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野火 [日本の近代文学]

 「野火」 大岡昇平 (新潮文庫)


 肺病で中隊から見捨てられた田村の、レイテ島での極限状況を描いた小説です。
 自身の体験をもとに書いた、大岡昇平の代表作で、戦争小説の永遠の名作です。


野火 (新潮文庫)

野火 (新潮文庫)

  • 作者: 大岡 昇平
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1954/05/12
  • メディア: 文庫



 肺病の田村一等兵は、芋を六本与えられただけで、中隊を追い出されました。
 彼が受けた命令は、病院に引き返し、入院できなければ自決しろというものです。

 病院の前では、同じように隊から追われた多くの兵たちが、座り込んでいました。
 そこで、顔なじみの安田と永松に再会して・・・翌朝、砲声で目覚めると・・・

 私がこの小説を初めて読んだのは、大学時代です。
 二十代の私は、この作品を、戦争小説というよりも、冒険小説として読みました。

 先月「100分de名著」で取り上げられたのをきっかけに、久々に読み直しました。
 五十になった私は、この小説を、哲学小説として読んだような気がします。

 死の意識と自由、自然の生命力、戦場経済、十字架、発作的殺人、銃、死の観念、
 ある夜に見た火、聞こえてきた声、万物に見られている感覚、人肉食、神、狂気。

 本当に、様々な場面で、様々なことを、考えさせられる小説でした。
 中でも特に、印象に残っているのが、ある夜に見た動く火の場面です。

 「ある夜、火は野に動いた。(中略)人の通るはずのない湿原を貫いて、提灯ほど
 の高さで、揺れながら近づいて来た。/私の方へ、どんどん迫って来るように思わ
 れた。」(P147)

 この「火」は何だったのか? タイトル「野火」とどんな関係があるのか?
 直後、人肉を食べたい発作に襲われることから、大事な場面だと思うのですが。
 (「100分de名著」でも、島田雅彦が問題提起していました。)

 「野火」には「野焼きの火」以外にも、「突如出現する怪火」の意味もあります。
 この「火」は、ヒトダマなのか? 万物または神による、なんらかの合図なのか?

 この問題に、自分なりの解答ができた時、この小説がぐっと近くなると思います。
 が、現在の私には、まだよく分かりません。

 さて、「野火」のあとは「レイテ戦記」を読む、というパターンがあります。
 しかし、この作品は長いし、内容的にも重たいので、私は読む気がしません。

レイテ戦記 (上巻) (中公文庫)

レイテ戦記 (上巻) (中公文庫)

  • 作者: 大岡 昇平
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1974/09/10
  • メディア: 文庫



 「俘虜記」も、戦争文学で、大岡の代表作です。
 「野火」の感動が残っているうちに読んでおきたいです。

俘虜記 (新潮文庫)

俘虜記 (新潮文庫)

  • 作者: 大岡 昇平
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1967/08/14
  • メディア: 文庫



 さらに、「武蔵野夫人」も読みたいです。戦争文学ではありません。
 スタンダールの手法を意識した作品だそうです。

武蔵野夫人 (新潮文庫)

武蔵野夫人 (新潮文庫)

  • 作者: 大岡 昇平
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1953/06/09
  • メディア: 文庫



 さいごに。(欲しいものが無いという不幸)

 今年も、ひとり娘の誕生日が来ました。11歳になります。びっくりです。
 このブログを始めた頃、娘はまだ3歳でした。

 娘に「プレゼントは何がいいか」と聞いたところ、「特に無い」という返事。
 欲しいものが無いというのは、物に恵まれた時代特有の不幸かもしれません。

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