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遠野物語 [日本の近代文学]

 「遠野物語」 柳田国男 (角川ソフィア文庫)


 著者柳田が、佐々木喜善から聞いた遠野の伝説や奇談を、119編にまとめたものです。
 遠野を一躍有名にした、民俗学の記念碑的な作品です。

 現在、角川文庫、岩波文庫、集英社文庫などから出ています。
 オススメは角川文庫版。「遠野物語拾遺」299編とのカップリングなので。


遠野物語―付・遠野物語拾遺 (角川ソフィア文庫)

遠野物語―付・遠野物語拾遺 (角川ソフィア文庫)

  • 作者: 柳田 国男
  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 2004/05/26
  • メディア: 文庫



 角川文庫には、京極夏彦の「遠野物語remix」とのカップリング版もあります。
 カバーも激似。実にまぎらわしい。まちがえないように。


遠野物語remix 付・遠野物語 (角川ソフィア文庫)

遠野物語remix 付・遠野物語 (角川ソフィア文庫)

  • 作者: 京極 夏彦
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版
  • 発売日: 2014/06/20
  • メディア: 文庫



 岩波文庫は、名著「山の人生」とのカップリングです。


遠野物語・山の人生 (岩波文庫)

遠野物語・山の人生 (岩波文庫)

  • 作者: 柳田 国男
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1976/04/16
  • メディア: 文庫



 農商務省の官僚として東北を旅していた柳田は、遠野の佐々木喜善を知りました。 
 ある日、柳田は佐々木を訪ね、遠野に伝わる様々な話を聞きました。

 山の神、山男、山姥、天狗、河童、狐、ザシキワラシ、オシラサマ、オクナイサマ。
 臨死体験、死人に会う話、山奥の迷い家(マヨヒガ)、神隠し、様々な心霊現象・・・

 不思議な話が、簡潔な文語体で119編、60ページあまりにギュッと詰まっています。
 読み始めると止まりません。次へ次へと、追いかけるように読みたくなります。

 私は25の時、新潮文庫の「遠野物語」を読んで、この世界にはまりました。
 バイクで東北地方を巡ったときは、もちろん遠野のYHに泊まりました。

 遠野は、不思議に懐かしい雰囲気のある土地でした。
 河童淵、カッパ狛犬、語り部の老婆、オシラサマを祭る家・・・

 遠野に旅行に来て、そこから離れられなくなり、会社を辞めたという青年がいました。
 彼はYHでヌシと呼ばれ、仕事を手伝う代わりに、宿泊料をまけてもらっていました。

 「遠野物語」を久しぶりに読み返したのは、NHK「100分de名著」でやっていたので。
 番組を見て懐かしくなって読んだら、ますます懐かしさがこみあげてきました。

 さて、角川文庫では、柳田国男の作品が充実しています。
 「山の人生」「日本の伝説」「妖怪談義」なども、ぜひ読んでおきたいです。


山の人生 (角川ソフィア文庫)

山の人生 (角川ソフィア文庫)

  • 作者: 柳田 国男
  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 2013/01/25
  • メディア: 文庫



日本の伝説 (角川ソフィア文庫)

日本の伝説 (角川ソフィア文庫)

  • 作者: 柳田 国男
  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 2013/01/25
  • メディア: 文庫



新訂 妖怪談義 (角川ソフィア文庫)

新訂 妖怪談義 (角川ソフィア文庫)

  • 作者: 柳田 国男
  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 2013/01/25
  • メディア: 文庫



 さいごに。(たびねこ)

 さとうあすかの「たびねこ」を、図書館で借りてきて、娘と楽しんでいます。
 各ページで、主人公「たびねこ」を探すという絵本です。

 絵がかわいいのだけど、めちゃくちゃ細かくて、目が疲れます。
 娘は平気ですが、私は虫メガネがないと、探すことができません。


たびねこ

たびねこ

  • 作者: さとうあすか
  • 出版社/メーカー: 飛鳥新社
  • 発売日: 2013/12/14
  • メディア: 単行本



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松蘿玉液 [日本の近代文学]

 「松蘿玉液(しょうらぎょくえき)」 正岡子規 (岩波文庫)


 病床にある28歳の正岡子規が、新聞「日本」に連載していた随筆です。
 「墨汁一滴」「仰臥漫録」「病牀六尺」とともに子規の四大随筆です。

 岩波文庫から出ています。
 アマゾンでは品切れ。岩波書店のHPでは在庫僅少。


松蘿玉液 (岩波文庫)

松蘿玉液 (岩波文庫)

  • 作者: 正岡 子規
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1984/02/16
  • メディア: 文庫



 日清戦争の従軍記者として帰国の途上にあった子規は、喀血して危篤に。
 翌明治28年に書き始めた随筆が、この作品です。

 病床にあったとはいえ、子規は28歳。この頃はまだまだ元気です。
 筆にも勢いがあります。

 私のお気に入りは、「貧しきは」の章。(P102)
 「貧の極度は一文もなきことぞと覚えたる書生の内はなかなかに
 一文もなきこそ魂落ちつきて心安きこと多けれ。」

 それから、こんなことも言っています。(P102)
 「貧は一文なしより楽しきはなく病は静かに寝たるより安きはなし。」

 この作品で注目されるのは、ベースボールの説明です。
 子規は日本に野球を、最初に紹介した人です。

 野球を知らない当時の日本人に、複雑なルールを活字で伝えています。
 よほど野球がすきだったのでしょう。文が生き生きしています。

 ところで子規は喀血後(この作品執筆前)、故郷の松山で静養しました。
 そのとき親友の夏目漱石が、英語教師として松山に赴任していました。

 そこで、子規は漱石の下宿に転がり込んで、52日間同居しました。
 現在その家は、「愚陀仏庵」と呼ばれ、松山の名所になっています。

 私もそこへ立ち寄りました。20前に、バイクで旅した時のことです。
 私は20代。子規がマイブームで、書棚の子規本は当時買ったものです。

 さて、「松蘿玉液」に、漱石が出てくるわけではありません。
 しかしこの作品を読むと、子規と漱石の友情が自然と思い出されます。

 ついでながら、子規の従軍記は「飯待つ間」(岩波文庫)で読めます。

飯待つ間―正岡子規随筆選 (岩波文庫)

飯待つ間―正岡子規随筆選 (岩波文庫)

  • 作者: 正岡 子規
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1985/03/18
  • メディア: 文庫



 さいごに。(登山のアルバム作り)

 北アルプス登山は、2週間前に終わりました。
 しかし下山後は、アルバム作りという楽しみがあります。
 写真を貼りながら、もう一度、山の時間をじっくり味わっています。

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仰臥漫録 [日本の近代文学]

 「仰臥漫録」 正岡子規 (角川文庫)


 脊髄カリエスで病床の子規が、死の直前まで書き続けた随筆です。
 「墨汁一滴」「病牀六尺」とともに、三大随筆と呼ばれています。

 岩波文庫と、角川ソフィア文庫から出ています。
 オススメは角川版。カラーの口絵があるし、表紙も良いです。


仰臥漫録 (角川ソフィア文庫)

仰臥漫録 (角川ソフィア文庫)

  • 作者: 正岡 子規
  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 2009/09/25
  • メディア: 文庫




仰臥漫録 (岩波文庫)

仰臥漫録 (岩波文庫)

  • 作者: 正岡 子規
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1983/11/16
  • メディア: 文庫



 死の前年、「墨汁一滴」の連載終了と同時に、書き始めた随筆です。
 公表する意図がなかったため、魂の叫びがそのまま書かれています。

 食べ物の話が多いです。
 病床にあっては、食事だけが楽しみだったのでしょうか。

 菓子パンがうまくなかったので、羊羹や塩煎餅をヤケ食いしたとか。
 梅干を捨てるのが惜しくて、何度も何度もしゃぶっているとか。
 書生時代に旅先で食った牡蠣は、本当にうまかったとか。

 また、多くの俳句が収録されています。
 「糸瓜ぶらり夕顔だらり秋の風」「病間に糸瓜の句など作りける」
 「物思ふ窓にぶらりと糸瓜哉」・・・やはりへちまの句が多いです。

 そして時々、ギクリとするような感想も挿入されます。
 千枚通しを見ていると、自殺したくなるとか。

 所々に挿絵のように、自筆の絵が入っているのがこの本の特徴です。 
 角川版にはカラーの口絵があって、子規の絵の美しさが分かります。

 子規の絵は、俳句同様、決して飾らない素朴な美を持っています。
 死を目前にした子規の、心の不思議な安らぎを感じます。
 
 さいごに。(ハロウィン)

 英語教室で、ハロウィンパーティーをやりました。
 娘は、クロネコに扮しました。

 ちょっとかわいかったので、ケータイの待ち受け画面にしました。
 (相変わらず親ばか)
 ↓ クロネコ姿で、お絵かき中

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筆まかせ [日本の近代文学]

 「筆まかせ 抄」 正岡子規 (岩波文庫)


 若かりし子規が、まさに筆に任せて様々なことを書いた随筆です。
 夏目漱石との往復書簡が収録されています。

 岩波文庫から出ていましたが、現在は品切れ。
 時々重版が出ます。


筆まかせ抄 (岩波文庫)

筆まかせ抄 (岩波文庫)

  • 作者: 正岡 子規
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1985/02/18
  • メディア: 文庫



 明治17年、17歳の正岡子規は上京して、東大予備門に入学しました。
 その後の東京大学時代、明治23年までのことが書かれています。

 特に同窓の漱石との往復書簡は、面白いことで有名です。
 明治23年の「鬼の目に涙」(P192~)は絶品。
 二人が本当に仲良しだったことが分かります。

 私のお気に入りは、「弥次喜多」(P21~P25)。
 50銭しか持たずに、夜中の11時に東京を出て、鎌倉へ向かう悪友4人。

 まだ10代の元気いっぱいの子規! 青春時代特有の無茶!
 のちに結核を患うことが嘘のよう。読んでいてとても楽しい。

 さて、過日9月19日は、子規の忌日でした。
 絶筆の「糸瓜咲て痰のつまりし仏かな」などから、「糸瓜忌」といいます。

 子規がなぜ「糸瓜(へちま)」を詠んだかというと、それが薬だったから。
 糸瓜はつるを切って水を取り、それを痰切りの薬にしたのだそうです。

 子規の病床の随筆に「墨汁一滴」「病床六尺」があります。
 「墨汁一滴」 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-01-07
 「病牀六尺」 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-01-20

 さいごに。(ヒュッテ大槍)

 先日の登山の最後に泊まったヒュッテ大槍はすごかったです。
 ディナーにワインが出て、鳥の蒸し焼きと、絶品のパスタが出て・・・

 まるでイタリアンのコースです。
 ほんとに、ここは山小屋?という感じでした。
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上海 [日本の近代文学]

 「上海」 横光利一 (岩波文庫)


 二人の日本人青年を中心に、五三〇事件当時の上海を描いた物語です。
 新感覚派の集大成的な作品として知られています。

 2008年に岩波文庫から改版が出ました。読みやすいし適正価格です。
 講談社文芸文庫からも出ていますが、1103円。相変わらず、お高い。


上海 (岩波文庫)

上海 (岩波文庫)

  • 作者: 横光 利一
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2008/02/15
  • メディア: 文庫



 舞台は、1925年の上海。
 この混沌とした国際都市には、さまざまな人間が暮らしていました。

 風俗の女、踊り子、芸者、没落したロシア女の妾、女スパイ、売春婦、
 物乞い、西洋のビジネスマン、インド人の巡査、英兵、米兵・・・

 主人公は、日本人青年の参木(さんき)。
 若いのに、生きる希望を失っている、あまりぱっとしない男です。

 紡績工場に暴徒が襲ってきたとき、参木は一人の女工を助けました。
 彼女は美しい支那の女性。名は芳秋蘭(ほうしゅうらん)。
 しかし、彼女はもうひとつの顔をもっています。

 陰謀、トライキ、暴動、そして市街戦・・・
 五三〇事件の中に、芳秋蘭の影が見え隠れして・・・

 賛否両論ある作品ですが、予想以上に面白かったです。
 私には、ハードボイルド小説のように、楽しめました。

 ただし結末はいまひとつ。未完のような印象を与えます。
 せめて芳秋蘭がどうなったのか、知りたかったです。

 さて、横光利一は、芥川龍之介に勧められて、上海へ渡りました。
 そこで、西洋列強に支配されたみじめな東洋を見たのです。

 それが、「上海」執筆のきっかけになったのだそうです。
 実際、生々しい上海の描写に、このときの体験が生かされています。

 横光にはまた、大戦前のパリを舞台とした「旅愁」もあります。
 講談社文芸文庫から出ていて、上が1680円、下が1785円!
 この値段では、買えません。

 さいごに。(引き渡し訓練)

 先日、娘の小学校で、引き渡し訓練がありました。
 たまたま私の都合がついたので、妻に代わって行って来ました。
 教室で娘を引き取って帰るだけなのですが、妙に楽しかったです。

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風流仏 [日本の近代文学]

 「風流仏・一口剣」 幸田露伴 (岩波文庫)


 「風流仏」は、修行中の若い仏師が、悲恋の末に風流仏を彫るまでの物語です。
 擬古典調の文体で書かれた名作で、幸田露伴の出世作として知られています。

 2013年の2月に、岩波文庫から復刊されましたが、またいつ消えてしまうやら。
 漢字は旧字体で、一文が長く、会話文にカッコが無くて、とても読みにくいです。


風流仏・一口剣 (岩波文庫)

風流仏・一口剣 (岩波文庫)

  • 作者: 幸田 露伴
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1988
  • メディア: 文庫



 仏像彫刻一筋で、諸国を修行して歩く若い仏師「珠運」が、須原に一泊しました。
 その宿で、名物の花漬けを売りに来たのが、可憐な「お辰」でした。

 宿の主人から、彼女の悲しい身の上を聞き、「お辰」を忘れられなくなりました。
 そして、とうとう「珠運」は行動に出ますが…

 60ページほどの短い作品ながら、とても密度が濃い物語でした。
 読み終わったあとも、露伴の語り口調が、いつまでも耳に残ります。

 ところで、この作品の冒頭は、こんな調子です。
 「三尊四天王十二童子十六羅漢さては五百羅漢までを」
 目が回りそうです。

 そこで、「五重塔」の時と同じく、朗読CDを探しました。が、ありません。
 「五重塔」 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-01-04

 しかし、朗読カセットがあったので、市の図書館から借りてきました。
 現在乗っている車には、カセットデッキがあるので、通勤の車中で聴きました。
 
 しかし、しかし、最初は何を言っているのか分からず、頭がくらくらしました。
 たびたび出てくる「シュウン」という言葉は何か? どんな意味か?

 2回目の朗読で、それが主人公「珠運」だと分かり、ようやく話がつかめました。
 ちなみに、朗読は133分! 2回で、4時間半近くになります。

 それにしても、仏像好きには、たまらない物語です。
 特に、最後の十章の下は圧巻。朗読にも力が入っています。

 同時収録の「一口剣」も、露伴得意の職人モノ。ラストが、すごい。
 また、庄屋殿の「実は其の…」という口ぐせが、笑えました。

 さいごに。(「仏像拝観手引」)

 NHKの番組「仏像拝観手引」(火曜夜・Eテレ)を、毎回楽しみにしています。
 今回の「日本列島巡礼編」では、マイナーな仏像も紹介されていて嬉しいです。

 もう10年以上、仏像巡りをしていません。
 いつの日か家族3人で、仏像巡りができるといいのだけど。

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神経病時代 [日本の近代文学]

 「神経病時代・若き日」 広津和郎 (岩波文庫)


 「神経病時代」は、優柔不断な若い新聞記者の、憂鬱な日常を描いた作品です。
 1918年に出た作者の処女作であり、代表作の一つです。

 今年2013年の2月に、岩波文庫から復刊されました。
 初版は1951年で、活字が読みにくいのですが、他の文庫では読めません。


神経病時代・若き日 (岩波文庫 緑 69-1)

神経病時代・若き日 (岩波文庫 緑 69-1)

  • 作者: 広津 和郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1951/12/10
  • メディア: 文庫



 新聞社で編集見習いをしている鈴本定吉は、自分の意志を貫けない若い男です。
 家庭では妻に支配され、職場では上司に支配されています。

 こんな生活から抜け出して、田舎でトルストイをぞんぶんに読みたい。
 と、勝手な空想をしていますが、実行する勇気はありません。

 ある夜、酔っ払った友人に、殴られそうになったことがきっかけで、
 定吉の神経は、しだいおかしくなっていき…

 この作品は、タイトルに惹かれて、ずっと気になっていました。
 2月に復刊されて、ようやく読むことができました。ありがたい。

 タイトルが「神経病時代」とあるけど、「時代」に責任はありません。
 周りに流される定吉自身に、問題があると思います。

 「あさましい! これが生活か!」と、嘆くばかりで、何もできません。
 「甘ったれるんじゃないよ」と言って、横っ面をひっぱたいてやりたくなります。
 が、その一方で、このダメさかげんに、とても親近感を持ってしまいました。

 特に、友人河野と二人で男泣きする場面は、カッコ悪すぎて好感が持てます。
 定吉の仲間も皆、ダメ男たちばかりで、実に良い味を出しています。

 この小説は、私の中で、ダメ男系列の作品です。
 佐藤春夫の「田園の憂鬱」と、イメージが重なります。

 さて、同時収録の「若き日」は、若き日の恋を描いた自伝的な作品です。
 しかし心を打ったのは、文章からにじみ出る、父に対する愛情です。

 流行遅れとなった父柳浪は、文壇から遠ざかり、収入が途絶えました。
 苦しい生活を送りながらも、息子は父に、深い尊敬の念を持ち続けます。

 ちなみに「柳浪傑作選」は、和郎の紹介で、出すことができたのだそうです。
 このたび復刊された柳浪の悲惨小説も、ちょっとだけ読みたい気もしました。


河内屋・黒蜴【カゲ】―他一篇 (岩波文庫)

河内屋・黒蜴【カゲ】―他一篇 (岩波文庫)

  • 作者: 広津 柳浪
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1952/09/25
  • メディア: 文庫



 さいごに。(なかなか帰らない娘)

 下校時刻は1時半。それなのに、4時近くまで帰らなかったといいます。
 心配して妻が迎えに行くと、娘は近所の男の子と一緒に帰って来ました。

 男の子は、大きなタケノコを抱えて、歩いていたのだそうです。
 いったい、どこに寄り道していたのやら。

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自註鹿鳴集(じちゅうろくめいしゅう) [日本の近代文学]

 「自註鹿鳴集(じちゅうろくめいしゅう)」 会津八一 (岩波文庫)


 八一の歌の総まとめである「鹿鳴集」に、自註を施した歌集です。
 奈良の手引書としても有名で、奈良ファンにはたまらない本です。

 現在、岩波文庫から出ています。
 新潮文庫版には、口絵写真4枚と地図が入っていましたが、現在は絶版。


自註鹿鳴集 (岩波文庫)

自註鹿鳴集 (岩波文庫)

  • 作者: 会津 八一
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1998/02/16
  • メディア: 文庫



 八一は28歳の時、初めて奈良を訪れ、荒廃した古都を歌に詠みました。
 これをきっかけに、その後何度も奈良を訪れ、歌を読み続けました。

 還暦に、自作の歌をまとめ、更に晩年、自註を付けたのが、本書です。
 八一の歌は、全てひらがな書きなので、優しく懐かしい感じがします。

 歌集の巻頭は、春日野(かすがの)を詠んだ名歌です。
 「かすがの に おしてる つき の ほがらかに
  あき の ゆふべ と なり に ける かも」(P11)

 春日野は鹿の名所。鹿の鳴き声を感じる歌が、これに続きます。
 「うちふして もの もふ くさ の まくらべ を
  あした の しか の むれ わたり つつ」(P12)

 今から15年以上前、1997年8月のこと。
 私は鹿とたわむれながら、あてどなく奈良公園を歩いていました。
 偶然知り合った宮澤さんという方に、新潮版「自註鹿鳴集」をもらいました。

 宮澤さんは、会津八一に私淑し、奈良を巡りながら、短歌を作っていて、
 私にくれた本の見返しのページには、自作の歌を書いてくれました。

 「そらみつ やまと の かた に かりね して
  ひたすら こふ は とほき よ の ひと」

 私はこの本を携えて、奈良を数日間、歩き回りました。
 宮澤さんにいただいた「自註鹿鳴集」は、私にとって思い出の本です。

 その後、奈良を訪れる機会には、なかなか恵まれません。
 しかし、いや、だからこそ、この本を何度も何度も読み返しています。

 私が最も気に入っている歌は、次の歌です。
 この歌を読むたびに、東大寺大仏殿の大きな柱を、思い出します。

 「ふるてら の はしら に のこる たびびと の
  な を よみ ゆけど しる ひと も なし」(P42)

 この歌の自註も必見です。ぜひ見て欲しい。
 八一は酔って、ちょっと悪いことをしているようです。

 なお、「渾齋随筆」(中公文庫)も、奈良ファンには必読書です。
 「鹿鳴集」の歌に解説をほどこした随筆です。


渾齋隨筆 (中公文庫)

渾齋隨筆 (中公文庫)

  • 作者: 會津 八一
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1978/10/10
  • メディア: 文庫



 また奈良に行きたいです。
 「古寺巡礼」 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-06-08
 「大和古寺風物詩」 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-06-07
 「大和路」 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-02-04
 「無常という事」 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-08-17

 さいごに。(幼稚園の卒園式)

 月曜日、娘の幼稚園の卒園式に、家族休暇を取って出席しました。
 妻には、「まちがってもイビキをかかないで」と言われていましたが、
 居眠りなんて、とんでもない。とても感動しました。

 3年前、娘は「幼稚園に行きたくない」と、何度も言ったものです。
 また、しょっちゅう発熱して、幼稚園を休んだものです。

 しかし、本当によくここまで育ってくれました。
 証書を受け取る娘の姿は、本当にたくましく見えました。

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破戒 [日本の近代文学]

 「破戒」 島崎藤村 (新潮文庫)


 被差別部落出身の小学校教員が、出生の秘密を告白するまでの物語です。
 田山花袋の「蒲団」とともに、日本自然主義文学の成立を告げた傑作です。

 現在、新潮文庫と岩波文庫で、読むことができます。
 どちらも近年改版が出て、読みやすくなりました。


破戒 (新潮文庫)

破戒 (新潮文庫)

  • 作者: 島崎 藤村
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/07
  • メディア: 文庫




破戒 (岩波文庫)

破戒 (岩波文庫)

  • 作者: 島崎 藤村
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2002/10/16
  • メディア: 文庫



 小学校教員の瀬川丑松(うしまつ)は、父からある戒めを与えられていました。
 それは、自分の出生の秘密を、決して明かすなというものです。

 そのため彼は、自分が被差別部落の出身であることを、隠しています。
 そして一方では、このような社会の矛盾を、ひどく憎んでいます。

 丑松には、銀之助という親友があり、自分を慕うお志保という女性もあります。
 しかし、本当に心が慰められることは、ありません。

 丑松は、同郷の先輩で、部落解放運動家の猪子蓮太郎を、敬愛しています。
 そして、猪子には自分の秘密を打ち明けられそうだと、ひそかに考えます。

 しかし、猪子は活動中に壮絶な死を遂げ… 
 そして、丑松はある決意をし…

 この小説は、デリケートな問題を扱っているため、さまざまな批判もあります。
 特に、主人公が土下座する場面や、アメリカに行く場面は、実に評判が悪い。

 しかし藤村が、真面目に問題と向き合い、真剣に作品化したことは確かです。
 テーマも、完全口語体の文体も、展開の仕方も、当時としては画期的でした。

 私は、高校時代の読書会で初めて読み、20年前に再読しました。
 繰り返し読む価値がある作品だと、私は思っています。 

 ところで、藤村は「蒲団」の影響を受けて、姪との関係を「新生」に描きます。
 「新生」の主人公は、絵に描いたようなサイテー男らしい。
 ぜひ読んでみたいのですが、現在、手に入りません。改版を出してほしい。


新生 上巻 (新潮文庫 草 55-13)

新生 上巻 (新潮文庫 草 55-13)

  • 作者: 島崎 藤村
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1955/03
  • メディア: 文庫



 さいごに。(おしん)

 再放送されているNHKのドラマ「おしん」が、妻と娘の間でブームです。
 かわいそうな場面が多くて、娘はしょっちゅう泣いているそうです。

 私は、妻と娘が話してくれるあらすじを、聞いているだけなのですが、
 かわいそうなだけではなく、実に深い物語ですね。

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蒲団 [日本の近代文学]

 「蒲団(ふとん)」 田山花袋 (新潮文庫)


 若い女弟子に惚れた小説家の、ほろ苦い苦悩を描いた物語です。
 自然主義文学の最初の作品として、文学史上に残る作品です。

 現在、新潮文庫、岩波文庫などから出ています。
 短い作品なので、どちらも他の作品との抱き合わせで、本となっています。

 新潮文庫は「重右衛門の最後」、岩波文庫は「一兵卒」とのカップリング。
 私が読んだ新潮文庫版は、2003年改版で、旧版よりはるかに読みやすかった。


蒲団・重右衛門の最後 (新潮文庫)

蒲団・重右衛門の最後 (新潮文庫)

  • 作者: 田山 花袋
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1952/03/18
  • メディア: 文庫




蒲団・一兵卒 (岩波文庫)

蒲団・一兵卒 (岩波文庫)

  • 作者: 田山 花袋
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2002/10/16
  • メディア: 文庫



 小説家の竹中時雄のもとに、19歳の美しい女性芳子が弟子入りしました。
 彼女が上京した時、妻は三人目の子を産んだばかりでした。

 時雄はすでに恋のときめきを失って久しく、芳子のことがとても気になります。
 周りの人々も、時雄の変化に気付き、二人の関係を怪しみます。
 しかし、芳子には、田中という若い恋人ができて…

 今回読み返すまで、蒲団の匂いを嗅ぐ場面しか、覚えていませんでした。
 しかし読み終わって、「こんなに面白い話だったのか!」と、驚きました。

 なんといっても、主人公の中年作家、時雄が面白い。
 いい年のおっさんのくせに、若く美しい弟子に、ぞっこん惚れてしまう。

 芳子に恋人ができると、嫉妬に狂ってヤケ酒したり。
 酔っ払って、便所で寝込んでしまったり。

 監督の名のもと、芳子の部屋を漁って、手紙を盗み読みしたり。
 罪の無い細君に、当たり散らしたり。

 そして、最後に芳子が国に戻っていなくなると…
 彼女の蒲団を敷いて、顔を埋めて泣くのです。いいぞ、時雄! サイコー。

 呆れたことに、この小説は、花袋の実体験をもとにしています。
 芳子というのは、実際に花袋に師事していた岡田美知代のこと。

 だから、当時の読者は、「蒲団」をざんげ録として、解釈しました。
 そして、あっぱれ、よくそこまで書いた、と褒めたらしい。

 「蒲団」と、島崎藤村の名作「破壊」は、自然主義文学の最初の作品です。
 現在評価されえているのは、多分「破戒」の方。
 しかし当時は、「蒲団」のへの賞賛が、圧倒的に大きかったらしいです。

 藤村ものちに、姪との情事を、「新生」で描きました。(書かなくてもいいのに)
 「蒲団」から、私小説というジャンルが始まった、という説もあります。

 さいごに。(妻のチェックが入りました)

 妻が、「私がアホな番組しか見ていないように書くのはおかしい」と、言いました。
 以前、【妻は「さんまのまんま」しか録画しない】と書いたのを、読んだようです。
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2012-10-05

 自分で書いておいて、なんですけど、この記述はかわいそうです。
 うちの妻は、世界史を専攻していたので、歴史関係が好きで、「BS歴史館」や、
 「さかのぼり日本史」などを、よく見ています。「さんま」だけではありません。

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