。
 誰が訴えたのか? どんな罪なのか? Kには全く知らされません。

 この日から、Kの二重生活が始まります。
 普段は優秀な銀行員ですが、やっかいな訴訟に巻き込まれた被告でもあります。

 まるで、日常世界に突然ぽっかりあいた穴。
 わけが分からないうちに、穴の中に引きずりこまれ、からめとられていくK・・・

 不気味で深刻な物語が、まるで冗談のように、軽快なリズムに乗って進行します。
 悲劇的な物語が、喜劇的に展開します。

 訳者解説によると、この結末は、Kの夢だったという解釈があるとか。
 なるほど。全てはKが見た幻覚であってほしい。

 例によって、いろいろと考えさせられました。
 ラスト近くで、「掟の門」が挿入されているところもまた、意味深です。

 それにしても、カフカの41歳の死は早すぎました。あまりにも惜しい。
 そして、この小説が未完に終わったことも、実に実に惜しい。

 カフカには、ほかに「城」という長編もありますが、こちらも未完。


城 (新潮文庫)

城 (新潮文庫)

  • 作者: フランツ・カフカ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1971/05/04
  • メディア: 文庫



 ということで、やはり、カフカといえば、「変身」でしょうか。
 「変身」 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-06-29

 さいごに。(バレエの発表会)

 昨日の日曜日は、娘のバレエの発表会でした。
 出番はわずか2~3分ですが、この日のためにずっとがんばってきました。

 娘は、とても緊張していて、まじめで真剣でした。
 何でも一生懸命にやっている姿は、見ていて気持ちがいいものです。

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寄宿生テルレスの混乱 [20世紀ドイツ文学]

 「寄宿生テルレスの混乱」 ムージル作 丘沢静也訳 (古典新訳文庫)


 全寮制の男子校を舞台にした、思春期の少年たちのいじめと同性愛を描いた小説です。
 「特性のない男」のムージルの処女作です。映画化もされました。

 現在、古典新訳文庫から出ています。とても分かりやすい訳です。
 ドイツの初版本にならって、章立てをしているところが良いです。


寄宿生テルレスの混乱 (光文社古典新訳文庫)

寄宿生テルレスの混乱 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: ローベルト ムージル
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2008/09/09
  • メディア: 文庫



 宮廷顧問官の息子テルレスは、全寮制の男子校で学んでいます。
 時々自己が引き裂かれるような、思春期特有の混乱を抱えています。

 あるとき、友人のひとりバニーニが、盗みを働きました。
 それをネタに、バイネベルクとライティングが、バジーニをいじめ始めました。

 そのいじめは陰湿で、そして性的な衝動と紙一重です。
 テルレスは、彼らから一歩距離を置いていましたが、しかし、あるとき・・・

 テルレスは、自分の中に起こったひずみを、絶えず意識しています。
 それを克服しようとしますが、もがけばもがくほど混乱に陥ります。 

 そして、最後までテルレスの混乱は混乱のまま。
 混乱を抱えたまま、静かに物語は終わります。

 「ある種のものが存在していて、それは、いわば二重の形で、われわれの人生に
 介入するよう定められています。」(P308)
 「ものごとは第二の、秘密の、ひっそりとした生を生きているのだ!」(P314)

 さて、訳者はこの作品を、今流行のボーイズ・ラブの古典だとも言っています。
 確かにそういう要素はありますが、そういう興味で読むのはいかがなものか。

 私的には、あまり再読したくない本です。
 寄宿学校という閉鎖的な空間で、欲求不満の少年たちがいかに屈折することか!

 とはいえ、ムージルの作品をひとつ読むのなら、これでしょう。
 傑作「特性のない男」は、長いし読みにくいし未完だし。文庫化もされていないし。


ムージル著作集 第1巻 特性のない男 1

ムージル著作集 第1巻 特性のない男 1

  • 作者: R. ムージル
  • 出版社/メーカー: 松籟社
  • 発売日: 1992/07
  • メディア: 単行本



 映画「テルレスの青春」は、カンヌで国際批評家賞を取ったほどの名作だそうです。
 が、いじめられっ子バジーニが、ジャガイモみたいなブ少年で、興をそがれるとか。

 さて、ムージルは雑誌編集者だった頃、無名のカフカに寄稿を依頼したそうです。
 送られた原稿は「変身」(!) しかし字数の関係で、掲載できなかったとのこと。
 「変身」 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-06-29 

 さいごに。(今度は新型?)

 娘の小学校では、インフルエンザの影響で、まだ学級閉鎖のクラスがあります。
 娘はA型にもB型にも感染しましたが、今度は新型が出始めたとか。やれやれ。

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母アンナの子連れ従軍記 [20世紀ドイツ文学]

 「母アンナの子連れ従軍記」 ブレヒト作 谷川道子訳 (古典新訳文庫)


 車を引いて戦場を巡り、兵士を相手に商売をする、母アンナを描いた戯曲です。
 ブレヒトにとって「三文オペラ」と並ぶ代表作で、上演されることも多いです。

 現在、古典新訳文庫で出ています。とても読みやすい訳です。
 ただし、タイトルは「肝っ玉おっ母」の方が良かったような・・・


母アンナの子連れ従軍記 (光文社古典新訳文庫)

母アンナの子連れ従軍記 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: ベルトルト ブレヒト
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/08/06
  • メディア: 文庫



 岩波文庫から出ていた岩淵訳は、「肝っ玉おっ母とその子どもたち」。
 現在は品切れ。


肝っ玉おっ母とその子どもたち (岩波文庫)

肝っ玉おっ母とその子どもたち (岩波文庫)

  • 作者: オイゲン・ベルトルト ブレヒト
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2004/04/16
  • メディア: 文庫



 舞台は、17世紀前半の三十年戦争時代のドイツ。
 主人公は、三人の子どもたちと、商品を積んだ車を引いて、戦場を巡る女。

 彼女は「度胸アンナ」と呼ばれています。
 危険をかえりみず、戦場を転々として、兵士相手の商売を続けています。

 戦争は、アンナを儲けさせてくれます。
 しかし、その戦争が、彼女から三人の子どもたちを・・・

 戦場を駆け抜けるたくましいアンナの、愛と知恵と勇気に魅了されます。
 アンナはいつも陽気です。この陽気さが、切ない話を余計に切なくします。

 結末を読んだあと、泣けて泣けて・・・
 それなのに、おせっかいな解説が30ページ続く。(読めないって)

 解説と年譜とあとがきを合わせると、60ページになります。
 はっきり言って、いりません。こういう傑作は、作品が全てを語っています。

 ブレヒトの作品は三つ目ですが、私はこれが一番良かったです。
 「三文オペラ」   → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2014-01-13
 「ガリレオの生涯」 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2014-01-16

 さいごに。(バレンタイン)

 娘からバレンタインデーギフトをもらいました。
 ミニパイに包んだチョコです。前日、妻と一緒に作っていました。 

 おいしかった。そして、とてもうれしかった。
 娘が生まれてから、こういう日が来ることを、ずっと夢見ていたので。

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詐欺師フェーリクス・クルルの告白 [20世紀ドイツ文学]

 「詐欺師フェーリクス・クルルの告白」 トーマス・マン作 岸美光訳 (古典新訳文庫)


 詐欺師であるフェーリクスが、自分の半生を語った告白体の教養小説です。
 マンの遺作で、惜しくも未完に終わりました。


詐欺師フェーリクス・クルルの告白〈上〉 (光文社古典新訳文庫)

詐欺師フェーリクス・クルルの告白〈上〉 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: トーマス マン
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2011/08/10
  • メディア: 文庫



 ある日フェーリクス少年は、父親に連れられて、人気歌手の楽屋を訪ねました。
 しかし、化粧を落としたその男は、先ほど観客を魅了した歌手とはまるで別人。

 男のあまりにも醜い姿に、フェーリクスは愕然としました。
 そして、演じることや、だますことについて、考えさせられました。

 その後、クルル一家は破産。父は自殺。全てを失い、家族は一から出直します。
 フェーリクスはパリへ向かい、一流ホテルで働き始めます。

 ここまで、やや拍子抜け。というのも、ちっとも詐欺師ではないのです。
 ホテルマンとして働くフェーリクスは、誠実そのものです。

 ところが、ある金持ちの女流作家との出会いによって・・・
 また、青年貴族ヴェノスタ侯爵に出会うと・・・

 しだいにクルルの、演じる能力が開花していきます。彼は言います、
 「人は着ている服次第ですよ、・・・服は着ている人次第。」(下P101)

 物語は、舞台がパリに移ってから、本当に面白くて面白くて。
 一度読み始めたら、なかなか本を置くことができません。

 しかし、残念なことに、マンの死で中断。未完に。
 完成していたら、これこそがマンの最高傑作になっていたでしょう。

 教養小説でありながら、詐欺師を主人公にしているところが実に面白い。
 マンの頭の中にあった続編は、いったいどのようなものだったのだろう。

 さいごに。(学級閉鎖)

 娘のクラスはインフル感染者が10人に達して、学級閉鎖になりました。
 うちの子はA型にもB型にも感染したので、もう大丈夫(?)なのですが。

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カフカ短篇集 [20世紀ドイツ文学]

 「カフカ短篇集」 カフカ作 池内紀編訳 (岩波文庫)


 「掟の門」「判決」「流刑地にて」など名作を収録した、カフカの短篇集です。
 どの作品も短いながら、様々な解釈が可能で、考えさせられる作品です。

 岩波文庫の池内訳は、とても分かりやすかったです。収録数は20。
 「断食芸人」が「変身」とカップリングで、この本に入っていないのが残念。


カフカ短篇集 (岩波文庫)

カフカ短篇集 (岩波文庫)

  • 作者: カフカ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1987/01/16
  • メディア: 文庫



変身・断食芸人 (岩波文庫)

変身・断食芸人 (岩波文庫)

  • 作者: カフカ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2004/09/16
  • メディア: 文庫



 冒頭の「掟の門」から、いっきにカフカ・ワールドに引き込まれます。
 門とは何か? 門番とは何か? いろんな寓意が考えられます。

 続く「判決」も有名です。
 父はなぜ、あのような判決を言い渡したのでしょうか?

 「田舎医者」の馬丁は何者か? 「狩人グラフス」はなぜ蘇ったのか?
 全ての作品、読み終わった後に、「?」が残ります。考えさせられます。

 中でも注目は、「流刑地にて」。ちょっと残虐な内容の作品です。
 この作品は、「海辺のカフカ」のカフカ少年が、次のように説明しています。

 「カフカは僕らの置かれている状況について説明しようとするよりは、
 むしろその複雑な機械のことを純粋に機械的に説明しようとする。・・・
 つまり、そうすることによって彼は、僕らの置かれている状況を誰より
 もありありと説明することができる。」(「海辺のカフカ(上)」P118)

 そして、さらに、「その複雑で目的のしれない処刑機械は、現実の僕のまわり
 に実際に存在したのだ。」と15歳のカフカ少年は言っています。

 ところで、カフカはチェコ語でカラスのことだそうですね。
 このことも私は。「海辺のカフカ」のカフカ少年から教えられました。

 さて、この本を最初に読んだのは大学時代でした。
 当時から変わらず、マイ・ベストは「掟の門」。

 大学を卒業してから四半世紀。未だに自分なりの解釈が完成していません。
 この作品は、「審判」にも取り入れられているそうです。読まなくては。


審判 (岩波文庫)

審判 (岩波文庫)

  • 作者: カフカ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1966/05/16
  • メディア: 文庫



 なお、ちくま文庫からは、「カフカセレクション」全三冊が出ています。
 他の文庫では読めない作品も多く、ややマニア向きの本です。


カフカ・セレクション〈1〉時空/認知 (ちくま文庫)

カフカ・セレクション〈1〉時空/認知 (ちくま文庫)

  • 作者: フランツ カフカ
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2008/07/09
  • メディア: 文庫



 さいごに。(雪!)

 なんと、雪です! ここに家を建ててから、初めてのことです。
 仕事が休みの日でよかった。道にも少し、雪が積もっていました。

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