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とりかえばや物語 [日本の古典文学]

 「とりかえばや物語」 田辺聖子訳 (文春文庫)


 男性性の強い女子と、女性性の強い男子の、苦悩とその克服を描いた長編小説です。 
 12世紀半ばに成立した物語で、内容の珍奇さから「変態的」と評されたりもします。

 文春文庫から田辺聖子訳が出ています。若者向けの、軽快で読みやすい訳です。
 便宜上、主な登場人物に「春風」「秋月」「夏雲」「冬日」という名を与えています。


とりかえばや物語 (文春文庫 た 3-51)

とりかえばや物語 (文春文庫 た 3-51)

  • 作者: 田辺 聖子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/10/09
  • メディア: 文庫



 左大臣には、顔が似ていて性格の違う二児がいました。「春風」と「秋月」です。
 父の左大臣はいつも思っています、二人を「とりかえばや(取り替えたい)」と。

 妹の春風は快活で才能豊かで、男子として生きることを強く望んでいました。
 彼女は元服し、官位をもらい、宮廷に出仕して、若君としての人生を歩み始めます。

 兄の秋月は内気で世間に出たがらず、女子として生きることを強く望んでいました。
 彼は後宮に入り、女一宮の話し相手となり、姫君としての人生を歩み始めますが・・・

 平安時代に、こんなに面白くて刺激的な作品が書かれていたのかと、私は驚きました。
 しかし内容が内容なので、かつてはこの物語を読むことはできなかったのだそうです。

 物語の前半は、春風と秋月の、現代でいう性同一性障害の苦悩が描かれています。
 しかもそれを矯正するのではなく、女を男として、男を女として育ててしまうのです。

 ここに、この物語の新しさと珍しさがあります。
 当時この内容は、たいへんなインパクトだったのではないかと思います。

 しかし、この物語の価値はそれだけではありません。
 随所から感じられる男社会への批判が、この物語に奥深さを与えているようです。

 男として振る舞っていた春風は、とても生き生きしていました。
 しかし正体を見破られ、一旦男に征服されてしまうと、急に弱々しくなるのです。

 「あれほど誇りにみち希望にあふれ、人々に讃美されていたわたしが、(中略)
 こんな情けないあつかいをされ、男が通ってくるのをじっと待つだけ、というよ
 うな暮らしに埋もれ果てていいものか。」(P150)

 この辺に、作者の言いたかったことが、隠れているような気がします。
 訳者あとがきにも、女の生き方が問われている話だ、という記述がありました。

 ついでながら、春風に苦痛を与えた「夏雲」は、物語では滑稽な役回りの脇役です。
 あさはかな男ですが、そこに男の悲哀も感じられて、私は気に入ってしまいました。

 さて、この物語は現代でも様々にアレンジされています。
 氷室冴子の「ざ・ちぇんじ!」は、その中でも最も有名な作品です。


ざ・ちえんじ 前編―新釈とりかえばや物語 (1) (集英社文庫―コバルトシリーズ 52-J)

ざ・ちえんじ 前編―新釈とりかえばや物語 (1) (集英社文庫―コバルトシリーズ 52-J)

  • 作者: 氷室 冴子
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1983/01
  • メディア: 文庫



 文春文庫からは、同じ田辺聖子訳の古典「おちくぼ物語」が出ています。
 すでに買ってあるので、この機会に読みたいです。


おちくぼ物語 (文春文庫)

おちくぼ物語 (文春文庫)

  • 作者: 田辺 聖子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/04/10
  • メディア: 文庫



 さいごに。(修学旅行の脱ディズニー)

 娘が嘆いていました。「修学旅行のコースからディズニーランドが外された」と。
 理由は意外なことに、「つまらなかった、という感想が多い」ということでした!

 人ごみに酔う、男子がはぐれる、どこへ行っても行列、入れたのは2つか3つ・・・
 「疲れただけで楽しめなかった」という。それじゃ確かに高い金を払う意味がない。

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君の名は。 [日本の現代文学]

 「小説 君の名は。」 新海誠 (角川文庫)


 東京の男子「瀧」と田舎の女子「三葉」の、夢の中の入れ替わりをめぐる物語です。
 説明は不要でしょう。2016年に大ヒットした同名のアニメ映画の小説版です。


小説 君の名は。 (角川文庫)

小説 君の名は。 (角川文庫)

  • 作者: 新海 誠
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/メディアファクトリー
  • 発売日: 2016/06/18
  • メディア: 文庫



 東京の男子高校生「瀧(たき)」は、ある朝、田舎の女子高校生になっていました。
 田舎の女子高校生「三葉(みつは)」は、東京の男子高校生になっていました。

 最初は、これを夢だと思っていますが、やがて入れ替わっていることに気付きます。
 そしてスマホに、お互いにメモを残して、情報を交換し合いますが・・・

 突然入れ替わりが途絶えたのはなぜか?
 会おうとしても会えないのはどうしてか?

 彗星の接近とともに、しだいに明かされる驚愕の真実!
 切ない展開! そして、感動の結末!

 この物語の魅力の一つは、神事が彗星到来に関わるというアイディアにあります。
 時空を超えた壮大な話に、私はどんどん引き込まれていきました。

 そして、もう一つの魅力は、新海誠特有の切なさにあると思います。
 胸を優しく締め付けられるような切なさに、いつまでも包まれていたくなります。

 「世界がこれほどまでに酷い場所ならば、俺はこの寂しさだけを携えて、
 それでも全身全霊で生き続けてみせる。」(P207)・・・いいなあ。

 ところでこの切なさは、「記憶の喪失」と深く関わっています。
 なぜ、記憶が無くなったのか? なぜ、「君の名」を忘れてしまったのか?

 すでに多くの人が、ネットで解説しています。
 私は、HP「はにはにわ。」の【君の名はネタバレ解説】を読んで納得しました。

 小説も映画も名作です。(と、映画を見ていないくせに断言してしまう。)
 ぜひ映画も見たいです。(と、今さらながら思ってしまう。)

 ところで「君の名は。」は、古典「とりかへばや物語」からヒントを得たそうです。
 文春文庫の田辺聖子訳を買っておきながら、まだ読んでいませんでした。


とりかえばや物語 (文春文庫 た 3-51)

とりかえばや物語 (文春文庫 た 3-51)

  • 作者: 田辺 聖子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/10/09
  • メディア: 文庫



 さいごに。(ダイヤモンドゲームが得意)

 うちでダイヤモンドゲームがブームです。三人家族なのでちょうどいいゲームです。
 適当にコマを動かしているだけなのに、不思議といつも私が勝つのです。

 女子よりも男子の方が、空間把握能力が高いからか?(相手は妻と娘なので)
 おそらく、まだ二人がそれほどゲームに慣れていないだけなのだと思いますが・・・


キングダイヤモンド

キングダイヤモンド

  • 出版社/メーカー: ハナヤマ
  • メディア: おもちゃ&ホビー



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たんぽぽ娘 [20世紀アメリカ文学]

 「たんぽぽ娘」 R・F・ヤング作 伊藤典夫編 (河出文庫)


 タイムマシンものの傑作「たんぽぽ娘」など、全13編収録の短編集です。
 日本では長い間絶版だったため、幻の名作として知られていました。


たんぽぽ娘 (河出文庫)

たんぽぽ娘 (河出文庫)

  • 作者: ロバート・F・ヤング
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2015/01/07
  • メディア: 文庫



 『たんぽぽ娘』はわずか20ページほどですが、とても印象に残る作品です。
 「ビブリア古書堂の事件手帖」で紹介されて、改めて注目を集めました。

 ある日44歳のマークは、丘の上でたんぽぽ色の髪の少女に出会いました。
 「わたし、いまから二百四十年後のコーヴ・シティから来たんです」

 「タイムマシンでこちらに来たわけか」と、マークは話を合わせました。
 そして、この風変わりな少女と会うたびに、 どんどん惹かれていきました。

 数日後、少女が去りました。やがて妻と二人の生活に戻りましたが・・・
 妻の不安の原因は? たんぽぽ娘はどこへ?・・・そして、感動の結末!

 『河を下る旅』もまた、短いながら印象的な作品です。
 イカダで河を下っていたファレルは、ニコルズという女性と出会いました。

 「おそらく現実には人間が知らない無数の相があるんだ。
 いまぼくらがいるのも、そういう相のひとつだろうね・・・」(P33)

 無数の相とはどういうことか? 彼らのいる河は何なのか?
 読者はしだいに、驚くべき状況を理解していきます。

 『荒寥の地より』は、ヤングの遺作となった作品です。
 このような重たい作品を、最後に残したところに、作者の悲哀を感じます。

 「人類の問題というのは、彼らがまったく見当違いの場所で奇跡をさがし求め
 ているせいではないんでしょうかね。奇跡が目と鼻の先で起こっているのに、
 それに気づこうともしないのです」(P127)という言葉はイミシンです。

 以上、『たんぽぽ娘』『河を下る旅』『荒寥の地より』が、マイベスト3です。
 以下、『主従問題』『スターファインダー』『ジャンヌの弓』の3作が次点です。

 『主従問題』は、メビウス宇宙という異色な宇宙論を題材にしています。
 「メビウス宇宙においては、地球とシリウス21は同時存在していることになる」?

 タイトルの意味がなかなか分からないのですが、最後にようやく理解できます。
 しかし、結末のどんでん返しは必要だろうか?

 ほか、『スターファインダー』と『ジャンヌの弓』は、読みごたえがありました。
 『スターファインダー』に出てくる「宇宙クジラ」は、面白いアイディアです。

 さいごに。(熱心に読んでいたのは)

 娘が、漢字の読み方をママに聞きながら、10分以上も新聞を読んでいました。
 読んでいたのはテレビ番組欄。そういうページはいつまでも飽きないらしい。

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太平洋の防波堤 [20世紀フランス文学]

 「太平洋の防波堤」 デュラス作 田中倫郎訳 (河出文庫)


 仏領インドシナで、海水に浸る土地を買わされた一家3人の苦難を描いた物語です。
 初期の作品でとても評価が高く、のちにその一部が「愛人」へと受け継がれました。

 かつて出ていた河出文庫版は、訳が分かりやすかったのですが、現在は絶版です。
 河出書房の世界文学全集にも、「愛人」とともに収録されています。


太平洋の防波堤 (河出文庫)

太平洋の防波堤 (河出文庫)

  • 作者: マルグリット デュラス
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1992/05
  • メディア: 文庫



太平洋の防波堤/愛人 ラマン/悲しみよ こんにちは (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-4)

太平洋の防波堤/愛人 ラマン/悲しみよ こんにちは (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-4)

  • 作者: フランソワーズ・サガン
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2008/03/11
  • メディア: 単行本



 母は、息子と娘を育てながら長年必死に働き、やっと払い下げ地を手に入れました。
 しかしその土地は、夏に高潮で浸水するため、全く耕作できない土地だったのです。

 母は高潮を防ぐため、土地の人と協力して、長大な防波堤を築き上げました。
 ところが高潮によって、防波堤も彼らの希望も、崩れ去ってしまいました。

 17歳のシュザンヌは、いつかこのみじめな境遇から逃れることを夢見ています。
 ある夜、一家で街の酒場に出たとき、見慣れぬリムジンがとまっていて・・・

 第一部の中心は、ヒロインのシュザンヌと、ムッシュウ・ジョーとの恋愛事件です。
 私は、大富豪の青年ジョーに感情移入して読みましたが、実に切なかったです。

 「金があるからって幸福になれるわけではありませんよ」(P35)
 ちなみに「愛人」では、彼は華僑ということになっていました。

 さて、私の目的は第一部を読むことだったのですが、面白かったのは第二部でした。
 第二部の中心は、兄のジョゼフと富豪の女リーナにまつわる出来事です。

 ダイヤを売るため街に出てきた一家でしたが、子供たちには別の影響がありました。
 シュザンヌはカルメンによって、ジョゼフはリーナによって、自我に目覚めます。

 私は第二部では、ジョゼフに感情移入しながら読んでいました。
 ジョゼフが自分の経験を語る部分は、とても印象に残りました。

 「重い荷物を足で引きずってあくせくすることにしかむかない人間ってのもいる
 もんなんだよ、いつも同じ重荷をさ。それを引っ張ってないと三歩も歩けなくな
 っちゃうこともある・・・」(P210)

 きっとそれは、自分の母のことであり、また自分のことでもあったのだと思います。
 のち にジョゼフは、その重い荷物をすべて投げ捨てて・・・

 母は防波堤で土地を守ろうと必死でしたが、その土地は子供たちを縛っていました。
 もし防波堤が決壊していなかったら、子供たちは解放されなかったかもしれません。

 太平洋の防波堤は、母の執念の象徴であり、徒労の象徴でもあります。
 そして防波堤は母自身でもあって、子供たちはそれを突き破る必要があったのです。

 さて、私は「愛人(ラマン)」を読んだついでに、この作品に立ち寄りました。
 しかし、「太平洋の防波堤」の方が読みやすく、私的にははるかに面白かったです。

 さいごに。(バレンタインもホワイトデイも)

 バレンタインデイの前に、娘はママといっしょに、友チョコを手作りしていました。
 ホワイトデイの前にも、娘はママといっしょに、友チョコを手作りしていました。

 こちらがあげてないのに、友チョコをくれた友達が何人もいたから、ということです。
 バレンタインデイも、ホワイトデイも、ママさんは大忙しでした。

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愛人(ラマン) [20世紀フランス文学]

 「愛人 ラマン」 マルグリット・デュラス作 清水徹訳 (河出文庫)


 仏領インドシナにおける、貧しい白人の少女と華僑の青年との愛の物語です。
 1984年に出た自伝的小説で、映画が1992年に公開されて話題になりました。

 河出文庫から出ています。口絵写真が付いていて参考になります。
 話があっちこっちに飛ぶので、少し読みにくかったです。


愛人 ラマン (河出文庫)

愛人 ラマン (河出文庫)

  • 作者: マルグリット デュラス
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1992/02/05
  • メディア: 文庫



 少女は、仏領インドシナで、母と二人の兄と一緒に暮らしていました。
 15歳半のある日、メコン川の渡し場で、華僑の金持ちの青年と出会いました。

 二人は付き合い始め、関係を持つようになり、少女は性に目覚めました。
 青年は激しく愛しましたが、少女は彼を愛していたわけではありませんでした。

 少女は言いました。「そうすべきだったの、義務のような感じだった」と。
 少女が彼に付いていくのは、彼がお金持ちだったから・・・

 1992年の映画「愛人」は、映像の美しさが、日本でも話題になりました。
 そして我々男どもは皆、主演のあの少女の魅力にやられてしまったのです。

 映画を見た後、私は小説を読みましたが、「ん?」という感じでした。
 好き勝手にしゃべっているような文体が、当時はとても読みにくかったです。

 現在から15歳へ、4歳へ、23歳へ、そしてまた15歳へ、また現在へ・・・
 話があっちこっちに飛んで、ちっとも前に進みません。

 リムジンはP28で登場するのに、 青年が車から降りるのはP52なのです。
 ようやく二人が出会ったら、また話があっちこっちへ飛んでいきます。

 何度もはぐらかされているうちに、テンションがすっかり下がりました。
 このような理由で、まだ若かった私は、この本を投げ出してしまったのです。

 今回「愛人」を買い直して、久しぶりに読み直してみました。
 そして、いろんな発見がありました。

 私はこの作品を、華僑の「愛人」となった少女の物語だと記憶していました。
 金持ちの世界に拒まれ、家族が崩壊したフランス娘の悲しみを描いたのだと。

 しかし今回は、白人娘の「愛人」となった青年の物語として読んでいました。
 傷ついたのはフランス娘ではなく、なんと、年上の青年の方だったのです!

 青年はひ弱で軟弱でした。彼の恋は絶望的で破滅的でした。
 少女には分かってもらえず、父親には許してもらえず、泣いてばかりいます。

 読んでいてこちらが恥ずかしくなるほど、青年のカッコ悪さは印象的でした。
 「愛人」は、哀れな男の物語だと私は思います。

 さて、仏領インドシナが舞台の他の作品に、「太平洋の防波堤」があります。
 池澤夏樹の世界文学全集に入っていますが、以前河出文庫から出ていました。


太平洋の防波堤 (河出文庫)

太平洋の防波堤 (河出文庫)

  • 作者: マルグリット デュラス
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 1992/05
  • メディア: 文庫



 なお、あっちこっちに話が飛ぶ展開から、「ダロウェイ夫人」を連想しました。
 角川文庫版は少し読みにくかったです。古典新訳文庫版に期待しています。


ダロウェイ夫人 (光文社古典新訳文庫)

ダロウェイ夫人 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: バージニア ウルフ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/05/11
  • メディア: 文庫



 さいごに。(カファレル)

 ホワイトデイの日、ママさんにカファレルのチョコをあげました。
 昨年から彼女は、カファレルのジャンドゥーヤの大ファンなのです。

 娘には、ゴンチャロフの猫チョコをあげました。
 二人とも、とても喜んでくれて良かったです。 

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美亜へ贈る真珠 [日本の現代文学]

 「美亜へ贈る真珠」 梶尾真治 (ハヤカワ文庫)


 「時間と恋愛」をテーマにしたSF作品の原点となった、全8編の短編集です。
 「君の名は。」等で注目される「時尼に関する覚え書」が、収録されています。

 昨年2016年に話題になったため、ハヤカワ文庫から新版が出ました。
 長い間文庫では読めなかった作品ばかりなので、とても嬉しいです。


美亜へ贈る真珠 〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

美亜へ贈る真珠 〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 梶尾真治
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/12/20
  • メディア: 文庫



 『時尼(じにぃ)に関する覚え書』は、出会うたびに若返る女性を描いた物語です。
 保仁(やすひと)は、会うたびに若返る時尼に、どんどん惹かれていき・・・

 「時尼」とは何者か? 「そときびと」とは何か?
 保仁と時尼には、いったいどんなつながりがあったのか?

 わずか40ページ足らずの中に、驚きと感動がぎゅっと詰まっています。
 今後も多くの作品に影響を与え続ける、古典的な傑作だと思います。

 「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」のアイディアが、全て含まれています。
 この作品を読んだ人が、「ぼくは明日、」に厳しくなる気持ちが理解できました。

 ほか、次の7編収録です。『美亜へ贈る真珠』『詩帆が去る夏』『梨湖という虚像』
 『玲子の箱宇宙』『”ヒト”はかつて尼那を・・・』『江里の”時”の時』『時の果の色彩』

 『美亜へ贈る真珠』は、「SFマガジン」に載って作者のデビュー作となりました。
 航時機内の時間の流れは8万5000分の1で、中の1秒は外の1日にあたり・・・

 『梨湖という虚像』は、亜高速で星間を飛び交う男と、梨湖という女の物語です。
 梨湖は亡き婚約者を忘れられず、遠い惑星のコンピュータの中に、彼を再現し・・・

 『時の果の色彩』は、奇妙な時間仮説に基づく、異色のタイムマシンものです。
 時の波の長さは38年で、今を中心にプラスマイナス19年間が移動できる範囲で・・・

 梶尾真治の代表作は、映画化された「黄泉がえり」でしょうか。
 私は、「エマノン」シリーズが気になっています。


黄泉がえり (新潮文庫)

黄泉がえり (新潮文庫)

  • 作者: 梶尾 真治
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2002/11/28
  • メディア: 文庫



おもいでエマノン: 〈新装版〉 (徳間文庫)

おもいでエマノン: 〈新装版〉 (徳間文庫)

  • 作者: 梶尾 真治
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2013/12/06
  • メディア: 文庫



 タイムマシンものの傑作「たんぽぽ娘」(R・F・ヤング)が復刊されていました。
 これは、以前「ビブリア古書堂の事件手帖」で登場し、注目されていた作品です。


たんぽぽ娘 (河出文庫)

たんぽぽ娘 (河出文庫)

  • 作者: ロバート・F・ヤング
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2015/01/07
  • メディア: 文庫



 さいごに。(誰に似た?)

 「パパ、こっちに来て!」と、娘の声。
 「威張った言い方をするんじゃない!」と、ママさんが注意した。ここまではいい。

 ところが、「あの言い方は、誰に似たんだろうねえ」というママさんに私はびっくり。
 「あんたの言い方にそっくりじゃないか」なんて、言えない言えない。

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時をかける少女・ねらわれた学園 [日本の現代文学]

 「時をかける少女」 筒井康隆 (角川文庫)


 突然タイム・リープの能力を手に入れた少女が、謎を解くために冒険する物語です。
 初期の作品ですが、何度も映画化・ドラマ化され、古典的名作と見なされています。


時をかける少女 〈新装版〉 (角川文庫)

時をかける少女 〈新装版〉 (角川文庫)

  • 作者: 筒井 康隆
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2006/05/25
  • メディア: 文庫



 ある日の放課後、中学3年生の芳山和子は理科室で倒れて、意識を失いました。
 翌朝、和子は車にはねられそうになった瞬間、前日の朝のベッドの中にいました。

 和子は無意識のうちに、テレポーテーションとタイム・リープをしていたのです。
 どうして? 和子は戸惑い、不安になります。もう普通に戻れないのか?

 様々な疑問を解くため、担任の先生が出した解決策は・・・
 そして、謎を握っていた意外な人物とは・・・

 私にとって、「時をかける少女」といったら、原田知世です。
 1983年上映の同名映画では、ショートカットで、清楚な魅力にあふれていました。

 当時この原作小説を、原田知世を頭にイメージして、ワクワクしながら読みました。
 私は高校1年生でした。読書の楽しみを覚え始めた頃の、懐かしい読書体験です。

 映画も小説も、最後にとても甘く切ない余韻を残していました。
 原田知世が歌うテーマソングも、微妙に下手なところが、心にじわりときました。

 その後は、南野陽子のドラマ、内田有紀のドラマ、中本奈々の映画、
 安倍なつみのドラマ、劇場版アニメ、仲里依紗の映画、昨年の土曜ドラマ・・・

 と、何回もドラマ化・映画化を繰り返し、今では古典的名作と見なされています。
 その魅力は、なんといっても、青春と恋の、甘く切ない余韻にあると思います。

 この本にはほかに、「悪夢の真相」と「果てしなき多元宇宙」が入っています。
 前者は恐怖症を題材にした小説で、後者は多元宇宙論を題材にした小説です。

 どちらも当時は、新鮮な作品だったのでしょう。
 しかし、表題作がとても印象的なので、他は「おまけ的」な感じになっています。

 ところで、私にとってこの作品は、眉村卓の「ねらわれた学園」とセットです。
 こちらも学園もののSF小説で、角川映画です。主演は薬師丸ひろ子でした。


ねらわれた学園 (講談社文庫)

ねらわれた学園 (講談社文庫)

  • 作者: 眉村 卓
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/09/14
  • メディア: 文庫



 中学校の支配をねらう生徒会と、それに対抗する生徒たちの物語です。
 しかし、生徒会長はただ者ではなく、謎の男がバックに付いています。

 ある夜、生徒会長と謎の男は、不思議な力を見せつけて・・・
 彼らは何者なのか? 何を企んでいるのか?・・・

 1981年に映画が上映されて、薬師丸ひろこがアイドルの地位を確立しました。
 私は中学二年の時この映画を見て、薬師丸ひろ子の大ファンになりました。

 その後、角川文庫から出ていた原作を、ワクワクしながら読みました。
 映画とストーリーが微妙に違っていて、小説は小説で楽しめました。

 本のカバーは、薬師丸ひろこの顔写真を大写しにした涙モノの一品です。
 あの懐かしい本は、ぼろぼろになって、いつのまにか無くなっていました。

 翌1982年に、今度は原田知世主演で、TVドラマ化されました。
 その後、何度も映像化され、今では古典的な名作と見なされています。


ねらわれた学園

ねらわれた学園

  • 作者: 眉村 卓
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1998/06
  • メディア: 文庫



 さいごに(オレが悪いのか?)

 娘がスナック菓子を食べていて、袋に残ったカスを大口開けて流し込んでいました。
 「お行儀が悪い!」とママさん。「だっていつもパパがやってるんだもん。」と娘。

 「パパがやるからこの子が真似するのよ!」
 このように、意外な方向から鉄砲の弾が飛んでくることが、時々あります。

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イーゴリ遠征物語 [中世文学]

 「イーゴリ遠征物語」 水村彰一訳 (岩波文庫)


 異民族の地に遠征して囚われたイーゴリが、脱出し帰還するまでの物語です。
 史実に基づいて書かれ、中世ロシア文学を代表する作品とされています。

 岩波文庫から1983年に出ていましたが、現在は絶版です。
 訳は格調高い文章です。付録に「年代記」の関係個所が付いています。


イーゴリ遠征物語 (岩波文庫 赤 601-1)

イーゴリ遠征物語 (岩波文庫 赤 601-1)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1983/04/18
  • メディア: 文庫



 イーゴリ軍は、ポーロヴェッツの土地に攻め入る前に、日食に出会いました。
 彼らは、その不吉な前兆をものともせず、進軍していきました。

 最初の戦闘で、イーゴリ軍は大いに勝利し、多くの戦利品を手に入れました。
 しかし喜ぶのもつかの間、いつのまにか敵軍に包囲されていて・・・

 「イーゴリ遠征物語」は、1185年に実際に行われた遠征をもとにしています。
 次のように、勇ましく描かれていますが、悲惨な結果に終わっています。

 「かのイーゴリこそ、雄心勃勃 / ロシアの国のため / いさましき
 つわものどもを 引き具して / ポーロヴェッツの地に 攻め入ったのだ」

 候としては二流のイーゴリ候を、まるでロシアの代表のように描いています。
 大したことのない侵攻を、まるでロシアを代表する遠征のように描いています。

 このような大げさな記述が民族精神を高揚させ、価値ある作品となっています。
 とはいえ、岩波文庫「新版ロシア文学案内」の、次の記述は褒めすぎでしょう。

 「洗練された言葉、ゆたかな情緒、美的バランス、興味をそそる筋、抒情性と叙事
 性の混じりあった独特な詩的世界 ー どれをとっても、この作品は現代の読者の文
 学的欲求をみたしてくれますし、ロシアならではの独特の魅力を持っています。」

 実際は、描写があっさりしていて、展開はあっけなくて、拍子抜けしてしまいます。
 本のページはスカスカで、120ページほどありますが、実質は30ページほどです。

 中世ロシア文学史上大切な作品となった理由は、作品が少なかったからでしょう。
 当時は、外来のキリスト教文学が主流で、こういう作品は珍しかったのです。

 しかし、現代のロシアでは、知らぬ者のないほど有名な作品となりました。
 歌劇などにもなっていて、一読して損はないと思います。

 さいごに。(尊敬されない?)

 娘に、「未来の自分に会ったら、何を聞きたい?」と聞かれました。
 すかさず、「ロト6の当選番号」と答えました。

 「そんなこと言ってたら、私に尊敬されないよ」と、言われてしまいました。
 素直に答えすぎた! 娘はもっと高尚な答えを期待していたようです。

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エル・シードの歌 [中世文学]

 「エル・シードの歌」 長南実(ちょうなんみのる)訳 (岩波文庫)


 レコンキスタ期の英雄エル・シードの活躍を描いた、中世スペインの叙事詩です。
 エル・シードは実在していて、レコンキスタ期の最高の騎士と目されています。 

 岩波文庫から1998年に出て、昨年2016年12月にようやく第2刷が発行されました。
 訳が分かりやすく、詳しい注釈が付いています。関連地図が、参考になりました。


エル・シードの歌 (岩波文庫)

エル・シードの歌 (岩波文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1998/07/16
  • メディア: 文庫



 「エル・シードの歌」は、三つの歌で構成されています。
 この本では、それぞれの歌に小見出しが付けられていて、内容が分かります。

 第一歌 エル・シードの国外追放と征旅の歌
 エル・シードは、彼を憎む者によって王に讒言され、国から追放されて・・・

 第二歌 バレンシア攻略と息女らの婚礼の歌
 エル・シードは、モーロ人の土地を少しずつ占領し、バレンシアを攻略し・・・

 第三歌 コルペスの森の屈辱と決闘裁判の歌
 エル・シードの2人の娘たちは、卑劣な婿たちによって屈辱を受けるが・・・ 

 解説によると、武勲詩は詩人らによって、街から街へ広められたのだそうです。
 それぞれの歌は、吟遊詩人が1回に吟誦するのに適当な長さだったと言います。

 だから、基本的にこれは「歌」であって、読まれたのではなく聴かれたのです。
 そのためか、正義と悪がはっきりと分かれていて、内容は分かりやすいです。

 ただし、エル・シードは完璧な英雄として、描かれているのではありません。
 驚いたことに、エル・シードは旅費を作るために、味方を騙したりしています。

 また、最後の決闘裁判へのもっていき方も、あまり紳士的ではありません。
 名剣は決闘に勝って取り返す、という展開にした方が、ずっとかっこいいのに!

 フランスの「ロランの歌」と、スペインの「エル・シードの歌」を読みましたが、
 どちらも他の叙事詩に見られたファンタジー的な味付けが、ありませんでした。

 中世文学といったらファンタジー、と勝手に思っていたので、少し意外でした。
 私はどちらかというと、魔法使いや竜や妖怪が出てくる物語の方が好きです。

 さて、ロシアにも「イーゴリ遠征物語」という中世叙事詩があります。
 たまたま岩波文庫の2009年版が家にありました。すぐに読んでみたいです。


イーゴリ遠征物語 (岩波文庫 赤 601-1)

イーゴリ遠征物語 (岩波文庫 赤 601-1)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1983/04/18
  • メディア: 文庫



 さいごに。(ボーリング大会)

 子供会の6年生を送る会では、恒例のボーリング大会がおこなわれます。
 うちではボーリングをやらないので、娘は毎年楽しみにしています。

 例によって娘は、全然ピンを倒せないと思います。
 実は私もボーリングは苦手で、いつも女の子チームに入れられていました。

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2017年3月発売の気になる文庫本 [来月発売の気になる文庫本]

◎ 2017年3月発売予定の文庫本で、気になるものを独断で紹介します。
  データは、出版社やamazonの、HPやメールマガジンを参考にしています。

・3/3 「美女と野獣」 ボーモン夫人 (新潮文庫)
   → 角川文庫版と読み比べたい。気になる。

・3/7 「デカメロン(上)」 ボッカッチョ (河出文庫)
   → 単行本で7128円(!)で出ていたもの。待望の文庫化。迷わず買い。

・3/8 「北欧の神話」 山室静香 (ちくま学芸文庫)
   → 単行本で出ていたもの。他の北欧神話ものと比べたい。気になる。

・3/9 「人生の短さについて」 セネカ (古典新訳文庫)
   → 岩波文庫版と読み比べたい。読みやすかったら買い。

・3/10 「アルキビアデス クレイトポン」 プラトン (講談社学術文庫)
   → マイ・ブーム「アルキビアデス」の関連本。文庫初。気になる。


◎ おまけ1(「騎士団長殺し」村上春樹)

  24日の金曜日に、村上春樹の最新作「騎士団長殺し」が出ました。
  第一部と第二部が同時に売りに出され、東京の書店では行列ができました。

  うちの職場には、「今日は残業をやらずに、書店に寄って帰る」という人
  がいました。そのために彼女は、朝ずいぶん早くから出勤していました。

  現在、すでに多くのレビューが出ていて、とても参考になっています。
  あー、文庫化まで待てない。原則を破って、買ってしまうかも。
  ( 私の読書の原則 = 本は文庫化・新書化されてから買って読む )


騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/02/24
  • メディア: 単行本



騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編

  • 作者: 村上 春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/02/24
  • メディア: 単行本




◎ おまけ2(TVドラマ「嫌われる勇気」)

  私はいつ も、TVドラマは、4回目から見ることにしています。
  3回までに高い評価が与えられたものだけ見ていれば、ハズレはないので。

  では、見られなかった3回分はどうするのか? 答え。「気にしない」。
  4回目から見ても、たいてい楽しめます。

  「見逃した回は、ネットで見られるよ」と、教えてくれた人がいました。
  便利な世の中です。しかし、私はそこまでして見たいとは思いません。

  ところで、今回は例外的に、第1話から見ているドラマがあります。
  「嫌われる勇気」です。タイトルを見て、「毎週録画」しちゃいました。

  しかし、思っていた内容と大きく違いました。刑事ドラマになってるし!
  視聴率は低迷してるし、日本アドラー心理学会からは抗議されるし!

  一般的に言って、このドラマはコケているらしい。
  しかし、私と娘はこのドラマを毎回とても楽しんで見ています。

  主演の香里奈の、「なんじゃこりゃ」と言いたくなる役作りが良いです。
  自己中でKYな庵堂蘭子に、なぜか癒されています。へんですね。

  ともかく、スキャンダルを乗り越えて、久々にドラマに復帰した香里奈には、
  今後も風当たりが強いかもしれないけど、がんばってほしいと思っています。

  ちなみに、岸見一郎の「嫌われる勇気」は、単行本なので買っていません。
  対話形式で分かりやすいと、評判はかなり良いので、買ってしまうかも。


嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

  • 作者: 岸見 一郎
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2013/12/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



  1999年刊の「アドラー心理学入門」(ベスト新書)の方は読みました。
  少し前の出版のためか、第3章と第4章などが、分かりにくかったです。


アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)

  • 作者: 岸見 一郎
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 1999/09
  • メディア: 新書



 「アドラー心理学 実践入門」(ワニ文庫)の方が、分かりやすかったです。
 ただし、第4章と第5章はぴんとこない部分がありました。


アドラー心理学 実践入門---「生」「老」「病」「死」との向き合い方 (ワニ文庫)

アドラー心理学 実践入門---「生」「老」「病」「死」との向き合い方 (ワニ文庫)

  • 作者: 岸見 一郎
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 2014/05/21
  • メディア: 文庫



◎ さいごに。(N市のスイーツラン完食)

  娘と一緒に参加し、2.5キロを20分以上かけてゆっくりと走りました。
  給スイーツ所はすでに行列で、走る時間より並んでいる時間の方が長かった。

  7つ選んで完食し、スイーツでおなかがいっぱいになりました。
  娘は、「こういう大会なら来年も出たい」と言ってくれました。

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