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とりかえばや物語 [日本の古典文学]

 「とりかえばや物語」 田辺聖子訳 (文春文庫)


 男性性の強い女子と、女性性の強い男子の、苦悩とその克服を描いた長編小説です。 
 12世紀半ばに成立した物語で、内容の珍奇さから「変態的」と評されたりもします。

 文春文庫から田辺聖子訳が出ています。若者向けの、軽快で読みやすい訳です。
 便宜上、主な登場人物に「春風」「秋月」「夏雲」「冬日」という名を与えています。


とりかえばや物語 (文春文庫 た 3-51)

とりかえばや物語 (文春文庫 た 3-51)

  • 作者: 田辺 聖子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/10/09
  • メディア: 文庫



 左大臣には、顔が似ていて性格の違う二児がいました。「春風」と「秋月」です。
 父の左大臣はいつも思っています、二人を「とりかえばや(取り替えたい)」と。

 妹の春風は快活で才能豊かで、男子として生きることを強く望んでいました。
 彼女は元服し、官位をもらい、宮廷に出仕して、若君としての人生を歩み始めます。

 兄の秋月は内気で世間に出たがらず、女子として生きることを強く望んでいました。
 彼は後宮に入り、女一宮の話し相手となり、姫君としての人生を歩み始めますが・・・

 平安時代に、こんなに面白くて刺激的な作品が書かれていたのかと、私は驚きました。
 しかし内容が内容なので、かつてはこの物語を読むことはできなかったのだそうです。

 物語の前半は、春風と秋月の、現代でいう性同一性障害の苦悩が描かれています。
 しかもそれを矯正するのではなく、女を男として、男を女として育ててしまうのです。

 ここに、この物語の新しさと珍しさがあります。
 当時この内容は、たいへんなインパクトだったのではないかと思います。

 しかし、この物語の価値はそれだけではありません。
 随所から感じられる男社会への批判が、この物語に奥深さを与えているようです。

 男として振る舞っていた春風は、とても生き生きしていました。
 しかし正体を見破られ、一旦男に征服されてしまうと、急に弱々しくなるのです。

 「あれほど誇りにみち希望にあふれ、人々に讃美されていたわたしが、(中略)
 こんな情けないあつかいをされ、男が通ってくるのをじっと待つだけ、というよ
 うな暮らしに埋もれ果てていいものか。」(P150)

 この辺に、作者の言いたかったことが、隠れているような気がします。
 訳者あとがきにも、女の生き方が問われている話だ、という記述がありました。

 ついでながら、春風に苦痛を与えた「夏雲」は、物語では滑稽な役回りの脇役です。
 あさはかな男ですが、そこに男の悲哀も感じられて、私は気に入ってしまいました。

 さて、この物語は現代でも様々にアレンジされています。
 氷室冴子の「ざ・ちぇんじ!」は、その中でも最も有名な作品です。


ざ・ちえんじ 前編―新釈とりかえばや物語 (1) (集英社文庫―コバルトシリーズ 52-J)

ざ・ちえんじ 前編―新釈とりかえばや物語 (1) (集英社文庫―コバルトシリーズ 52-J)

  • 作者: 氷室 冴子
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1983/01
  • メディア: 文庫



 文春文庫からは、同じ田辺聖子訳の古典「おちくぼ物語」が出ています。
 すでに買ってあるので、この機会に読みたいです。


おちくぼ物語 (文春文庫)

おちくぼ物語 (文春文庫)

  • 作者: 田辺 聖子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/04/10
  • メディア: 文庫



 さいごに。(修学旅行の脱ディズニー)

 娘が嘆いていました。「修学旅行のコースからディズニーランドが外された」と。
 理由は意外なことに、「つまらなかった、という感想が多い」ということでした!

 人ごみに酔う、男子がはぐれる、どこへ行っても行列、入れたのは2つか3つ・・・
 「疲れただけで楽しめなかった」という。それじゃ確かに高い金を払う意味がない。

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