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海に住む少女 [20世紀フランス文学]

 「海に住む少女」 シュペルヴィエル作 永田千奈訳 (古典新訳文庫)


 「海に住む少女」「ノアの箱舟」など、幻想的で美しい短編を10作集めたものです。
 シュペルヴィエルを訳者は、「フランス版宮沢賢治」という言葉で表現しています。

 古典新訳文庫から2006年に出ています。訳は分かりやすかったです。
 収録された10編の作品は、いずれも20ページほどなので読みやすいです。


海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)

海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: シュペルヴィエル
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/10/12
  • メディア: 文庫



 水深6000メートルの大西洋の真ん中に町があり、たった1人の少女が住んでいます。
 その近くを貨物船が通った時、少女が初めて発した叫び声は・・・

 その町は何なのか? どのように作られたのか? 少女はなぜ海に住んでいるのか?
 幻想的で美しく、どこか切なくて、そして深く考えさせられる作品です。

 この作品の終盤は、私には衝撃的でした。
 この1篇のために、この本を買って良かったと思いました。

 そのほか不思議な話ばかりです。牛の視点で見たイエス誕生、パロディ版ノアの箱舟、
 溺死体のその後の物語、死後の世界に住む影たち、バイオリンの声を持つ少女・・・

 「訳者あとがき」では、シュペルヴィエルを「フランス版宮沢賢治」と呼んでいます。
 何気ない物語の中に、ハッとする言葉を散りばめているところが、賢治に似ています。

 「人々が道を行き交います。彼らはいつも、きちんとした理由があって、街のある地
 点から別の地点へと向かっているのでしょうか。」(P174)

 「牛乳とお椀」は、わずか3ページの小品です。
 しかし、この最後のページの2行によって、とても鮮烈な印象を残します。

 ところで、正直に言って、「何が言いたいの?」と思ってしまう作品もありました。
 次の物語はどう鑑賞すればいいのか? 好き嫌いが分かれる作品だと思いました。

 たとえば「ラニ」。こんな終わり方でいいのか?
 たとえば「競馬の続き」。こんな終わり方はないだろう。

 今回、初めてのシュペルヴィエル体験でした。
 古典新訳文庫からは、同じ永田訳で、「ひとさらい」も出ています。


ひとさらい (光文社古典新訳文庫)

ひとさらい (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: ジュール シュペルヴィエル
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/11/08
  • メディア: 文庫



 さいごに。(小数点の割り算でショック)

 娘の算数では、小数点の割り算をやっていて、私が時々答え合わせをします。
 「9.8 ÷ 0.6」という問題があって、娘の答えは「16あまり0.2」でした。

 「ちがうだろ、あまりは2だろ」と、私。でも、娘の答えが正解でした。
 小学5年生の問題が解けなくなってしまったなんて。ショック!

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青い鳥 [20世紀フランス文学]

 「青い鳥」 メーテルリンク作 江國香織訳 (新潮文庫)


 ティルティルとミティルの兄妹が、幸せの青い鳥を探して冒険する物語です。
 ベルギーのノーベル文学賞作家による童話劇で、何度も映画になりました。

 2016年に講談社文庫から出た江國香織訳は、童話劇が小説化されています。
 訳は新しいためとても分かりやすく、挿し絵も多くてオススメです。


青い鳥 (講談社文庫)

青い鳥 (講談社文庫)

  • 作者: モーリス・メーテルリンク
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/12/15
  • メディア: 文庫



 クリスマス・イブ、小さな家にティルティルとミティルという兄妹がいました。
 そこへ醜い妖精ベリリュンヌがやってきて、2人に言いました。

 「どうやらお前たちに、ちゃんとした青い鳥を探しに行ってもらわなきゃならない
 ようだね」(P20)

 そして妖精は、ダイヤモンドの付いた帽子を、ティルティルに渡しました。
 それは、「物事の内側に隠れているものが見えるようになる」と言います。

 こうして2人の兄妹の旅が始まりました。「光」が2人を導いてくれます。
 「記憶の国」「夜の城」「月夜の森」「幸福の館」「墓地」「未来の王国」・・・

 メーテルリンクは霊魂の神秘をさぐる戯曲家で、これは夢幻劇の精髄だそうです。
 たとえば、次のような部分に、スピリチュアルな面が出ていると思います。

 「私たちはどこにも行っていないわ。おなじ場所にいるの。あなたの、物の見方が
 変わっただけよ。物事の本質を見ているの。」(P180)

 幸福は私たちの周りに満ちている、だけど、そういう大事なことは目に見えない、
 というような教訓が、至る所で示されています。「星の王子さま」と似ています。

 そして、幸せの青い鳥がどこにいたかというと・・・この結末は、あまりにも有名。
 物語を通して、幸せとは何かを、じっくりと考えさせられました。

 ところで、講談社文庫の江國訳は、英訳書を底本にしています。つまり重訳です。
 それゆえ、新潮文庫の堀口大學訳を選ぶという人もいます。堀口は仏文学者なので。

 堀口訳の方が原作に忠実だと思います。もちろん、童話劇の形そのままです。
 やっぱり表記は「チルチル」と「ミチル」でしょうという人も、こちらをどうぞ。


青い鳥 (新潮文庫 メ-3-1)

青い鳥 (新潮文庫 メ-3-1)

  • 作者: メーテルリンク
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1960/03/22
  • メディア: 文庫



 さいごに。(おんぶは卒業してほしい)

 娘は小5にもなって、いまだに時々、私におぶさってきます。
 体重が重くなっているので、50歳の私にはキツイ。そろそろ卒業してほしい。

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太平洋の防波堤 [20世紀フランス文学]

 「太平洋の防波堤」 デュラス作 田中倫郎訳 (河出文庫)


 仏領インドシナで、海水に浸る土地を買わされた一家3人の苦難を描いた物語です。
 初期の作品でとても評価が高く、のちにその一部が「愛人」へと受け継がれました。

 かつて出ていた河出文庫版は、訳が分かりやすかったのですが、現在は絶版です。
 河出書房の世界文学全集にも、「愛人」とともに収録されています。


太平洋の防波堤 (河出文庫)

太平洋の防波堤 (河出文庫)

  • 作者: マルグリット デュラス
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1992/05
  • メディア: 文庫



太平洋の防波堤/愛人 ラマン/悲しみよ こんにちは (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-4)

太平洋の防波堤/愛人 ラマン/悲しみよ こんにちは (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-4)

  • 作者: フランソワーズ・サガン
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2008/03/11
  • メディア: 単行本



 母は、息子と娘を育てながら長年必死に働き、やっと払い下げ地を手に入れました。
 しかしその土地は、夏に高潮で浸水するため、全く耕作できない土地だったのです。

 母は高潮を防ぐため、土地の人と協力して、長大な防波堤を築き上げました。
 ところが高潮によって、防波堤も彼らの希望も、崩れ去ってしまいました。

 17歳のシュザンヌは、いつかこのみじめな境遇から逃れることを夢見ています。
 ある夜、一家で街の酒場に出たとき、見慣れぬリムジンがとまっていて・・・

 第一部の中心は、ヒロインのシュザンヌと、ムッシュウ・ジョーとの恋愛事件です。
 私は、大富豪の青年ジョーに感情移入して読みましたが、実に切なかったです。

 「金があるからって幸福になれるわけではありませんよ」(P35)
 ちなみに「愛人」では、彼は華僑ということになっていました。

 さて、私の目的は第一部を読むことだったのですが、面白かったのは第二部でした。
 第二部の中心は、兄のジョゼフと富豪の女リーナにまつわる出来事です。

 ダイヤを売るため街に出てきた一家でしたが、子供たちには別の影響がありました。
 シュザンヌはカルメンによって、ジョゼフはリーナによって、自我に目覚めます。

 私は第二部では、ジョゼフに感情移入しながら読んでいました。
 ジョゼフが自分の経験を語る部分は、とても印象に残りました。

 「重い荷物を足で引きずってあくせくすることにしかむかない人間ってのもいる
 もんなんだよ、いつも同じ重荷をさ。それを引っ張ってないと三歩も歩けなくな
 っちゃうこともある・・・」(P210)

 きっとそれは、自分の母のことであり、また自分のことでもあったのだと思います。
 のち にジョゼフは、その重い荷物をすべて投げ捨てて・・・

 母は防波堤で土地を守ろうと必死でしたが、その土地は子供たちを縛っていました。
 もし防波堤が決壊していなかったら、子供たちは解放されなかったかもしれません。

 太平洋の防波堤は、母の執念の象徴であり、徒労の象徴でもあります。
 そして防波堤は母自身でもあって、子供たちはそれを突き破る必要があったのです。

 さて、私は「愛人(ラマン)」を読んだついでに、この作品に立ち寄りました。
 しかし、「太平洋の防波堤」の方が読みやすく、私的にははるかに面白かったです。

 さいごに。(バレンタインもホワイトデイも)

 バレンタインデイの前に、娘はママといっしょに、友チョコを手作りしていました。
 ホワイトデイの前にも、娘はママといっしょに、友チョコを手作りしていました。

 こちらがあげてないのに、友チョコをくれた友達が何人もいたから、ということです。
 バレンタインデイも、ホワイトデイも、ママさんは大忙しでした。

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愛人(ラマン) [20世紀フランス文学]

 「愛人 ラマン」 マルグリット・デュラス作 清水徹訳 (河出文庫)


 仏領インドシナにおける、貧しい白人の少女と華僑の青年との愛の物語です。
 1984年に出た自伝的小説で、映画が1992年に公開されて話題になりました。

 河出文庫から出ています。口絵写真が付いていて参考になります。
 話があっちこっちに飛ぶので、少し読みにくかったです。


愛人 ラマン (河出文庫)

愛人 ラマン (河出文庫)

  • 作者: マルグリット デュラス
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1992/02/05
  • メディア: 文庫



 少女は、仏領インドシナで、母と二人の兄と一緒に暮らしていました。
 15歳半のある日、メコン川の渡し場で、華僑の金持ちの青年と出会いました。

 二人は付き合い始め、関係を持つようになり、少女は性に目覚めました。
 青年は激しく愛しましたが、少女は彼を愛していたわけではありませんでした。

 少女は言いました。「そうすべきだったの、義務のような感じだった」と。
 少女が彼に付いていくのは、彼がお金持ちだったから・・・

 1992年の映画「愛人」は、映像の美しさが、日本でも話題になりました。
 そして我々男どもは皆、主演のあの少女の魅力にやられてしまったのです。

 映画を見た後、私は小説を読みましたが、「ん?」という感じでした。
 好き勝手にしゃべっているような文体が、当時はとても読みにくかったです。

 現在から15歳へ、4歳へ、23歳へ、そしてまた15歳へ、また現在へ・・・
 話があっちこっちに飛んで、ちっとも前に進みません。

 リムジンはP28で登場するのに、 青年が車から降りるのはP52なのです。
 ようやく二人が出会ったら、また話があっちこっちへ飛んでいきます。

 何度もはぐらかされているうちに、テンションがすっかり下がりました。
 このような理由で、まだ若かった私は、この本を投げ出してしまったのです。

 今回「愛人」を買い直して、久しぶりに読み直してみました。
 そして、いろんな発見がありました。

 私はこの作品を、華僑の「愛人」となった少女の物語だと記憶していました。
 金持ちの世界に拒まれ、家族が崩壊したフランス娘の悲しみを描いたのだと。

 しかし今回は、白人娘の「愛人」となった青年の物語として読んでいました。
 傷ついたのはフランス娘ではなく、なんと、年上の青年の方だったのです!

 青年はひ弱で軟弱でした。彼の恋は絶望的で破滅的でした。
 少女には分かってもらえず、父親には許してもらえず、泣いてばかりいます。

 読んでいてこちらが恥ずかしくなるほど、青年のカッコ悪さは印象的でした。
 「愛人」は、哀れな男の物語だと私は思います。

 さて、仏領インドシナが舞台の他の作品に、「太平洋の防波堤」があります。
 池澤夏樹の世界文学全集に入っていますが、以前河出文庫から出ていました。


太平洋の防波堤 (河出文庫)

太平洋の防波堤 (河出文庫)

  • 作者: マルグリット デュラス
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1992/05
  • メディア: 文庫



 なお、あっちこっちに話が飛ぶ展開から、「ダロウェイ夫人」を連想しました。
 角川文庫版は少し読みにくかったです。古典新訳文庫版に期待しています。


ダロウェイ夫人 (光文社古典新訳文庫)

ダロウェイ夫人 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: バージニア ウルフ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/05/11
  • メディア: 文庫



 さいごに。(カファレル)

 ホワイトデイの日、ママさんにカファレルのチョコをあげました。
 昨年から彼女は、カファレルのジャンドゥーヤの大ファンなのです。

 娘には、ゴンチャロフの猫チョコをあげました。
 二人とも、とても喜んでくれて良かったです。 

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消しゴム [20世紀フランス文学]

 「消しゴム」 ロブ=グリエ作 中条省平訳 (光文社古典新訳文庫)


 殺人事件を解決するためにやってきた若き捜査官の、24時間を描いた物語です。
 新しい小説(ヌーヴォー・ロマン)の文学運動は、この作品から始まりました。

 長い間入手困難の作品でしたが、2013年に古典新訳文庫から出ました。
 1378円しますが、その価値はあります。また、解説がすばらしいです。


消しゴム (光文社古典新訳文庫)

消しゴム (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: アラン ロブ=グリエ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/08/07
  • メディア: 文庫



 特別捜査官ヴァラスは、殺人事件の解決のため、この街にやって来ました。
 殺されたのはデュポンという大学教授で、大富豪の中年男性です。

 しかし、肝心の死体は誰かによって、どこかへ持ち去られていました。
 おまけに、他殺なのか自殺なのかも、よくわかりません。

 ヴァラスは自分で推理を組み立て、街を歩き回って糸口を探しますが・・・
 曖昧な証言や偶然の出来事に翻弄され、やがて皮肉な結末に導かれ・・・

 私はこの作品を、探偵小説だと思っていました。
 だから、「序幕」を読んだ時点で仰天しました。

 始まってすぐ、主人公が動き出さないうちに、犯人が明かされているのです。
 犯人はガリナティ。ああ、終幕まであと400ページ近くあるというのに!

 特別捜査官として派遣されてきたのは、ヴァラスという若い男です。
 ヴァラスが町をさまよう姿は、人生をさまよう姿に似ています。

 街のあちこちを巡りながら、時間も前へ後へと行き来します。
 街の細部ははっきり見えるのに、全体像は靄がかかったように曖昧です。

 事件の全体像も、なかなかはっきり見えてきません。
 歩き回れば歩き回るほど、迷路に迷い込んでいくような感じがします。

 そして驚いたことに、最後まで真相はよく分からないのです。
 最後まで読んで、私もヴァラスと同じように途方にくれました。

 ヴァラスもこの物語も、まるで消しゴムのように擦り切れていくだけです。
 さんざん苦労した末に、待っていた結末は・・・

 この結末を、解説では「オイディプス王」と対比して、説明していました。
 どちらも「人間の自由意志に対する皮肉な運命の復讐のドラマ」だという。

 ところでヌーヴォー・ロマン作家の中には、ベケットやデュラスもいます。
 「ゴドーを待ちながら」や「愛人」などは、舞台や映画で知られています。


ゴドーを待ちながら (白水Uブックス)

ゴドーを待ちながら (白水Uブックス)

  • 作者: サミュエル ベケット
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2013/06/18
  • メディア: 新書



愛人 ラマン (河出文庫)

愛人 ラマン (河出文庫)

  • 作者: マルグリット デュラス
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1992/02/05
  • メディア: 文庫



 さいごに。(インフルさらに流行)

 とうとう娘のクラスでもインフルエンザが流行し始め、5人が休んでいます。
 今のところうちの娘は大丈夫のようですが、心配は絶えません。


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神々は渇く [20世紀フランス文学]

 「神々は渇く」 アナトール・フランス作 大塚幸男訳 (岩波文庫)


 共和国のために陪審員として働く青年が、時代の渦に巻き込まれ破滅する物語です。
 アナトール・フランスの晩年の作品で、代表作の一つです。

 岩波文庫から出ていますが、現在は品切れです。私は2010年に買いました。
 訳は1976年のもので、充分分かりやすく、活字も読みやすいです。


神々は渇く (岩波文庫 赤 543-3)

神々は渇く (岩波文庫 赤 543-3)

  • 作者: アナトール・フランス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1977/05/16
  • メディア: 文庫



 舞台は、フランス革命期の恐怖政治時代のパリです。
 主人公のエヴァリスト・ガムランは、貧しくてあまりぱっとしない画家でした。

 ところが、ある夫人のつてによって、革命裁判所の陪審員に任命されたのです。
 名誉ある地位と、立派な収入に、ガムランの母は喜びます。

 使命感に燃え、革命の推進に取り組むガムランでしたが・・・
 やがて時代のうねりは、容赦なく一個人をも巻き込んで・・・

 ミシュレの「フランス革命史」を読んでいたので、理解しやすかったです。
 この作品では、革命裁判所の陪審員の立場から、革命を見ることができました。

 次から次に、情け容赦なく、被告を断頭台に送り続ける革命裁判所。
 彼らは純粋で、正義感を持ち、使命感に燃えているので、余計にしまつが悪い。

 あのおぞましい時代を成り立たせていたのは、こういう平凡な善人たちでした。
 ここに、人民による革命の恐ろしさがあります。

 さて、私のお気に入りの登場人物は、ガムランの隣人のブロト老人です。
 もと貴族で、時代の趨勢を冷静に見抜いていて、時々予言的な言葉を吐きます。

 「わたしは考えれば考えるほど、共和国を救うために打ち建てられたこの裁判所が、
 却って共和国を破滅させるだろうと思うのです。」(P165)

 アナトール・フランスには、他に「シルヴェストル・ボナールの罪」があります。
 以前買いましたが、積ん読しているうちに、ほこりまみれになってしまいました。


シルヴェストル・ボナールの罪 (岩波文庫)

シルヴェストル・ボナールの罪 (岩波文庫)

  • 作者: アナトール フランス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1975/07/16
  • メディア: 文庫



 さいごに。(持久走練習)

 娘の小学校では、11月に持久走大会があります。
 今年は3年生に上がるので、700mから1100mになります。

 夜、町内を1キロほど、娘と一緒に走っています。
 一昨年は10位。昨年は12位。今年はまた10位以内を狙っています。

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生きている過去 [20世紀フランス文学]

 「生きている過去」 レニエ作 窪田般彌(はんや)訳 (岩波文庫)


 過去の世界に浸っている青年貴族が、祖先の恋を受け継ぐ幻想的な小説です。
 19世紀末に活躍した詩人レニエの代表作です。

 岩波文庫から1989年に出ています。
 訳は1965年のものの改訳ですが、読みやすかったです。


生きている過去 (岩波文庫)

生きている過去 (岩波文庫)

  • 作者: H. レニエ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1989/11/16
  • メディア: 文庫



 ジャン・ド・フラノワは、29歳の独身貴族で、美しい屋敷に住んでいます。
 過去を懐かしむ父とともに、だらだらとただ夢見るように生きています。

 ジャンには、ロオヴローという6歳年上の友人がいます。
 ロオヴローは18世紀を情熱的に愛し、カサノヴァを畏敬しています。

 あるときジャンは、ロオヴローに誘われて、イタリア旅行に出まし た。
 そしてジャンはある街で、突然デジャヴを体験したのです。

 ジャンとロオヴローが、ある僧院で見つけたものは・・・
 150年前に死んだ祖先もまた・・・

 とても美しい物語でした。現実の世界に幻想が、じわじわと忍び込みます。
 前世とか輪廻転生などの、東洋思想の影響が見られます。

 「われわれは自分自身のなかに生きて、やがて次々と死んでいくわけだが、そ
 の前に祖先の一人一人のなかで、すでに何回となく死んできたのではないか?」
 (P277)

 「たしかに生きているんです。ほんとに生きているんです。
 わたしたちのなかにあるものは死者たちの意志なのです。」(P352)

 結末は、いろいろと考えさせられます。
 ジャンは、狂っていたのか? それとも本当に祖先の意志だったのか?

 さて、作者レニエには「ヴェネチア風物誌」という本もあります。
 さすが、ヴェネチアを愛した作家。ぜひ文庫化してほしいです。


ヴェネチア風物誌

ヴェネチア風物誌

  • 作者: アンリ・ド レニエ
  • 出版社/メーカー: 沖積舎
  • 発売日: 2005/09/30
  • メディア: 単行本



 さいごに。(9年目の敗北)

 新築して9年目になりますが、これまでクーラー無しで頑張ってきました。
 ところが、忘れもしない7月20日。36度の猛暑にとうとうギブアップ。

 その日の午後、大型家電店で、とうとうクーラーを購入してしまいました。
 9年目にして負けてしまった。とはいえ、取り付けの28日が楽しみです。


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カリオストロ伯爵夫人 [20世紀フランス文学]

 「カリオストロ伯爵夫人」 モーリス・ルブラン作 平岡敦訳 (ハヤカワ文庫)


 ある修道士によって隠された莫大な財宝を巡り、若き日のルパンが活躍する小説です。
 名作アニメ「ルパン三世・カリオストロの城」に関連する作品です。

 ハヤカワミステリ文庫から出ています。平岡訳は新しいので、分かりやすかったです。


カリオストロ伯爵夫人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

カリオストロ伯爵夫人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: モーリス・ルブラン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2005/08/09
  • メディア: 文庫



 創元推理文庫からは、続編の「カリオストロの復讐」も出ています。


カリオストロ伯爵夫人 (創元推理文庫 107-8 アルセーヌ・リュパン・シリーズ)

カリオストロ伯爵夫人 (創元推理文庫 107-8 アルセーヌ・リュパン・シリーズ)

  • 作者: モーリス・ルブラン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1973/01/26
  • メディア: 文庫



カリオストロの復讐 (創元推理文庫 107-15 アルセーヌ・リュパン・シリーズ)

カリオストロの復讐 (創元推理文庫 107-15 アルセーヌ・リュパン・シリーズ)

  • 作者: モーリス・ルブラン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1973/06/22
  • メディア: 文庫



 主人公はラウールという20歳の青年。実は若き日のアルセーヌ・ルパンです。
 ラウージは、デティグ男爵の一人娘クラリスと、結婚の約束をしていました。

 ある日ラウールは、男爵の屋敷で、謎の美女が死刑宣告を受けるのを目撃しました。
 美女は、カリオストロ伯爵夫人、ジョ ゼフィーヌ。100年前から生きていたという。

 その美しさに惹かれたラウールは、女を救出しますが・・・
 この陰謀の陰に、ある莫大な財宝の謎があるのを知り・・・

 この物語の面白さは、謎に満ちたジョゼフィーヌの、妖艶な魅力でしょう。
 ラウール同様、読者もいつのまにか、彼女のとりこになってしまっています。

 ジョゼフィーヌの正体は? ラウールとジョゼフィーヌの愛はどうなるのか?
 フランス修道院の財宝とは? 誰がその財宝を手に入れるのか?

 様々な興味を引きながら、物語は軽快に進行します。
 とてもよくできたエンターテイメント小説です。

 ただし、ジョゼフィーヌの人間性が、一貫していないような気もします。
 非情で冷酷かと思うと、女らしく弱々しい。失神して倒れちゃったりするし。

 さて、「ルパン三世・カリオストロの城」が、この作品をヒントにしたことは有名。
 原作のクラリスは脇役でしたが、ルパン三世のクラリスは重要な役割を果たします。


ルパン三世 カリオストロの城 (集英社文庫 コバルト・シリーズ 107-A)

ルパン三世 カリオストロの城 (集英社文庫 コバルト・シリーズ 107-A)

  • 作者: 山崎 晴哉
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1982/08
  • メディア: 文庫



 余談ですが、カリオストロ伯爵は、実在の人物です。
 「山師カリオストロの大冒険」という評伝が出ています。


山師カリオストロの大冒険 (岩波現代文庫)

山師カリオストロの大冒険 (岩波現代文庫)

  • 作者: 種村 季弘
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2003/03/14
  • メディア: 文庫



 さいごに。(ころころ変わる方針は現場の混乱を招く)

 職場のパソコンに不具合があり、専門家に修復してもらうのに2時間かかりました。
 ワードを開くと、全てがフリーズするという、たちの悪い症状でした。

 わが社でワードをやめたのは3年ほど前。以後リブレオフィスを使っていました。
 ところが方針変更。突如全員にワードが支給され、たちまちこの不具合です。

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星の王子さま [20世紀フランス文学]

 「星の王子さま」 サン=テグジュペリ作 河野万里子訳 (新潮文庫)


 サハラ砂漠に不時着した「僕」と、星の王子さまとの、出会いと別れの物語です。
 長年にわたって売れ続け、熱狂的なファンも多い作品です。

 現在、新潮文庫、集英社文庫、古典新訳文庫ほか、多くの翻訳が出ています。
 私は新潮文庫版を読みましたが、どの訳も最近のものなので読みやすいです。


星の王子さま (新潮文庫)

星の王子さま (新潮文庫)

  • 作者: サン=テグジュペリ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/03
  • メディア: 文庫



星の王子さま (集英社文庫)

星の王子さま (集英社文庫)

  • 作者: Antoine de Saint Exup´ery
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2005/08/26
  • メディア: Perfect



ちいさな王子 (光文社古典新訳文庫)

ちいさな王子 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: サン=テグジュペリ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/09/07
  • メディア: 文庫



 操縦士の「僕」は、あるとき飛行機の故障で、サハラ砂漠に不時着しました。
 見渡す限り誰もいない、広大な砂漠のまん中で、ひとり飛行機を修理する「僕」。

 そこへ、輝くばかりにかわいい男の子がやってきて・・・
 その子は、ある星から来たと言うが・・・

 子供向けの童話ですが、大人が読むのにふさわしい作品です。
 内容はもちろん、随所に散りばめられた名言が、この作品の大きな魅力です。

 「ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。
 いちばん大切なことは、目に見えない」(P108)

 「星々が美しいのは、ここからは見えない花が、
 どこかで一輪咲いているからだね・・・」(P115)

 薄っぺらい本ですが、素晴らしい言葉にあふれています。
 「星の王子さま」から人生を学んだ、という人も多いです。

 また、かわいらしい挿絵がたくさん詰まっています。
 読んでいる間は、星の王子さまの世界に、どっぷりとつかることができます。

 ところで、箱根に「星の王子さまミュージアム」があります。
 本当に素敵な空間で、多くのファンが(ほとんどカップルで)訪れます。

 まだ出来たばかりの頃、とても勇気を出して、私は男一人で入館しました。
 博物館というよりテーマパークで、男一人で行くのはもったいなかったです。

 お土産に、王子さまの置き物を、ついつい買ってしまいました。懐かしい。
 今はTBSが運営しているようです。いつか、家族で行きたいなあ。

 さいごに。(念願の再放送)

 NHKで、「美少女戦士セーラームーン」の再放送がやっています。
 1992年から始まって、一大ブームになったTVアニメです。

 娘にとって、現在最も楽しみにしている番組で、毎回録画して見ています。
 NHKでの再放送ということは、作品として評価されているということですね。

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山師トマ [20世紀フランス文学]

 「山師トマ」 コクトー作 河盛好蔵訳 (角川文庫)


 自分を将軍の甥だと偽り、無邪気に戦場を駆け巡る、山師トムの物語です。
 「恐るべき子供たち」と並ぶ、コクトーの代表作です。

 角川文庫版は現在品切れ。訳はなんと1932年(昭和7年!)のものでした。
 1990年のリバイバル再販で買いましたが、訳も活字も読みにくかったです。


山師トマ (角川文庫クラシックス)

山師トマ (角川文庫クラシックス)

  • 作者: ジャン・コクトー
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1955/07
  • メディア: 文庫



 ある日、戦時の仮説病院に、一人の若い兵士が現れました。
 彼は、かの有名なファントネー将軍の甥であると名乗りました。

 高貴な家柄と陽気な性格で、誰からも愛されたトマ。
 戦場では活躍し、社交界の寵児となりましたが・・・

 私は最初タイトルを見たとき、人を騙す悪い男の物語かと思いました。
 しかし、トマは悪党ではありません。むしろ純粋な心を持っています。

 トマは、ただ無邪気にファントネーの甥を、演じているだけなのです。
 そして、演じているうちに、自分と役柄の区別がつかなくなってしまいます。

 そうやって、最後まで演じきったトマ・・・
 そして、印象的な結末・・・

 私には「恐るべき子供たち」よりも、「山師トマ」の方が面白かったです。
 「恐るべき子供たち」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-06-23

 ただし、この本の訳はひどいです。(もしかしたら、原文のせい?)
 薄っぺらい本なので、どなたか、新訳を出してもらえないでしょうか。

 さいごに。(茶の山)

 わが家恒例のGW登山は、茶摘みのこの時期、今年はお茶の山「粟ケ岳」へ。
 地元では有名な低山で、遠くから「茶」の字が見えます。

 天気が良くて、娘もうちの両親も、のんびりゆっくりと登りました。
 お茶の香りを楽しみながら、往復3時間(普通は2時間)の山道でした。

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