So-net無料ブログ作成

カルメン [19世紀フランス文学]

 「カルメン」 メリメ作 堀口大学訳 (新潮文庫)

 情熱の国スペインで、絞首刑を目前にしたドン・ホセが、
 美しいジプシーの女カルメンとの、愛と破滅を語ります。
 ビゼーのオペラとしても有名です。

 悪い仲間と交わり、犯罪に手を染め、大胆不敵な女カルメン。
 そのエキゾチックな魅力は、男達を酔わせ、狂わせ、破滅へ導きます。

 アカシアの花を、口にくわえて現れたカルメンは、
 その花を、ホセの眉間にぶつけます。足元に落ちた花を、
 ポケットにしまい、まじめな伍長ホセの、堕落が始まりました。
 この直後にホセは、カルメンを監獄から、逃がしてしまいました。

 「あんたは悪魔に出会ったんですもの、そうよ、悪魔にね。」
 カルメンにそう言われても、ホセはすでに後戻りできません。
 彼女の頼みで密輸入者を見逃し、嫉妬から上官を殺し、
 とうとうカルメンたちの、盗賊仲間に加わってしまいます。

 ホセには、カルメンに振り回された男、というイメージがあります。
 しかし、それは違います。カルメンは、自分に忠実に生きていただけです。
 自由に生きて、死ぬ時には死ぬ。これこそ本当の意気地というものです。
 そこに、悪女カルメンの魅力があるのです。

 ホセは、カルメンの夫で盗賊の首領ガルシアを殺し、
 最後には、カルメンさえをも、殺してしまいます。
 しかし、カルメンは、最後まで動じませんでした。
 「わたしはあんたに殺される運命さ。でもそれがどうしたって言うの?」

 ホセに、ついて来てくれと言われて、カルメンはきっぱり言います。
 「殺される所へならついてゆきますよ。
 でもあんたといっしょに暮らす気はもうないの」

 ホセが殺そうとした時にさえ、こう言います。
 「あんたはわたしのロム(夫)だから、自分のロミ(妻)を殺す権利があるわ。
 だけどカルメンはいつだって自由な女よ。」

 カルメンは、運命に対して、最後まで誠実でした。
 運命に身をまかせて、逃げも隠れもせず、ホセに殺されます。
 カルメンの最期は、脳裡に強烈な印象を残し、消えることがありません。

 (カルメンに比べて、マノンがつまらない最期を迎えたのは、
 マノンがつまらない女に、なったからだと思います。
 マノンはグリューに対して、誠実になったかもしれませんが、
 人生に対しては、誠実ではなくなり、普通の女に成り下がりました。)

 さて、「カルメン」は、新潮文庫と岩波文庫で読むことができます。
 私の本棚には、堀口大學訳の新潮文庫版が並んでいます。
 数年前に出た改版で、表紙が美しく、活字も読みやすかったです。

カルメン (新潮文庫 (メ-1-1))
 新潮文庫版には、ほか5作品が入っています。
 その中では、「マテオ・ファルコネ」が、
 とても良かったです。
 人を裏切った息子を、父親が銃殺するまでを、
 淡々と描いています。



 岩波文庫版は、「カルメン」だけ読みたい方には、良いと思います。
 ただし、終わり近くで、「それはよござんす」と言わせています。(P108)
 このカルメンらしくない言葉遣いで、魅力が半減。惜しい。

カルメン (岩波文庫 赤 534-3)


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0