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坊っちゃん [日本の近代文学]

 「坊ちゃん」 夏目漱石 (集英社文庫)


 四国の中学に赴任した江戸っ子の「坊ちゃん」が、悪党をこらしめる物語です。
 漱石の初期の痛快な青春小説で、多くの読者に愛されている中編小説です。

 名高い名作なので、あらゆる文庫から出ていますが、注目は集英社文庫です。
 カバーが美しく(リンクの写真とは別の下の写真)、冒頭の口絵写真が貴重。


坊っちゃん (集英社文庫)

坊っちゃん (集英社文庫)

  • 作者: 夏目 漱石
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1991/02/01
  • メディア: 文庫



P1070903-2.jpg

 新潮文庫版・岩波文庫版も定番です。
 古典的名作なので、ネットの青空文庫で読むこともできます。(無料!)


坊っちゃん (新潮文庫)

坊っちゃん (新潮文庫)

  • 作者: 夏目 漱石
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/04
  • メディア: 文庫



坊っちゃん (岩波文庫)

坊っちゃん (岩波文庫)

  • 作者: 夏目 漱石
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1989/05/01
  • メディア: ペーパーバック



 「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。」(P7)
 坊っちゃんはけんかっ早いので親から冷たくされ、味方は下女の清だけです。

 学校を卒業したあと、都会を離れて、四国の中学校に単身赴任しました。
 しかし江戸っ子の坊っちゃんには、気に食わないことばかりでした。

 一方同僚に、狸、赤シャツ、のだいこ、うらなり、山嵐とあだ名をつけます。
 そそっかしい坊っちゃんは、赤シャツの言葉を信じ、山嵐と距離を置きました。

 しかし、うらなりが婚約者マドンナを、赤シャツに奪われたことを知り・・・
 赤シャツの陰謀を知った坊ちゃんは、山嵐と一緒に計画を練って・・・

 ストーリーも痛快ですが、文体もまた歯切れよく、リズムが小気味いいです。
 また、なんといっても主人公の坊っちゃんがいい。本当に楽しい作品です。

 「坊っちゃん」は、夏目漱石の作品のマイ・ベストです。何回読んだことか!
 高校時代に初めて読んでから、私の愛読書のひとつとなっています。

 新潮版とちくま(全集)版で読んだのに、今回、集英社版も買ってしまいました。
 集英社文庫は、現在少しずつ、漱石の作品のカバーを新しくしているので。

 最初に読んだ新潮文庫は、若い頃バイクで四国を回った時に、持っていきました。
 松山のユースホステルに泊まった時、部屋で拾い読みをしたのを覚えています。

 道後温泉は早朝の開館前から50人以上いて、その行列に並んで読んでいました。
 6時半に太鼓の音とともに入館しました。その後、あの本は行方不明です。

 ついでながら、近くに子規記念館もあって、私は2時間半もそこにいました。
 その時持っていった「病牀六尺」と「墨汁一滴」は、今でも書棚にあります。

 「病牀六尺」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-01-20
 「墨汁一滴」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-01-07

 さいごに。(若い頃の思い出)

 私がバイクで四国を一周したのは、社会人4年目。1993年で、26歳でした。
 懐かしい! 車に慣れた今、大きなバイクは、怖くて乗ることができません。

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野火 [日本の近代文学]

 「野火」 大岡昇平 (新潮文庫)


 肺病で中隊から見捨てられた田村の、レイテ島での極限状況を描いた小説です。
 自身の体験をもとに書いた、大岡昇平の代表作で、戦争小説の永遠の名作です。


野火 (新潮文庫)

野火 (新潮文庫)

  • 作者: 大岡 昇平
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1954/05/12
  • メディア: 文庫



 肺病の田村一等兵は、芋を六本与えられただけで、中隊を追い出されました。
 彼が受けた命令は、病院に引き返し、入院できなければ自決しろというものです。

 病院の前では、同じように隊から追われた多くの兵たちが、座り込んでいました。
 そこで、顔なじみの安田と永松に再会して・・・翌朝、砲声で目覚めると・・・

 私がこの小説を初めて読んだのは、大学時代です。
 二十代の私は、この作品を、戦争小説というよりも、冒険小説として読みました。

 先月「100分de名著」で取り上げられたのをきっかけに、久々に読み直しました。
 五十になった私は、この小説を、哲学小説として読んだような気がします。

 死の意識と自由、自然の生命力、戦場経済、十字架、発作的殺人、銃、死の観念、
 ある夜に見た火、聞こえてきた声、万物に見られている感覚、人肉食、神、狂気。

 本当に、様々な場面で、様々なことを、考えさせられる小説でした。
 中でも特に、印象に残っているのが、ある夜に見た動く火の場面です。

 「ある夜、火は野に動いた。(中略)人の通るはずのない湿原を貫いて、提灯ほど
 の高さで、揺れながら近づいて来た。/私の方へ、どんどん迫って来るように思わ
 れた。」(P147)

 この「火」は何だったのか? タイトル「野火」とどんな関係があるのか?
 直後、人肉を食べたい発作に襲われることから、大事な場面だと思うのですが。
 (「100分de名著」でも、島田雅彦が問題提起していました。)

 「野火」には「野焼きの火」以外にも、「突如出現する怪火」の意味もあります。
 この「火」は、ヒトダマなのか? 万物または神による、なんらかの合図なのか?

 この問題に、自分なりの解答ができた時、この小説がぐっと近くなると思います。
 が、現在の私には、まだよく分かりません。

 さて、「野火」のあとは「レイテ戦記」を読む、というパターンがあります。
 しかし、この作品は長いし、内容的にも重たいので、私は読む気がしません。

レイテ戦記 (上巻) (中公文庫)

レイテ戦記 (上巻) (中公文庫)

  • 作者: 大岡 昇平
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1974/09/10
  • メディア: 文庫



 「俘虜記」も、戦争文学で、大岡の代表作です。
 「野火」の感動が残っているうちに読んでおきたいです。

俘虜記 (新潮文庫)

俘虜記 (新潮文庫)

  • 作者: 大岡 昇平
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1967/08/14
  • メディア: 文庫



 さらに、「武蔵野夫人」も読みたいです。戦争文学ではありません。
 スタンダールの手法を意識した作品だそうです。

武蔵野夫人 (新潮文庫)

武蔵野夫人 (新潮文庫)

  • 作者: 大岡 昇平
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1953/06/09
  • メディア: 文庫



 さいごに。(欲しいものが無いという不幸)

 今年も、ひとり娘の誕生日が来ました。11歳になります。びっくりです。
 このブログを始めた頃、娘はまだ3歳でした。

 娘に「プレゼントは何がいいか」と聞いたところ、「特に無い」という返事。
 欲しいものが無いというのは、物に恵まれた時代特有の不幸かもしれません。

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パニック [日本の近代文学]

 「パニック・裸の王様」 開高健 (新潮文庫)


 ネズミの大発生による騒動を描いた「パニック」など、短編全4編を収めています。
 サントリー宣伝部時代の1957年~1959年に書いた、作者の初期の傑作短編集です。

 「知的な痴的な教養講座」で開高健の語り口にしびれたら、次はぜひ小説を読みたい。
 新潮文庫のこの本は、芥川賞受賞の「裸の王様」など、傑作ぞろいでオススメです。


パニック・裸の王様 (新潮文庫)

パニック・裸の王様 (新潮文庫)

  • 作者: 開高 健
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1960/06/28
  • メディア: 文庫



 「パニック」は、ネズミの大発生と、それに翻弄される人間を描いています。
 主人公の俊介は、県庁山林課で、鼠害を最小限に食い止めるために戦います。

 120年ぶりに笹が実を結び、地下ではネズミたちの大繁殖の兆しが見られました。
 俊介は被害を未然に防ぐため、上司に対策を提案しますが、相手にされません。

 怠惰な組織は、問題が表面化するまで、リスクのある行動を取らないのです。
 そして問題が表面化すると、責任のなすりつけとごまかしに走るのでした・・・

 ネズミと戦う俊介は、同時に腐敗した組織と戦っています。
 そして悲しいことに、俊介自身も腐った手の中に、からめ取られていくのです。

 暴走するネズミたちが、私には天から遣わされた生き物のように思えてきました。
 彼らは社会の腐敗を一掃するという使命を与えられ、やって来たのではないか?

 そして驚くべき結末! 最後は怒りと虚脱感と、なぜか感動でいっぱいでした。
 わずか60ページですが、とても強烈で、開高健の作品中最も印象的な作品です。

 「裸の王様」は「パニック」と並ぶ代表作で、芥川賞受賞作でもあります。
 画塾を経営している「僕」と、生徒の大田太郎の心の交流を描いています。

 太郎は大商人の一人息子ですが、家庭では疎外されてどこか歪んでいました。
 「僕」は太郎と一緒に川原で遊ぶなどして、彼の心を徐々に開いていき・・・

 解説では、「作者は打算と偽善と虚栄と迎合にみちた社会のなかで、ほとんど
 圧殺されかかっている生命の救出を描いている。」と、うまくまとめています。

 太郎が描いた裸の王様は、欺瞞に満ちた大人たちをも表しているのではないか。
 「王様は裸だ!」という小さい叫び声が、どこからか聞こえてきそうでした。

 「巨人と玩具」は、製菓会社のキャラメル販売合戦の徒労を描いています。
 身を粉にして働き、多くの犠牲の出した挙句、巨人たちは共に滅んでいく!

 「流亡記」は、ある日突然万里の長城建設にかり出された男の物語です。
 巨大で合理的で非情なシステムのもと、自由な者などは存在しません。

 「誰ひとりなんのためかわからず、どこをめざしているのかも分からない」
 この「厖大な徒労」からまぬがれるために、彼はどんな決断をしたのか?

 全4編いずれも傑作だと思います。特に語り口がいいです。クセになります。
 開高健は遅筆で有名でしたが、作品に妥協をしなかったためなのでしょうか。

 余談ですが、山口瞳の「男性自身 傑作選」を購入しました。
 時間がある時に、のんびりと読みたいです。


山口瞳「男性自身」傑作選 中年篇 (新潮文庫)

山口瞳「男性自身」傑作選 中年篇 (新潮文庫)

  • 作者: 山口 瞳
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/05/28
  • メディア: 文庫



 さいごに。(楽しかった食べ歩き)

 伊勢神宮に行ってきました。1泊してきました。
 荘厳で厳粛な雰囲気でした。さすが、神々の宿る土地です。

 一方で、おはらい町やおかげ横丁での食べ歩きも楽しかったです。
 シュークリーム、赤福、松坂牛串、松坂牛モツ汁、カキフライ、
 さわ餅、ハマグリ串、鶏の皮揚げ・・・ああ、本当によく食べた!

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江分利満氏の優雅な生活 [日本の近代文学]

 「江分利満氏の優雅な生活」 山口瞳 (新潮文庫)


 昭和の典型的なサラリーマンの、平凡な日常をそのまま描いた小説です。
 「婦人画報」に連載された出世作で、1963年に直木賞を受賞しました。

 私が読んだのは新潮文庫版ですが、現在はちくま文庫から出ています。
 このブログにおける( )内のページは、全て新潮文庫版のものです。


江分利満氏の優雅な生活 (ちくま文庫)

江分利満氏の優雅な生活 (ちくま文庫)

  • 作者: 山口 瞳
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2009/11/10
  • メディア: 文庫



 江分利満(エブリマン)は、どこにでもいそうなサラリーマンです。
 東西電気の宣伝部員で、30代半ばの男。妻と息子の3人家族です。

 ストーリーらしきものは無く、平凡な日常生活が淡々とつづられています。
 書き方はエッセイ風で、書きたいことを書きたいように書いています。

 「まずパンツは、3枚百円の『気軽パンツ』である。なぜ気軽かというと、
 前後がないのであって、つまり、前とか後ろとかを気にしないで気軽に穿く
 ことができるからである。2枚の白い布を合せてゴムをつけただけであるか
 ら、前後を反対に穿くことはあり得ない。」(P43)

 時代を感じます。昭和30年代には、そういうパンツがあったのですね。
 想像するだけで面白いのですが、同時にどことなく悲しい感じがします。

 この、面白くてどこか悲しい味わいが、この小説全体を貫く特徴です。
 この味わいは、「戦後は終っていない」という所からきているようです。

 特に、江分利満の父親が、戦後の悲しみを体現しています。
 戦争成金の父は、空襲で全てを失い、戦後は莫大な借金を抱えました。

 生活費はツケにしてくれと、返すあてもないのに、息子にそう言う父親。
 「いろいろ有難う」の章は、笑えるやら、泣けるやら・・・

 「問題は七転八起のどこで終ったかだけではないのか。運と非運とだけで
 はないのか。」(P134)という、考えさせられるような言葉もあります。

 さて山口瞳といえば、10年ほど前に「礼儀作法入門」が話題になりました。
 「男性自身」もファンが多い。彼の文の魅力はエッセイでも発揮されました。


礼儀作法入門 (新潮文庫)

礼儀作法入門 (新潮文庫)

  • 作者: 山口 瞳
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2000/03/29
  • メディア: 文庫



山口瞳「男性自身」傑作選 中年篇 (新潮文庫)

山口瞳「男性自身」傑作選 中年篇 (新潮文庫)

  • 作者: 山口 瞳
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/05/28
  • メディア: 文庫



 さいごに。(寒い中、見回りに出動)

 連日不審者が出没しています。いずれも露出狂で、どうやら同一人物らしい。
 小学校の先生や地域の安全委員らが、児童の下校時間に見回りをしています。

 うちのママさんも、今週はこの寒さの中、2時間ほど見回りに出ています。
 1人のヘンタイのせいでこんなことになるとは。そう考えると腹立たしい!

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ごんぎつね [日本の近代文学]

 「ごんぎつね」 新美南吉 (小学館文庫)


 小学校4年生で学習する「ごんぎつね」など、5編の童話と十三の詩です。
 小学館文庫新撰クラシックスの第一作。字が大きくて、挿絵もあります。


ごんぎつね (小学館文庫―新撰クラシックス)

ごんぎつね (小学館文庫―新撰クラシックス)

  • 作者: 新美 南吉
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 1999/11
  • メディア: 文庫



 「『ごんぎつね』といったら、この絵本だろう」という人は多いです。
 黒井健のイラストは心が温まります。「手ぶくろを買いに」もあります。


ごんぎつね (日本の童話名作選)

ごんぎつね (日本の童話名作選)

  • 作者: 新美 南吉
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 1986/10/01
  • メディア: ハードカバー



 「ごんぎつね」については、今さら説明は不要でしょう。
 誰もが教室で泣きながら朗読したことを、思い出すのではないでしょうか。

 ごんが栗をいっぱい抱えて、けなげに歩く挿絵を、私は忘れられません。
 ごんが、かわいそうで、兵十(ひょうじゅう)もまた、かわいそうで・・・

 ごんと兵十は、二人とも天涯孤独の身、似た者どうしです。
 ひょっとしたら、お互いにかけがえのない親友になれたかもしれないのです。

 それなのに、この結末は!
 ようやく相手に思いが届いた時、この世を去っていかなければならないとは。
 ようやく相手を理解した時、その相手がこの世からいなくなってしまうとは。

 このような結末にしなければならなかったのは、なぜでしょうか。
 新美南吉は、この物語にどのようなメッセージを込めているのでしょうか。

 さて、驚いたことに「ごんぎつね」を書いた当時、南吉は18歳だったそうです。
 代用教員として小学生たちと触れ合う中で、この作品が生まれたと言います。

 南吉が喉頭結核でこの世を去ったのは、昭和18年、まだ29歳の時のことです。
 死の二日前に言った言葉が、とても痛ましい。

 「私は池に向かって小石を投げた。水の波紋が広がるのを見てから死にたかった
 のに、それを見届けずに死ぬのはとても残念だ。」(P193)

 死後、「ごんぎつね」は知らぬ人が無いほど、親しまれる作品となりました。
 これほど大きく広がった波紋を、南吉自身に見てほしかった。

 南吉は短い生涯で、身を削るように、いくつものすばらしい作品を書きました。
 「おじいさんとランプ」「うた時計」など、印象的な作品も収録されています。

 ただし、「ごんぎつね」と並ぶ傑作「手ぶくろを買いに」は、入っていません。
 こちらも、同じ小学館文庫の、新撰クラシックスシリーズから出ていました。


手袋を買いに (小学館文庫―新撰クラシックス)

手袋を買いに (小学館文庫―新撰クラシックス)

  • 作者: 新美 南吉
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2003/12
  • メディア: 文庫



 ハルキ文庫なら、「ごんぎつね」も「手ぶくろを買いに」も両方載っています。
 美智子皇后も愛した「でんでんむしのかなしみ」も収録されているようです。


新美南吉童話集 (ハルキ文庫)

新美南吉童話集 (ハルキ文庫)

  • 作者: 新美 南吉
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 文庫



 ついでながら、「日本のアンデルセン」小川未明の童話集もオススメです。
 特に「赤いろうそくと人魚」は、なんともいえない魅力を放っています。


小川未明童話集 (新潮文庫)

小川未明童話集 (新潮文庫)

  • 作者: 小川 未明
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1961/11/13
  • メディア: 文庫



 さいごに。(娘とカフェに)

 正月休みに、宿題の読書をさせるために、娘をカフェに連れて行きました。
 ココアを飲みながら、1時間ほどのうちに、50ページほど読んでいました。

 それからというもの、娘が「カフェで本を読もう」と、よく誘ってくるのです。
 おかげで上島珈琲プレシャスカードの残金が、あっというまに無くなりました。

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星と祭 [日本の近代文学]

 「星と祭」 井上靖 (角川文庫)


 琵琶湖で娘を亡くした男が、湖北の十一面観音を巡り、心の平安を得る物語です。
 この作品で、湖北の十一面観音たちは、全国的に知られるようになりました。

 以前は角川文庫から出ていましたが、現在は絶版。私は20年ほど前に読みました。
 解説は、角川文庫の発刊者である故・角川源義。ぜひこの本を復刊してほしい。


星と祭 (角川文庫 い 5-4)

星と祭 (角川文庫 い 5-4)

  • 作者: 井上 靖
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 1975/03
  • メディア: 文庫



 貿易会社社長の架山は、七年前に先妻との間にできた娘を亡くしていました。
 娘のみはるは、琵琶湖でボート遊びをしていて、転覆事故に遭ったのです。

 みはるも、同乗していた年上の青年も、亡きがらは湖面に上がりませんでした。
 架山は悲嘆にくれ、青年の父親である大三浦に対して、憤りを感じていました。

 7年後、事故後初めて琵琶湖を訪れた架山は、偶然大三浦と再会しました。
 大三浦に連れられて、琵琶湖周辺の十一面観音を巡ってみると・・・

 この本を紹介してくれたのは、前の職場にいた、仏像仲間の同僚でした。
 彼は、奈良と京都ばかりを訪れてきた自分に、湖北の魅力を教えてくれました。

 この本を持って、渡岸寺や石道寺などを巡ったのは、20年近く前のことです。
 もちろん独身時代のことです。あのような贅沢はもう二度とできないでしょう。

 さて、小説の最初では、娘の死によって苦悩する架山の様子が描かれています。
 みはるの死を、古代の殯(もがり=仮葬)と見なすところは、さすが井上靖。

 みはるが生者でも死者でもないことに、意味を求めようとする・・・
 古代の人が挽歌を歌ったように、架山はみはると心の中で言葉を交わし・・・

 手元の角川文庫版202ぺージの「宝冠」の章から、琵琶湖古寺巡りが始まります。
 ここから、十一面観音巡礼がスタートします。仏像ファンにはたまらない!

 この小説の中で、主人公の架山が拝んだ十一面観音は、以下の13体だと思います。
 私が拝んだのは、その中で三体か四体です。いつか全て拝みたいです。

 渡岸寺、石道寺、福林寺、赤後寺、盛安寺、宗正寺、充満寺、医王寺、善隆寺、
 蓮長寺、円満寺、鶏足寺、長命寺。

 小説の最後で、架山と大三浦が、出会った十一面観音を一体一体現前させます。
 そして、長かった仮葬の期間は終わります。とても印象に残る場面でした。

 「つらなる星のように、十一面観音は湖を取り巻いて置かれ、一人の若者と
 一人の少女の霊は祀られたのである。」(P601)

渡岸寺十一面観音頭部左.jpg

 湖北を旅した時、「湖北 佛めぐり」という文庫サイズの写真集も携えました。
 序文を井上靖が書いています。モノクロですが、美しい仏像写真集です。


湖北 佛めぐり (京都書院アーツコレクション)

湖北 佛めぐり (京都書院アーツコレクション)

  • 作者: 駒澤 〓道
  • 出版社/メーカー: 京都書院
  • 発売日: 1999/11
  • メディア: 文庫



 さいごに。(スタバのチョコプリン)

 スタバに行って、新作のプリンを食べようとしましたが、売り切れていました。
 そのお店に聞いたところ、開店と同時に売り切れてしまうのだそうです。

 ちなみに、開店と同時に行ったとしても、買えないらしい。
 開店前から並んでいる人が、買い占めてしまうという。そこまでしなくても!

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二十四の瞳 [日本の近代文学]

 「二十四の瞳」 壺井栄 (角川文庫)


 昭和の前半に、瀬戸内海の寒村に赴任した女先生と12人の生徒たちの物語です。
 優れた反戦小説として有名で、映画やドラマになりました。

 角川文庫や新潮文庫から出ています。私は角川文庫の2011年版で読みました。
 てぬぐい柄のしゃれた表紙です。定価は324円と、昔ながらの良心的な価格。


二十四の瞳 (角川文庫)

二十四の瞳 (角川文庫)

  • 作者: 壺井 栄
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/06/23
  • メディア: 文庫



二十四の瞳 (新潮文庫)

二十四の瞳 (新潮文庫)

  • 作者: 壺井 栄
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/04
  • メディア: 文庫



 昭和3年に、寒村の分教場に、新米の女教師がやってきました。大石先生です。
 彼女が初めて受け持つ1年生は、男子5人、女子7人の計12人でした。

 十二人の一年生の瞳は、それぞれの個性にかがやいてことさら印象ぶかくうつった
 のである。/この瞳を、どうしてにごしてよいものか!(P24)

 しかし、村の生活は貧しく、さらに戦争の荒波に巻き込まれて・・・
 その4年後に5年生になった彼らは・・・さらにその14年後の再会では・・・

 今回読み直して、今さらながらこの作品が、反戦小説なのだと気付きました。 
 「名誉の戦死など、しなさんな。生きてもどってくるのよ。」(P189)

 さて、私が印象的だったのは、当時は誰もが学校で学びたがっていたということ。
 そして、学びたくても学べないという子が、とてもたくさんいたということです。

 当時の子どもたちは、小学生ともなれば、一家の労働力として数えられました。
 男の子は父親の仕事を手伝い、女の子は母親を手伝って子守や炊事をしました。

 今はどうかというと・・・子供たちは、家族においても「お客様」となっている!
 うちもそうです。母が料理し、父がお皿を並べている間、娘はごろごろしています。

 これでは、子供たちが「お客様」扱いに慣れてしまうのは、当然かもしれません。
 社会全体で、このような傾向を変えていかなければいけません。まずはうちから。

 働かない若者がいることも、「お客様」だからと考えれば、納得がいきます。
 と思っていたら、北大から「働かないアリ」について、面白い発表がありました。

 「普段働かないアリがいざという時に働いて、集団の絶滅を防いでいる」という。
 奥が深いです。働かない者は、いざという時に備えている、三年寝太郎なのかも。

 さて、壺井栄にはほかにも、「母のない子と子のない母と」という名作があります。
 「二十四の瞳」と対になるような作品です。ただし、現在品切れ。重版を待ちたい。


母のない子と子のない母と (小学館文庫―新撰クラシックス)

母のない子と子のない母と (小学館文庫―新撰クラシックス)

  • 作者: 壺井 栄
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2004/09
  • メディア: 文庫



 さいごに。(知らなくてもいい)

 今年に入って50日。この間娘が最も興味を持って覚えた言葉が「不倫」でした。
 テレビでは毎日、「不倫」「不倫」とそればっかり。

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春の雪 [日本の近代文学]

 「春の雪」 三島由紀夫 (新潮文庫)


 侯爵家の美しい青年と、伯爵家の美しい令嬢との、華やかで悲劇的な愛の物語です。
 作者の集大成「豊饒の海」全4巻のうちの第1巻です。2005年に映画化されました。

 新潮文庫と中公文庫から出ています。新潮文庫版のカヴァーは、とても美しいです。
 新潮文庫からは、「豊饒の海」全4巻が出ています。(さすが新潮さん)


春の雪―豊饒の海・第一巻 (新潮文庫)

春の雪―豊饒の海・第一巻 (新潮文庫)

  • 作者: 三島 由紀夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2002/10
  • メディア: ペーパーバック



春の雪 (中公文庫)

春の雪 (中公文庫)

  • 作者: 三島 由紀夫
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2008/03/23
  • メディア: 文庫



 時は、大正時代。主人公は、侯爵家の嫡男である松枝清顕(まつがえきよあき)。
 清顕は、優雅で美しい18歳の青年で、人生において決定的な何かを求めています。

 清顕には、聡子という幼なじみがいました。彼女は2歳年上の伯爵家の令嬢です。
 二人は、好意を寄せ合っているものの、たびたび心がすれ違ってしまいます。

 そのうち、聡子には縁談が持ち上がり・・・
 聡子が手の届かないところへ去ると、清顕は突然・・・

 舞台はきらびやかな貴族社会で、文体は優雅絢爛。少しとっつきにくいです。
 最初の四分の一ほどまでは、作品世界にも文体にも慣れず、たいへんでした。

 しかし、清顕と聡子が雪の中へ繰り出す場面から、物語の世界にはまりました。
 そこから禁忌を犯してしまうまでの展開は、この物語の圧巻でした。

 「優雅というものは禁を犯すものだ、それも至高の禁を」と清顕は言います。
 そして彼は、不可能な愛の歓喜の頂点で、世界が崩壊することを願っています。

 待っているのは、恐ろしい結末。それを知っていながら、破滅に向かう・・・
 凡人には理解しがたい考えと、計り知れない行動に、深い感銘を受けました。

 (ここから先、ネタバレが多くなります)

 ところで私は、終盤の清顕には、少し不満があります。
 あれほど大それたことをしながら、あっけなく死んでしまうとは!

 自分の気持ちを抑え込み、聡子への愛を封じ込め、表面上は何食わぬ顔で、
 したたかに、そしてふてぶてしく生き続けてほしかったです。

 自分が受けた苦痛も、人に与えた苦痛も、なんとも思わないような態度で。
 それこそが、清顕の目指すべき優雅というものではないでしょうか。

 さて、私はこの作品を、10年ほど前の2005年に、のめりこむように読みました。
 感動が余りにも大きくて、映画は見られず、原作の続編は読めなくなりました。

 ちなみに「春の雪」は、2005年のマイ・ベスト・ブックでした。
 これまで何度か、読み直そうと思いながらも、常に思いとどまってきた本です。

 さいごに。(ディズニーシー)

 今日、妻と娘は2人でディズニーシーへ行きます。存分に楽しんできてほしい。
 私はディズニー行を免除されたので、大掃除を少し進めておこうと思います。


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命売ります [日本の近代文学]

 「命売ります」 三島由紀夫 (ちくま文庫)


 自殺に失敗して命を売りに出した青年の、異常な体験を描いた荒唐無稽な小説です。
 自決の2年前に「週刊プレイボーイ」に連載された、娯楽的な読み物です。

 ちくま文庫から出ています。
 なぜか今年2015年に突然ベストセラーになり、話題になりました。


命売ります (ちくま文庫)

命売ります (ちくま文庫)

  • 作者: 三島 由紀夫
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1998/02
  • メディア: 文庫



 物語は、27歳の山田羽仁男(はにお)が、自殺に失敗する所から始まります。
 死にきれなかった羽仁男は、新聞の求職欄に広告を出しました。

 「命売ります。お好きな目的にお使い下さい。」
 あくる日の朝、さっそく買い手が現れて・・・

 驚くようなアイディア。軽快な展開。この小説が話題になる理由が分かります。
 しかし、三島らしくない。私の三島のイメージは、大きく揺さぶられました。

 恋愛小説の要素も、ミステリ小説の要素も、ホラー小説の要素も入っています。
 ただしどれも中途半端で、全体はバラバラでまとまりのないように思いました。

 読者の中には、この小説を傑作のように言う人がいます。でも、どうだろうか。
 あまりにも通俗的すぎるのではないか。とはいえ、興味深い作品ではあります。

 羽仁男の自殺のきっかけは、新聞の活字がみなゴキブリに見えたことです。
 つまり、世の中の出来事は全て、ゴキブリ同様に意味がない、ということか。

 そこに、三島の晩年の心境が現れている気がします。
 そういう点で、本当に興味深い作品です。

 「人生が無意味で、人間がただの人形にすぎないことを、あなた方は百も承知
 の筈でしょう。」(P76)という羽仁男の言葉に、三島の心境が見え隠れします。

 しかし、私にとっての三島由紀夫は、「春の雪」に象徴されます。
 とっつきにくいが、しだいに中毒になってくるあの文体。あれこそ三島ですよ。


春の雪―豊饒の海・第一巻 (新潮文庫)

春の雪―豊饒の海・第一巻 (新潮文庫)

  • 作者: 三島 由紀夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2002/10
  • メディア: ペーパーバック



 さいごに。(小学校は最終日)

 娘の小学校は、今日が、今年の最終日。明日から冬休みです。
 今日だけは、とてもうれしそうに登校しました。

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夏の葬列 [日本の近代文学]

 「夏の葬列」 山川方夫 (集英社文庫)


 「夏の葬列」「他人の夏」など、人生の一瞬の翳りを描いた短編集です。
 作者は昭和時代に「三田文学」の編集者として知られていました。

 集英社文庫から出ています。カバーがかわいいです。
 口絵ページに作者の写真が載っているところが嬉しいです。


夏の葬列 (集英社文庫)

夏の葬列 (集英社文庫)

  • 作者: 山川 方夫
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1991/05
  • メディア: 文庫



 「夏の葬列」は、わずか10ページ余りですが、強烈な印象が残る作品です。
 「私」が疎開先だった町を久々に訪れると、たまたま葬列が目につき・・・

 そして思い出される、十数年前の悲惨な出来事・・・
 知らされた残酷な事実、運命の皮肉・・・

 「他人の夏」もまた、8ページほどの小品ですが、印象的な 作品です。
 深夜に海で泳いでいると、たった一人で泳ぐ女に出会い・・・

 「死のうとしている人間を、軽蔑しちゃいけない。どんな人間にも、その
 人なりの苦労や、正義がある。その人だけの生甲斐(いきがい)ってやつ
 がある。そいつは、他の人間には、絶対にわかりっこないんだ」(P61)

 そのほか、規格化された団地生活の悲哀を描いた「お守り」や、
 何かを待ち続ける女を描いた「待っている女」などが良かったです。

 どの作品からも、生きることの意味を見失った人々の悲哀を感じます。
 全9編、いずれもどこかに死の香りを漂わせています。

 ところで「夏の葬列」は、中学校の教科書に載っているようです。
 また「他人の夏」は、高校の現代文の教科書に採用されているようです。

 さて、山川方夫にはほかにも、短編集「安南の王子」があります。
 同じく集英社文庫から出てい ます。


安南の王子 (集英社文庫)

安南の王子 (集英社文庫)

  • 作者: 山川 方夫
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1993/10
  • メディア: 文庫



 さいごに。(ヒル)

 夏のキャンプで最大のアクシデントが、ハイキングで蛭に咬まれたことです。
 私は靴下の上だったので大丈夫でしたが、妻は直接肌に咬まれていて大変でした。

 急いでキャンプ場に戻って、チャッカマンの火であぶって取りましたが、
 傷口からたらたらと血が流れ続けていました。ある意味、貴重な体験でした。

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